11/18
今朝は素晴らしく晴れていたが、しし座流星群は残念ながら見えなかった。
小田急線の急行は相模大野で空席は埋まったが、座席を素早く確保し、爆睡する。
新宿始発の埼京線、赤羽からの高崎線の鈍行も座れ、買ったばかりのデジカメの取扱説明書を熟読する。
丁度高校生の登校時間にあたり、女子高生の乗降が目立つ。最初は茶髪、ルーズソックスの女子高生が
多かったが、次第に黒髪、普通のソックスの女子高生の比率が増えてくる。男子高校生の集団はむさくるしいが、
女子高生ウォッチングも鈍行列車の楽しみのひとつである。高校生の乗降は本庄で終わり、車内は閑散としている。
高崎でだるま弁当を購入し、新特急の車内で食べる。指定席はいっぱいだということだったが、自由席は意外にも
空席が目立つ。程なくして高崎から乗りこんだ車内販売のワゴンがやって来る。
だるま弁当が山と積まれているではないか・・・在来線の特急に乗るのは久しぶりだったので車内販売は盲点だった。
渋川から吾妻線に入り、国道と併走する。速度はぐっと落ち、道行く車と同じくらいのスピードだ。
紅葉の盛りはとうに過ぎていたが、川原湯温泉付近の渓谷では紅葉の名残がちらほら見られた。
車内は暖房が効いている上に、ぽかぽか陽気で車内は暑いくらいになってきた。
新特急は古い車両の為窓が開くので、吾妻線内に入って窓を開け、ローカル線の風情にひたることが出来た。
車両は古いが、座席は全てリニューアルされていて、やっと特急車両と呼ぶにふさわしい設備にはなっていた。
草津の達人恵美さんの指示通りバスの最前列の左側を確保する為に列車の最後部に乗っていた我々は、
長野原草津口到着前に先頭車両まで移動する。移動する途中で車掌に申し出て、自由席特急券の精算を済ませる。
長野原草津口の改札を抜けると、草津の温泉旅館の女将の顔写真のポスターがずらりと天井から吊り下げられていた。
何でも草津町制100周年を記念して、JRとタイアップしているということである。
そう言えば、11月始めにも草津御湯行列というイベントが行われ、江戸時代の将軍家が草津の湯を江戸まで運ばせた
故事に則って、草津からはるばる東京まで御湯が運ばれたのも記憶に新しい。
数あるポスターの中に今回お世話になる日新舘さんの女将さんを見つけ、頭に焼き付けておく。
9時58分発の草津温泉行のバスは急行と鈍行があり、もちろん急行バスに乗りこむ。
最前列の左側を確保すると、程なくして新特急から下車した多くの観光客でたちまち満席になる。
急行バスに乗りきれない客は後ろの鈍行バスに移動する。
約25分間バスに揺られ、草津温泉BTに到着。湯畑では2ケ月置きにしか行わない湯の花の採取の真っ最中だった。
今回お世話になる日新舘では若旦那と女将がにこやかに出迎えてくれ、荷物を預ける。
おかみさんおすすめお散歩マップを貰う。特に外湯のかなり正確な位置が記載されており、これが実に役立った。
まず熱乃湯の湯もみ体験にチャレンジする。
草津よいとこ一度はおいでで知られる草津節に合わせて、湯もみ板で
熱い湯をかきまぜるのだが、これは想像以上に難しく、大変な重労働だ。腰が少し痛くなって来る。
草津では昔は時間湯という入浴法を行っており、大勢で湯もみをしてから入浴したそうで、先人の苦労が偲ばれる。
ここは湯もみショーと湯もみ体験のみ行われており、実際に入浴することができないのが残念だ。
上州草津温泉名所旧跡にも名が見られ、「此の名をねつと湯のあつさを知るべし」とある。
湯もみの汗を流しに隣の白旗の湯に入る。
朝早いせいか空いており、今日の湯は驚くほど温い。
気温が高いせいか湯気がこもっておらず、撮影にはもってこいだ。透明な方の湯は清掃したばかりか、
浴槽には湯が殆どたまっていなかった。白濁している一方の湯は人気が高く、確かに入り心地は極上だ。
今回は外湯巡りと饅頭の食べ比べがメインである。
草津の達人おすすめの草月へ向かう。
ここはいわゆる温泉饅頭よりも野菜饅頭が有名で、6種類を1ケずつ購入する。
各界著名人の色紙がずらりと掲げられており、学習院大学の篠沢教授の名前を挙げると、
店主は途端に饒舌になり、NHKを始めとするマスコミの取材が多いということである。
中央通りをスーパーはりやの所を曲がり、千歳の湯へ向かう。
ガイドブックには万代鉱とあるが、脱衣所には湯畑の成分分析表が掲げてある。
コンクリートのシンプルな浴槽で地元客がひっきりなしに訪れる。湯は少々熱かった。
入浴後、脱衣所で万座ホテル等で住み込みをしていたという同好の士とひとしきり温泉の話題で盛り上がる。
12時を過ぎていたので中央通りのとん香で昼食にする。
ヒレカツ定食は肉の周りの脂身がジューシーで絶品だ。
パン粉、ソースは自家製というこだわり様で、キャベツは草津高原産で新鮮で、野菜本来の甘味が感じられた。
けんちん汁に使われていた味噌も自家製の様に感じられた。カツは注文してから揚げる為、あつあつが食べられる店だ。
質・量ともに納得の行く店でお腹が空いている時は特におすすめだ。
昼食後、外湯の中でも最も場所が分かりにくいと言われている喜美の湯へ向かう。
草津の達人の詳しいナビゲーションのおかげで難無く発見することが出来た。
車両進入禁止の標識と公民館が目印だ。小ぶりな唐破風の入口から想像つかない程、浴槽は広く、
壁面は木をふんだんに使っており、湯は一旦貯湯槽にためられてから浴槽に注がれている為かそれほど熱く感じない。
個人的には地蔵、白旗、煮川に次いで気に入った。浴室と脱衣所の仕切が全面ガラス張りの戸である為、
湯につかりながら脱衣所の様子が見えるので安心して湯浴みができる。
ここも地元客御用達の外湯で、場所が分かりにくいせいか観光客は皆無である点もポイントがかなり高い。
天狗山通りに出て、亀屋へ向かう。
ここはお店で饅頭を製造しており、ガラス張りの工場に機械が設置してある。
折りしも雪が突然降ってきており、ストーブを入れていただき、お茶をサービスしていただく。
一見客にも心温まる気遣いが感じられ、大変印象に残る店だ。饅頭をバラ売りしていただき、店内でいただきながら
他のお客さんと共に色々なお話を伺う。吹雪いている中、店の外観を撮影していると、饅頭を2個サービスしていただき、
ありがたく頂戴する。かなり冷え込んできたので、風味堂菓子舗で3種類の饅頭を購入し、足早に宿へ向かう。
ロビーには暖房が入り、すっかり冬本番である。幸運にも部屋にやまびこの饅頭と胡麻せんべいが用意してある。
部屋にてしばし饅頭の食べ比べを行った後、内湯へ向かう。
湯畑から引いた内湯はこの時は意外に温めで入りやすかったが、少々浴室が寒く感じられた。
男湯には小さな露天が併設されていた。大きさは一人用で外から鍵がかけられ貸切風呂の様でよろしい。
湯の花が沈殿しており、掻き回すと白濁し、小雪が舞う中静かな湯浴みをしばし堪能する。
夕食は1階の食堂で若者グループや若いカップルで賑やかであった。
若者向けなのか特に量が多く感じられ、ヒレカツ、饅頭と食べ過ぎであった我々にはちと苦しかった。
女将が挨拶して回って来て、一人一人に言葉をかけてくださる。部屋数が少ないとは言え、なかなか出来ることではない。
11/19
朝起きると外は一面の雪景色だった。
朝食後、宿の内湯につかった後、昨日レポを仕上げてから西の河原通りの饅頭屋の取材へ向かう。
富貴堂、松むら饅頭、長寿庵の試食用の饅頭をいただく。
満充軒さいふ屋の店先ではマスコミの取材と勘違いされた為、恥ずかしくて今回の取材は遠慮しておく。
片岡鶴太郎美術館で草津の達人おすすめの黒胡麻のブラマンジェをいただく。
黒胡麻入りのババロア状のデザートで、トッピングはコーヒーとミルクである。
値段も350円とお手軽で、他ではお目にかかれない逸品だけに、これだけを目当てに来る価値はある。
氏の数多くの作品の内、気に入っている絵がいくつかあったが、結局カレンダーを購入する。
これは11月から使えるので、秋に来草の際には土産にはもってこいである。
美術館に程近い、しゃくなげ通りを南に登った所にある翁の湯へ向かう。
ここは比較的最近改装された為、外観、脱衣所、浴室ともに新しいので、気持良く湯浴みができる。
湯は比較的温く、コンクリートの浴槽は正方形に近い形をしている。
ホテルみゆき別館の脇の坂を降りて西の河原通りに戻り、グランカフェ吉田屋の奥に凪の湯を発見する。
ここは人通りの多い西の河原通りからわずかに入った所にあるが、意外な所にあるのでほとんど知られていない感じだ。
江戸時代には花柳界の女性が好んだという歴史のある外湯で外湯の中でも抜群の風格を誇る。
実際に入浴してみて、浴槽はかなり古い木作りでこじんまりとしており、いかにも古風な感じが気に入った。
湯はそれ程熱くは感じられなかったが、脱衣所が少し埃っぽかったのが残念だ。
凪の湯の隣の吉田屋でせんべいを土産に購入する。
ここはガイドブックに載っているのか、観光客があったあったと口々に叫びながら結構やって来ているようだ。
一度宿に戻り、昨日購入した草月の野菜饅頭等で軽い昼食をとる。
TVを見て休憩した後、再び外湯巡りを再開する。
まずは地蔵の湯から。
地蔵堂と源泉と外湯が三位一体となって、地蔵菩薩の霊験あらたかな雰囲気が漂う。
ここは湯畑から近いが、地元客以外の観光客はこの湯の熱烈な愛好者しか訪れない様だ。
草津の外湯の中で、個人的には一番のお気に入りである。
ひとしきり撮影を済ませ、中に入ると誰もいないのですかさず浴室を撮影する。
ここは緑がかった白濁した湯で、それほど熱くはない。ここは湯もみに始まる時間湯を行っており、
長期滞在者は湯長に連絡すれば時間湯を体験することが出来る。
上州草津温泉名所旧跡にも名が見られ、「乳のみ子を育てるにはよき湯なり」とある。
次は、煮川の湯へ向かう。
ここの湯は皮が煮える程熱いのでのぼせない様に時間湯もどきの入り方を実行する。
熱い湯から守る為、タオルを頭にかぶりその上から10杯ほどかぶり湯をする。
こうすると頭の血管が開き、急激な体温の上昇を防ぐことが出来る。
かぶり湯をしたせいか、それほど湯は熱く感じられない。
よく見ると樋の所に木の板でふたがしてあり、木の板をはずすと熱い湯が浴槽にとうとうと流れ込んできた。
上州草津温泉名所旧跡にも名が見られ、贄川の湯とあり、「此の湯に入れば食物の味うましといふ」とある。
湯上がりに囲山公園から西の河原公園を散策し、ベルツ博士の胸像とも対面を果たす。
デジカメは明るい光が苦手な為、夕方の撮影が適している様で、湯畑の周りでしばらく撮影を行う。
宿に戻ると今日は泊り客が二組しかいない為、女湯を貸し切りにして二人でゆっくり入る。
夕食後女将としばし歓談し、番頭さんの著作を部屋で読ませていただく。
女将の好意で併設の喫茶店ぐーてらいぜのコーヒー券いただいたので、ケーキセットを賞味する。
浴衣姿の近在の旅館の宿泊客が結構訪れる。草津には喫茶店が少ない上、湯畑の下というロケーションの良さもあり、
浴室を改装して喫茶店にした所に日新舘の目の付け所は当たり、ここはいつも賑わっている。
食後湯畑の周りを散策し、ライトアップされた幻想的な景色にしばし見とれる。
11/20
今日は昨日と打って変わって朝から雨だ。
朝食後、宿の内湯につかった後、千代の湯へ向かう。
小ぶりだが湯畑に近い為、朝から観光客もちらほら見うけられる。
のんびりつかりたい所だったが、チェックアウトの時間が迫っていた為、5分くらいで切り上げる。
上州草津温泉名所旧跡にも名が見られ、「むかし鶴の毛衣を洗ひし湯なりといふ」とある。
今日は雨降りで、荷物もあることだし、外湯巡りは止め、草津ハイランドホテルが経営する草津温泉館へ向かう。
二日間せわしなく外湯巡りと饅頭屋の取材に明け暮れて、のんびりゆったりしたい気分だ。
片岡鶴太郎の著作に次の様な印象的な言葉があった。
「我々は何事も時間をかけないで効率ばかり追い求めている。どうせ生きるんなら楽しく生きようではないか。
自分自身に時間をかけるというのは贅沢なことである。」
実際のサラリーマンの日常ではとても無理なことではあるが・・・
氏は仕事で出掛ける3時間前には起床することにしているそうだ。
「5分前に起きようと3時間前に起きようと、起きた時の不機嫌さは変わらない。
ゆっくりティータイムをとり、入浴し、自分自身と対話する。」
我々はそんな時間を持つ余裕は日常生活では考えられない。
だからこそ旅行に出た時くらいは、のんびりと自分自身と対話する時間を持ちたいものだ。
本家ちちやの温泉饅頭を土産に購入し、帰路の高速バスのチケットを草津温泉BTで確保する。
草津温泉館は思ったより遠く、上り坂の為BTから20分以上かかってしまった。
草津温泉館は露天風呂、洞窟風呂、気泡風呂、サウナがあり、外湯とは違った温泉が楽しめる。
1時間半程ゆっくりつかり、湯上りに近くのリンデンバウムでハンバーグ定食とビールをいただく。
天狗山通りの土産物屋で妻が土産を選んでいる間、喜美の湯で今回の湯巡りを締めくくる。
帰りの高速バスは群馬原町、中之条で乗車した女性グループのおしゃべりが賑やかだった。