ここはあまり知られていない温泉である。にもかかわらずMap Fanの地図にはしっかりと掲載されているのが不思議なくらいだ。栄村振興公社の運営で、以前は管理人が中の番台にいたらしいが、誰もおらず困ってしまった。どうしようかと思っていた所、浴室の前に貼り紙がしてあった。入浴希望者は向かいの「ヒュッテひだまり」で支払って下さいとのこと。これでは無銭入浴が絶えないのではと思う。もっとも併設のキャンプ場の利用者や「ヒュッテひだまり」の泊まり客くらいしかここに入浴する人はいないだろうから、それほど大きな問題にはならないのかもしれない。せめて、入口に貼り紙をしておいてもらいたいものだ。
向かいの「ヒュッテひだまり」の宿泊客だろうか若いカップルが女湯から出て来たので、彼らの後をついて行き、支払いを済ませる。男湯と女湯は浴槽の形こそ違うが、同じくらいの大きさだ。男湯の方は大きな虫の死骸が浮かんでおり、ちょっと入る気にはなれないので、女湯に入らせてもらう。湧出する湯が熱いからだろうか、底の方から供給する仕組みになっている。お湯の通っているパイプには白い析出物がこびり付いている。なかなか成分的には濃いのかもしれない。湧出量は少なく、浴槽からオーバーフローする訳ではないのだが、湧出量に見合ったこじんまりとした浴槽で、いかにも源泉を大切に使っている感じが良い。林道に面している為、時折車の音がする以外は、カエルの鳴き声が聞こえるだけである。実に静かな温泉で、林道脇のひっそりとした山の湯という感じが素朴で捨てがたい魅力がある。浴室の清掃がもう少し行き届いて清潔感があれば、誰にでもすすめられる穴場のお湯だと思った。