行程表中太字で記載の温泉は実際に入浴した所。細字の温泉は外観の見学のみ。
9/19
長野電鉄木島駅前から信州バスに揺られること30分。現段階において公共交通機関利用で首都圏から野沢温泉まで最速達であろう。
木島線も野沢温泉まで延伸していれば、廃止に追い込まれることもなかっただろうと残念に思う。
スキーシーズンは言うまでもなく、1年を通して長野から通しで野沢温泉まで乗る需要は少なからずあると思われる。
道すがら見事な棚田が印象に残ったが、棚田の上を行く長野電鉄の姿を想像したが、所詮鉄道ファンの幻想である。
途中、何人かのお年寄りが乗ったり降りたりしたが、最終的にはがらがら状態で野沢温泉に到着。
以前2回ほど、野沢温泉に来たことはあるが、本格的に温泉に興味を抱いたのは最近なので、入湯したのは大湯と野沢クアハウスのみ。
旅の手帖6月号の野沢温泉の特集記事やインターネット上で、事前に外湯のリサーチをしていたおかげで、お目当ての外湯は決めていた。
宿へ寄る前に大湯と麻釜(おがま)を見物する。麻釜(おがま)では丁度宿の方がきのこや菜っ葉を茹でている。今晩の夕餉の準備だろうか?
幸運にもその模様を撮影することに成功する。強引に中に入って行って撮影したが、本来立ち入り禁止であるらしいことが後で判明する。
麻釜の下の住吉屋を横目で見つつ、坂を下ると右手に赤いあの懐かしい円筒形ノポストに出くわす。
何を隠そうここが本日お世話になる桐屋さんであり、いい目印にはなっている。
まず荷物を預け、インターネット予約特典の岡本太郎デザインのイラスト入りのタオルと集印帳をいただく。
親切にも外湯巡りの案内書もつけてくれた。道に不案内な為、野沢温泉の詳しい地図をGETしてから、いざ外湯巡りに出発する。
よく見ると源泉はなんと6つもあるではないか!これは草津をも凌ぐバリエーションだ。
最近、野沢温泉は薬師如来を中心とした十二神将巡りと銘打って売り出している。
仏像に多少なりとも興味がある者にとって、温泉との組み合わせは実に興味深いものがある。
薬師如来は人々を様々な病苦から救い癒し、来世までの福徳と利楽を授ける仏様。日光・月光菩薩を従え薬師三尊と言われます。
この薬師を助け守護するのが、眷属神(軍団)を引き連れた武将姿の十二の神将です。
神将は各々私達になじみの深い仏様を本地とし、また年と方角を守る十二支とも結びつき、広く信仰を集めるようになりました。
薬師如来と十二神将はいつでも一組で、その仏様の数は野沢温泉の外湯と同じ十三。
また薬師如来の大きな仏徳の一つに温泉があることから、奈良新薬師寺の国宝十二神将に範をとった複製品を頂いて、
大湯に薬師三尊を、その他に神将を一体ずつお奉りし、湯のまもり仏としています。
[記事引用]野沢温泉外湯めぐり案内書 野沢温泉観光協会作成
滝の湯
びから大将は釈迦如来を本地仏として、亥の歳と方位をお守りしている。
麻釜(おがま)の上方にある共同浴場で、温泉街から遠い為、観光客の姿は見受けられなかった。
浴室と脱衣所が一体となった、こじんまりとした外湯。湯口から、出ている湯量は少ないが、激熱でとても入れたものではない。
やむなく水道の蛇口を全開にして、しばらく様子を見るが全く効果なし。水でうめてかけ湯するのが関の山だ。
入る人も少なく源泉の温度が78℃ともなれば、激熱なのは当然。少しでも激熱の湯を自然冷却させるシステムが欲しい所だ。
透明な湯に、黒い湯の花が舞っている。こじんまりとした町外れの鄙びた木造の共同浴場という、個人的に好きなタイプだけに惜しい気がする。
真湯(しんゆ)
招杜羅(しょとら)大将は大日如来を本地仏として、戌の歳と方位をお守りしている。
つつじ山公園の下にある、こじんまりとした古い木造の小さな共同浴場。脱衣所は大変狭く、浴室からは一応目隠しがされている。
エメラルドグリーンの湯に大量の黒い湯の花が舞っている。 この湯の色を見て思わず「おお〜!」と感嘆の声を思わず発してしまった。
湯に入り、底の方をかき回してみると黒い湯の花の他に白や灰色の湯の花もあり、これほど視覚的に楽しめる湯は珍しい。
長野の高山温泉郷にある五色温泉の内湯を思い出させる泉質だが、それよりも成分は濃厚な感じ。
ちなみに女湯の方は透明な湯にエメラルドグリーンの湯の花が大量に舞っていたそうだ。
草津の白旗の湯は一日置きに二つの浴槽の湯を入れ替えているが、それと同じ事をしているのであれば納得が行く。
獅子の湯口からは、源泉55℃の激熱の湯が出ている。飲泉しようとコップに湯を入れると、黒い湯の華も一緒に入って来る。
飲もうと口をつけたら熱くて飲めず、困っていたら先客の方が「こうすればいいんだ」と言わんばかりに手本を見せてくれた。
湯口にコップを当て、少量の湯を入れ、隣に有る蛇口をひねり水でうめて飲んでいた。
まだ2湯目だったが、ここは野沢で一番の外湯だと確信する。野沢に来たら、繰り返し何度でも入りたくなるお湯だ。
麻釜湯近くの食堂で蕎麦を食べ、本日の宿桐屋へ向かう。チェックインし、部屋へ向かうとお願いしていた庭の見える部屋でなかなかの眺めだ。
野沢の旅館街の中でも最も風情があり、美しい池をめぐる庭を眺める数奇屋造りの別棟の部屋で、かなり気に入った。
先代が小布施の宮大工につくらせたその客室は、風情ある庭とあいまって桐屋の売り物となっている。
野沢温泉の宿泊の相場は総じて高いのだが、こちらの宿ではインターネット特別割引でかなり安く泊まることが出来た。
女性にはおしゃれ浴衣を貸し出してくれるというので、さっそく妻に着替えさせる。
まずは、宿の池の周りと奥のコスモス畑などで撮影を開始する。
宿の庭だけでは満足できず、外へ出て撮影を続行する。麻釜、薬師堂、湯澤神社、旅館街と場所を変えてたっぷり1時間ほど撮影する。
ここまで来ると端から見れば、温泉の取材に来たモデルとカメラマン兼ルポライターに見えたかもしれない。
宿へ戻り、卓球場で1時間ばかり汗を流す。実は翌日卓球温泉の舞台となった田沢温泉のますや旅館での卓球対決が控えており、
その予行演習とばかりに久しぶりに白熱したラリーを楽しむ。ひとしきり汗をかいた後、湯巡りを続行する。
麻釜湯
摩虎羅(まこら)大将は大威徳明王を本地仏として、申の歳と方位をお守りしている。
源泉は野沢温泉のシンボルである麻釜から引いている。
脱衣所と浴室が一体型の浴場で、いい感じに鄙びている。透明な湯に、大量の白い大きな湯の花が沈んでいる。
かき回して、湯の花に囲まれて入るのは硫黄泉好き、湯の花フェチにとってはこたえられない。
もともと源泉の温度が86.9℃と高いので滝の湯同様に激熱を予想していたのですが、先客が水を入れてうめていたのか
丁度適温になっていました。メインストリートの角にある為場所的に恵まれているが、大湯に比べると
内装が鄙びた感じになっているので、地元民の利用が多いかと推察される。
河原湯
真達羅(しんだら)大将は普賢菩薩を本地仏として、酉の歳と方位をお守りしている。
旅の手帖2001年6月号の表紙に使われたのがこの河原湯。
この辺りは温泉街の中心であり、夕暮れ時になると浴衣掛けの観光客が、下駄の音を鳴らして行き交う。
ほとんどの方が近くにある大湯に向かうのに対し、ここ河原湯に立ち寄る方は驚くほど少なく空いている。
こちらも大湯同様リニューアルしてあり、外観は大湯を小さくした感じ。
脱衣所と浴室が一体型の浴場で、内装もばっちり綺麗に仕上がっている。
浴場の一角には「浄湯」と書かれた上がり湯があり、先客はそこで体を洗っている。透明な湯に、細かい白や黒い湯の花が舞っている。
少し足をつけてみると結構熱いのだが、先客曰く「上の方は熱いけど、入ってしまえば大丈夫」という発言には首をかしげた。
しかし、実際入ってみるとその意味が分かった。熱いのは上の方だけで、底の方は思いの外温く、不思議な感じがした。
もしかしたら、下の方から加水しているのかもしれないが真相は定かではない。
熱い湯ですが、まろやかな感じで気に入った。しばらく出たり入ったりを繰り返して湯の感触を楽しむ。
立て続けにじっくり2湯に入ったので、浴後アクエリアスにて水分を補給する。
宿へ戻り、夕食前に急いで宿の内湯に入る。自家源泉を持ち五色の湯と五岳の湯の混合だそうだ。
湯温が高いせいか湯は絞ってあるが、広い浴槽なので湯口と反対の端の方につかれば適温に近くなる。
浴槽の底には恐ろしく大きな白い湯の花がたくさん沈んでいた。
こんな大きな湯の花は見たことがなく、面白くなって拾い集め顔になすりつけたりしてしばし遊ぶ。
熱いけれど、ぴりぴりする感じはなく、まろやかな感じがするいいお湯だ。
それにしても野沢温泉は不思議だ。硫黄泉でありながらアルカリ性であり、湯の花の量も種類も豊富である。
共同浴場が多くその点では草津温泉と共通しているが、また違った趣で外湯制覇の野望が目覚める。
夕食後に卓球で軽く汗を流し、再び湯巡りを再開する。お気に入りとなった真湯へ向かう。
昼間もそうだったのだが、街中至る所に蛾がとまっており、その数は異様なまでの多さだ。
真湯は地元住民にもかなりの人気で、混み込み合っていた。ここでも蛾が数匹紛れ込んで気になって仕様がなかった。
おちおち入っていられず、先客達も時々じっと蛾の行方を目で追っていた。
蛾の恐怖はこれだけにとどまらず、自販機でアクエリアスを買おうとしたら蛾が襲ってきた。
街灯の所にとまっている蛾は人が近づいてくると、群れをなして寄ってくる。
持っていた傘でなんとか蛾の襲撃を避けながら、熊の手洗湯へ向かう。
熊の手洗湯
因達羅(いんだら)大将は地蔵菩薩を本地仏として、午の歳と方位をお守りしている。
文字通り熊がお湯で手を洗っていることから発見されたいう伝説により、野沢温泉発祥の地とされている。
温泉街からはずれた所にあり、木造の古い建物で、中に入るとさらに年季が感じらる。
ここも脱衣所と浴室が一体型の浴場であるが、かなり広めで他の共同浴場とは趣が異なる。
脱衣場の木製の棚が一方の壁面を占拠しており、コンクリート打ちっぱなしの広めの浴槽がある。
ここは、熱い湯で知られる野沢温泉の中では珍しい温いお湯である。
一口に温いと言ってもあくまでも他の共同浴場との比較であるので、適温と言った方が適切だろう。
2つある浴槽の内奥の広めの浴槽には、すぐ裏手にある薬師堂裏で湧いている温いお湯(熊の手洗湯)が注がれている。
透明の湯に、白と灰色の湯の花が舞い、硫黄臭はそれほどきつくなく、飲んでみてかすかに感じる程度。
ここでは湯温が温いために、加水しない源泉の湯を楽しむことができる貴重な存在である。
当然のことながら、他の共同浴場で見られた浴槽に加水する為に設置してある水の蛇口など存在しない。
手前の小さめの浴槽には、源泉は定かではないが、別源泉の熱い湯が注がれている。
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