6/16
翌朝4時30分くらいに2階の子供達の元気な声で目覚める。5時頃に露天へ行くとすでに先客が一人いる。
後から数人入れ替わりで入って来る。しばらく入った後に中津川にかかる吊り橋から朝もやに煙る景色を撮ったり、
川のほとりの岩に腰を掛け、鳥のさえずりに耳を傾けてみたりする。
6時頃朝日が昇ってきたので、朝日を浴びながら気持ち良く入浴を楽しんでいたが、大きなカエルが無残にも茹で上がって浮かんでいる。
湯の色と一緒だったので、気が付くまでに時間がかかったが、排水のパイプに流して無事に成仏させる。
出発する時に気がついたのだが、対岸にある小学校では運動会か何かなのだろうか、大勢の村人や生徒が校庭に集まっていた。
屋敷温泉からほど近い上野原にある「のよさの里」へ向かう坂の途中に上野原温泉休憩所を探し当てる。
このお湯はある方の入浴リストで見つけた。ネット上で探したが、見つからずあきらめかけていた。
小赤沢温泉 楽養館の入口に掲げられていた手書きの案内図に載っていて、場所を確認することが出来た。
正式名称は徳用林産加工販売施設と言う。名前からして林業対策の資金で建てられた模様。
表の看板からすると建てられてから5年ほどしか経っておらず、タイル貼りの浴室も清潔感が漂っている。
最初は気が付かなかったのだが、湯口の所にタオルが被せられており、茶色に染まっているではないか!
そこで注意深く湯を観察すると茶色い細かい湯の花が舞っている。タオルをどけてみて分かったのだが、湯口の奥にバルブが2つある。
これで温度調節は容易である。個人的には湯口の奥に見えないようにバルブが設置されているのが好ましいと思う。
草津の共同湯のように、いきなりバルブからお湯が注がれるというのもちょっと風情に欠ける。
掛け流しであっても加水せずに、見えない所のバルブの開閉で湯温調節が効くように配慮がされているタイプが良い。
熱めの湯と温めの湯のバルブがあるのだが、温い湯が好きなので熱めの湯を止めてみる。
タオルが湯口に被せられていた意味は判然としなかったが、バルブを止めないようにする為か、
湯の花が浴槽に入らないようにしているのかいずれかであろう。
上野原休憩所から坂を数Km上がって行き、看板の表示に従って右折するとのよさの里である。
ここは、本家と呼ばれる管理棟を中心として放射状に延びる廊下で繋がっている分家と呼ばれる宿泊用の離れの他に露天風呂もある。
隣接してキャンプ場もあり、案内図を見るとかなり広大な敷地を持っていることが分かる。
本家と呼ばれる管理棟には内湯もあるのだが、狭いということなので今回はパス。
ここの売りは何と言っても鳥甲山を正面に見ながら入る露天風呂だ。
鳥甲山は断崖絶壁で知られる谷川岳にも勝るとも劣らず、切り立った峻険な山容でアルピニストには有名な山である。
ここからの眺めは、山梨のほったらかし温泉から見える富士山の眺めに次ぐくらいの素晴らしさだ。
脱衣所と露天の境の扉を開けると、そこには想像以上の絶景が広がっていた。
思わず「おおー!」と声を上げ、靴下が濡れるのもかまわず走り出したほどだ。
男湯からの眺めは良いのだが、女湯の左前方にはボイラー室らしきものがあり、眺めは男湯ほど良くないそうだ。
加熱しているのであろうか湯は熱めである。得てして加熱している露天はややもすると熱過ぎる傾向があるが、
ここもそうであった。小さな虫の死骸がたくさん浮かんでいて、ちょと気持ちが悪い。
しかも湯は循環みたいで、オーバーフローは全く見られない。
素晴らしい眺望がゆえに評価は高くつけざるを得ない、というのが本音だ。
次に向かったのは、切明温泉へ向かう林道と和山温泉への道の分岐点の近くにある栃川高原温泉休憩所。
ここはあまり知られていない温泉である。にもかかわらずMap Fanの地図にはしっかりと掲載されているのが不思議なくらいだ。
栄村振興公社の運営で、以前は管理人が中の番台にいたらしいが、誰もおらず困ってしまった。
どうしようかと思っていた所、浴室の前に貼り紙がしてあった。入浴希望者は向かいの「ヒュッテひだまり」で支払って下さいとのこと。
これでは無銭入浴が絶えないのではと思う。もっとも併設のキャンプ場の利用者や「ヒュッテひだまり」の泊まり客くらいしか
ここに入浴する人はいないだろうから、それほど大きな問題にはならないのかもしれない。
せめて、入口に貼り紙をしておいてもらいたいものだ。
向かいの「ヒュッテひだまり」の宿泊客だろうか若いカップルが女湯から出て来たので、彼らの後をついて行き、支払いを済ませる。
男湯と女湯は浴槽の形こそ違うが、同じくらいの大きさだ。
男湯の方は大きな虫の死骸が浮かんでおり、ちょっと入る気にはなれないので、女湯に入らせてもらう。
湧出する湯が熱いからだろうか、底の方から供給する仕組みになっている。
お湯の通っているパイプには白い析出物がこびり付いている。なかなか成分的には濃いのかもしれない。
湧出量は少なく、浴槽からオーバーフローする訳ではないのだが、湧出量に見合ったこじんまりとした浴槽で、
いかにも源泉を大切に使っている感じが良い。林道に面している為時々車の音がするだけで、カエルの鳴き声がするだけである。
実に静かな温泉で、ひっそりとした山の湯という感じが素朴で捨てがたい魅力がある。
浴室の清掃がもう少し行き届いて清潔感があれば、誰にでもすすめられる穴場のお湯だと思った。
次に和山温泉仁成館へ向かったのだが、日曜日の午前中の突然の来訪だったせいか立ち寄り入浴を丁重に断られた。
最後まで宿泊地の候補だったのだが、のよさの里よりも鳥甲山が間近に見える露天風呂を楽しみにしていたのだが残念である。
ここはアットホームな宿でリーピーター率ひときわ高いことで有名な宿であるので、次回は秋山郷に来る時はここに泊まってみたい。
栃川温泉からの林道を下りてくると、切明温泉の雄川閣の駐車場はほぼ埋まっているが強引に停めさせてもらう。
最初はここの内湯へ入る予定だったが、川原の盛況ぶりを見て川原の露天へ入ることにする。
車が通れる立派な吊り橋を渡った対岸では、丁度昼時だったのでバーベキューをしている一団でかなり賑わっている。
肝心の露天風呂は、先人達がスコップで掘ったものがいくつかあるが、適温の所がなかなか見つからない。
奥の方に適温かつ、かなり広めの露天風呂があったので浸からせてもらう。
露天風呂の作成者曰く「温い所と熱い所を分けた」とかでなかなかのものだ。
こういう所でゆっくり家族連れで休日を楽しんでいる人達が特に目立った。
子供にとっても川原を掘るとお湯が湧いて来るというのは、一生のうちでもそうそう体験できる訳ではないので
子供が出来たらこういう場所に連れて来てみたいものだ。
入浴しているのは男性ばかりで、女性の場合はバスタオル巻きか水着着用でなければ、入るのは不可能だろう。
尻焼温泉のように川全体が浴槽状態になっているものとばかりだと思っていたのだが、屈斜路湖畔のように穴を掘るタイプは
温度調節が難しく、短時間で自分専用の露天風呂を造るなんて言うのは土台無理な話だ。
先人達が残していってくれた浴槽に浸かれるので、スコップの類は持参しなくても大丈夫だ。
ただし川が増水すると、掘られた浴槽が跡形もなく消えてしまうことは良くあるらしい。
ここから今日は雑魚川林道を通り、志賀高原を抜け長野へ向かう。
雑魚川林道は昆虫の宝庫と言われる通り、手付かずの大自然が今なお残り、時々釣りをしに来ている車が道端に停まっているくらいである。
様々な鳥の鳴き声がこだまする中、見晴らしのいい場所に車を停め、携帯の食料で軽い昼食にする。
この辺りはブナの原種保存地区である為、人間の手が全く入っていないブナの原生林が両側に広がる奥志賀林道を走りぬけ、
一ノ瀬スキー場の近くにあるダイヤモンド湿原を探索してみる。
ここは車道からすぐに湿原の探索が出来るので、時間がない時に手軽に散策するのには最適である。
小雑魚川に沿った木道の散策路が続き、途中にいくつもの湿原があり、丁度ニッコウキスゲやツツジの類の高山植物が咲き誇っており
初夏の志賀高原の片鱗に触れることが出来た。このまま長野方面へは向かわず、横手山方面へ寄り道してみることにする。
しばらく行くと平床の噴湯の湯煙が右手前方に見えてくる。
車を降りて近づいてみると温泉のシャワーが降り注いでいるといった感じで物凄い迫力だ。
このお湯は、近くにあるほたる温泉(旧名熊の湯)の源泉となっている。と言う訳で、ほたる温泉へ向かう。
志賀プリンスホテル別館隣りには、長寿乃湯という野天風呂がある。
この界隈の立ち寄り入浴料金の相場が1000円ということを考えると、24時間無料で入れるとこのお湯の存在は貴重だ。
屋外とは言えよしずに覆われており、男女別の内湯のみだが、女性も安心して入浴することが出来る。
浴室は奥にFRPの浴槽、床はスノコが敷かれ、洗い場と脱衣所になっているという簡素な造り。
平床の噴泉から引いている源泉81.0℃の湯は湧出量豊富なのだが、かなり熱めの湯で長湯は出来ない。
平床源泉は、いわゆる熊の湯温泉とは源泉は異なりすぐ近くの熊の湯ホテルとは全く泉質は異なる。
また、熊の湯温泉は何故だか最近ほたる温泉と改名しているが、いまひとつなじみがないせいか熊の湯の名前の方がしっくり来る。
志賀プリンスホテルのオーナーの好意により無料で開放されているが、利用者はマナーを守っていつまでも存続することを願ってやみません。
長寿乃湯の裏手には、今でも熊の湯温泉の名前を守り続ける熊の湯ホテルがある。
フロントで入浴料1,000円支払うと、タオルをくれた。この値段だからタオルくらいつけてくれないと割に合わない。
左手奥にある浴室へ向かったのだが、さすがにホテルだけあってなかなかたどりつかない。
唐突に浴室が現れる。今までのホテルの空間とは全く異なる素晴らしい空間が広がっていた。
男湯と女湯の他に樽風呂があるということで、そちらを覗いてみる。
女性も入浴可と書いてあったが、女性専用ではないのかもしれないので、男性も女性もかえって入り辛いのでは?
酒の仕込みに使われていたらしい深くて大きな立派な樽である。さすがに入るのはためらわれたので、撮影するだけにとどめる。
脱衣所はさすがに大規模なホテルだけあって、かなり大きい。浴室は年季の入った総檜造りで、天井の梁は硫黄の成分の為か白っぽい。
この雰囲気は東北地方の湯治場を思わせる風情である。床や浴槽は比較的新しいものに張替えられていて気持ちが良い。
ホテルの大浴場と言うとタイル貼りであるのが一般的であるが、これはうれしい誤算だ。
定期的に板を張替える手間と費用がかさむが、いつまでもこのままの姿を保ってもらいたいものだ。
お湯は硫黄臭のする抹茶色をした感じで、白い湯の花が大量に舞っている。
浴室の雰囲気同様にお湯も身体にずっしり来る感じで、長い間浸かっていると湯疲れしそうだ。
湯口から出てくるお湯を飲むと、予想通り抹茶のように苦くて渋い味だが、飲めない味ではない。
外を見るといつの間に雨が降っていたので、露天には行きたくても行けない。
浴槽の縁に足を乗せてストレッチをしていると、通り雨だったのか間もなく晴れてきたので露天へいそいそと向かう。
露天は内湯よりも濃度が薄く、湯温も内湯ほど熱くなく、長湯する向きにはこちらが良い。
一番気に入ったのは人工の滝が造られており、露天の最奥へ行くと滝の飛沫を浴びられることだ。
温泉で火照った身体を天然のシャワーで冷やし、またお湯に浸かる。
温冷浴法は疲労回復に効き目があるが、まさかこんな風に滝の飛沫を利用するとは設計者も思ってみなかっただろう。
レンタカーの返却時間まで余裕があったので、小布施の岩松院を訪れてみた。
福島正則の菩提寺として知られるこの寺には、葛飾北斎作の八方睨みの鳳凰図で有名だ。
想像上の生き物である色とりどりの鳳凰が天井一杯に翼を広げ、どの方向から見ても鋭い眼光の視線がこちらを睨んで来る。
北信濃くだもの街道と呼ばれる国道358号線沿いにある、地元の新鮮な食材使ったアイスで有名なTwellでさっぱりとしたアイスを
頬張り、引退した165系の車両をまるごと食堂にしたくりんこ小布施を見学する。
それでもまだ時間がまだ余ったので長野電鉄河東線信濃川田駅へ向かう。
既に廃車になっているはずの元東急の車両で長野電鉄では引退になった2500系の車両が、信濃川田駅構内に留置されているからである。
この駅は思いがけず無人駅ながら木造の駅舎で、行き違いの設備があり、列車交換も見ることも出来、充実した旅の締めくくりとなった。
浅間温泉・秋山郷の旅2へ