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信濃温泉巡り第二章
2001.09/19〜09/24

まぶりん麻呂。ちえりん
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(注)温泉名 施設名 料金 営業時間 定休日

9/22
 ここ白骨温泉は標高が高く、また昨日来の雨の為、朝方はたいへん冷え込んだ。秋とは名ばかりで、一気に冬に突入したかの感じがした。 朝食の後にゆっくりとお湯に入る。昨日とは打って変わって素晴らしく晴れ、紅葉の葉の間から朝日が白いお湯を照らしている。 朝風呂の醍醐味は、朝日の当たり具合に尽きると言える。朝風呂は、斜光線により影や立ち上る湯気が強調され、温泉情緒をひときわ感じる。 それも大好きな白濁した温めで、こじんまりした露天風呂とくれば文句の付けようがない。 向かいの有名な泡の湯の広大な露天風呂と対照的に、ここ丸永旅館のお風呂はこじんまりとしている。 有名になればなるほど、規模を拡大したり、施設を豪華にして、いつしか古き良き昔の精神を忘れてしまった宿をうんざりするほど知っている。 その一方で近代化を計りながらも、宿泊料金はできるだけ値上げせず、お湯の良さを守っている良心的な宿が存在する。 ここ丸永旅館はそうした数少ない良心的な宿のひとつであることは間違いない。 ガイドブックにも載っておらず、従って有名処にありながら意外な穴場の温泉であることをしみじみと実感する。 浴後に部屋の窓から外を眺めると、宿の飼い犬が淋しそうにこちらをじっと見詰めているのが見える。 カメラを向けると、嬉しそうに尻尾を振ってきて近づいてくるので、記念撮影をしてやると満足げに日向ぼっこをし始める。

 白骨温泉を後にし、上高地乗鞍林道を下り乗鞍高原へ向かう。このルートは冬季も通行止めにならず、路線バスが通っている。 有料道路だけに、沢渡から白骨温泉への細い道に比べると格段に快適なワインディングロードだ。 乗鞍高原温泉に到着し、無料の駐車場に車を停める。目の前には乗鞍湯けむり館という日帰り温泉施設があり、営業時間は始まったばかり だが結構訪れる観光客が多い。本当は明かしたくないのだが、乗鞍高原温泉にはせせらぎの湯という無料で入浴できる場所がある。

乗鞍高原温泉「せせらぎの湯」 無料 24時間? 年中無休?
 別に地元民専用という訳ではないのだが、地元としてもあえて宣伝もしておらず、当然のことながらガイドブックにも載っていない。 知る人ぞ知る秘湯である。とは言え最近は口コミで、かなりその存在を知られてきている。 場所については「想像にお任せします」。浴舎のかなり手前には、大きな木の箱が置いてある。 中を覗いて見ると、クリーム色の湯の花がぎっしり詰まっている。 どう見ても湯の花採取の為に?人工的に作られた施設である。触ってみると乾燥しておらず、湿り気をかなり含んでいる。 硫黄の匂いのする泥と言った方が適切な表現だろう。持って帰りたい衝動に駆られるが、それは半ば犯罪行為であるので止めておく。 浴舎はシンプルな木造の建物で、共同浴場の風情である。観光用というよりも、地元の人が手軽に入浴できるように作られたものと思われる。 浴室は一応壁があるのだが、お湯に入った時の目線よりちょっと上くらい所までしかない。 覗き防止の為か、建物の周りには有刺鉄線が張り巡らされている。 女湯はともかく男湯にも入り口に鍵をかけることができる。まあ3、4人くらい入ってしまえば満員なので貸切にすることも出来る。 脱衣所には利用者の統計を取る為であろう、正の字で毎日の入浴状況が記入されている。 さっそく自分も記入する。日によってかなりばらつきがあるのが面白い。 土日や連休は当然混雑するのだろうが、平日でもかなり天候等によって利用者の数は変わってくるのだろう。

 男湯からは展望は利かないが、女湯はせせらぎの湯のとおり、浴室からは川のせせらぎが見えるそうだ。 乗鞍高原温泉のお湯は、白濁しているものの、白骨ほど真っ白な乳白色ではない。 先客が一人入っており、挨拶しようとするのだが、どうやらぐっすり眠り込んでおり、目を覚まさないように静かに入る。 お湯が動くのを感じて、ちょっとびっくりして目を覚ますが、何事もなかった様にまた眠り込んでしまった。 くどいようだが、もう少し建物の建て方を工夫してくれれば、男湯の方からも川のせせらぎが楽しめるのだが。 清掃も行き届いており、注意書きの類も見られないことから、利用者のマナーは良いものと思われる。

 再び駐車場へ戻り、松本方面へ向かう。道すがら番所の滝の駐車場が見えるが、係員がいて駐車料金をしっかりとっている。 実はこの滝は見てみたかったのだが、貧乏性な為、駐車料金がもったいないので、断念する。 乗鞍高原には他にも有名な滝がいくつかある。ゆっくり温泉に滞在してトレッキングや滝巡りを楽しんでみたい、高原のリゾートだ。 また、標高がかなり高い割に高低さが比較的少ないので、サイクリングコースが整備されている。 以前人気ドラマのロケ地に使われたほど、ペンション街は高級感漂い、北欧のリゾート地を思わせる落ち着いた風情が売り物だ。 また蕎麦の有数な産地として有名なので、この地で是非新蕎麦を食べてみたいものだ。 国道158号線を松本方向へ向かうと、安曇村役場が現れる。この付近に最近日帰り温泉施設が出来たので立ち寄ることにする。

竜島温泉「せせらぎの湯」 400円 10:00〜22:00 月曜休
 国道158号線から川を渡り、発電所の近くに最近出来たばかりの日帰り温泉。 ドライブの途中に気軽に立ち寄れる、ロケーションの良さからか、駐車場にはかなりの車が停まっている。 内湯はジェットバスなどがあり、新しい温泉にありがちなありふれた印象は否めない。 お湯は少々熱めで、どうやら循環している模様。泉質は透明な単純泉。 最近の建物特有の機密性の高さからか、湯気が室内にこもり、大きなガラス窓からは外の景色がほとんど見えない。 折角の眺めの良さがこれでは台無しだ。もっとも冬場のことを考えると、換気と隙間風とのジレンマが存在するのだが。 むしろここの魅力は露天にあると言える。露天の檜のシンプルな浴槽はそれほど大きくはない。 幸いにも掛け流しでなので、湯量と温度の関係から考えると、これくらいの大きさが丁度良い。 山が両脇に迫ってきている為、眺望はそれほど利かないが、山の緑が目にしみるように美しい。 目の前の山を借景にして本格的な庭園が有り、計算し尽くされたダイナミックな景色に思わず見とれてしまう。 泉質うんぬん以上に露天の雰囲気が大変良く、最近出来た施設の中では期待以上の出来でなかなか気に入った。 乗鞍の硫黄泉の仕上げ湯に立ち寄るには、もってこいのお湯である。

 再び国道158号線に戻るが、すぐに白馬方面へ抜ける抜け道へと左折する。この道は国道158号線に並行しており、 そのまま松本方面へ行くのにも重宝するが、乗鞍と安曇野・白馬方面を行き来するのに便利で、何度となく利用している。 普段は分かり易い安曇野広域農道を北上するのだが、気分を変えて別のルートで行くことにする。 かねてから景色が素晴らしいと聞いていた、日本アルプスサラダ街道を北上し、室山を目指す。 林檎畑が広がり、北アルプスの雄大な眺めを楽しむことが出来る。 信号機はなく快適な道だが、道幅はそれほど広くなく、一時停止の標識が多く、景色にばかりに見とれていると危険である。

 室山は標高793Mほどの小高い山で、安曇野や松本平を見渡す360度の眺望が楽しめる。 山の上には、ファインビュー室山という公共の宿が98年にオープンしている。 施設内には安曇野みさと温泉と名付けられた日帰り温泉があり、その眺めの良さから地元では人気が定着しつつある。 今回は、持参の携帯食料で昼食にする為に、室山アグリパークというちょっとした遊園地へ向かう。 駐車場からちょっと上ったところに展望の利く場所に東屋があるので、そこで昼食にする。 芝生の広場の先には巨人伝説で知られる「でいだらぼっちゃ」をかたどった展望台がある。 「でいだらぼっちゃ」は、もののけ姫にも登場している為、最近はその存在を広く知られるようになっている。 その昔、「でいだらぼっちゃ」が服についた土を落とした所、この室山が出来たという伝説が残る。

 信濃大町から西へ進路を変え、葛温泉へと向かう。 紅葉にはまだまだ早かったが、山が迫っている割に道幅が広く、ここは快適なドライブが楽しめるおすすめの道だ。 途中には湯量豊富なことで知られる葛温泉があり、高瀬館、仙人閣、温宿かじかの三軒がある。 ここの温泉は周辺一帯のの温泉に引き湯しており、自然のままのたたずまいと露天風呂で、登山者の間では特に有名だ。 以前訪れたことのある温宿かじかにお邪魔しようと、駐車場へ入ると、日帰り入浴客の車でごった返していたので諦める。 さらに奥へ車を進め、七倉ダムへと向かう。しばらく行くと大きな駐車場とバス停があり、登山客がバス待ちをしている。 これより自家用車立ち入り禁止との表示があり、そこには三角屋根の素朴な山小屋風の七倉山荘がある。

七倉温泉「七倉山荘」 500円 10:00〜16:00 4月下旬〜11月中旬
 さらに奥にある高瀬ダムや七倉ダムの工事の後、古くからの山小屋に温泉を開設したのがそもそもの始まりだそうだ。 玄関で声を上げるが、誰も出てこないので、炊事場の女将さんらしき人に声をかける。 夕食の支度で菜っ葉を洗っており、声をかけるとちょっとびっくりした様子だった。 それもそうだろう、こんな山奥まで温泉を入りに来るだけの人間なんて何人も入るはずもない。 小さ目の浴室と浴槽だが、掛け流しで適温の湯加減だ。茶色の湯の花が浮かんでいる。 窓の外にはススキの穂が風にたなびいている。深まり行く秋を感じつつ、ひっそりとした風情で、ゆっくりと秘湯ムードにひたる。 茶色き湯の花は、珍しいなあと思ったので後で聞いて見ると、実は葛温泉もここと同じ泉質だそうだ。

 葛温泉は周辺に引き湯しているが、茶色い湯の花など見たことはない。温宿かじかでも湯の花は見られなかった。 よくよく聞いてみると、仙人閣の露天風呂に行けば茶色い湯の花に出会えるそうだ。 葛温泉でも仙人閣の露天風呂以外はみな濾過しているので、湯の花は見られないそうだ。 そういう点でも今回はここまでやってきたことに、大変満足感を感じた。 女将さんは話好きな人で、この辺近辺の温泉はほとんど入ったと言うと、とっておきのプランを教えてくれた。 ここをベースにして高瀬ダムまでタクシーで奥へ行き、さらに徒歩2時間かけて湯俣温泉に行くのである。 ここは温泉ファンの中でも有名な秘湯中の秘湯で、湯の色が異なる3つの露天風呂や噴湯丘で有名である。

 七倉温泉からの帰り道、トンネルを出た所に、ロックフィル式の七倉ダムが見えたので撮影する。 岩を積み上げているので、巨大な城砦の様にも見える。何となく中世の城郭を思い起こさせる壮大な建造物だ。 途中の葛温泉では、相変わらず日帰り入浴客と思しき車で賑わっている。 この日は曜日・時間帯的に混み合っていそうなので、後日一軒ずつゆっくりと訪れてみることにする。 このまま白馬方面へそのまま向かうには時間的に早いので、もうひとっ風呂浴びることにする。

大町温泉「大町市民浴場」 300円 09:00〜19:00 火曜休
 持参の地図ではあらかじめ位置を確認していたのだが、入る道を間違えてしまい、見つけるのに苦労する。 地図上では温泉は道から少し入った所に書いてあったので、場所を地図通りに入力した。 ところが、あまりに奥まった所を指定したので、一本手前の細い道へナビゲートされてしまった。 運良く子供連れの方がいたので、道を尋ねると、やはり入る道を間違えていた模様。 カーナビ装備のレンタカーだったのだが、最後に物を言うのはそれを使いこなす人間なんだと、改めて実感した。 隣に劇団四季の博物館があるので、それを目印にして行けばまず間違うことはない。

 一見する公民館にしか見えず、観光客が立ち寄ることはなさそうな雰囲気だ。 利用者の大半が大町市民であろうと推察される。当然市民と部外者で入浴料が違う。 受付で大町市民を詐称してみようかと思ったが、変に突っ込まれる可能性があるので部外者の料金を払う。 ちなみに最近改装した上山田温泉「つるの湯」では、IDカードのようなものを券売機に入れるシステムになっていた。 待合室を通り抜け、長い廊下を歩いていくと、突然一昔前の風情の内装が現れる。 この風情は、古くからの共同浴場に似た風情で期待が高まる。 やはり最近の新しい日帰り入浴施設よりも、ちょっと古びた施設の方に魅力を感じる。 脱衣所の窓が開け放たれていて、外からは丸見えだ。もっとも外を歩いている人など皆無に近いのだが。 浴室は広々としており、浴槽の一部は浅くなっており、半身浴ができる作りが嬉しい。 葛温泉からの引き湯であるが、残念ながら茶色い湯の花はない。よく温まるお湯として、地元では親しまれている。 大町温泉の立ち寄り湯では博物館に併設の「薬師の湯」が有名だが、駐車場が狭く、料金もここより高い。

 湯上り後に行き付けの白馬のレストラン「カルナージュ」へ向かう。 白馬へ来る度にここで何度となく食事をしたり、お茶をしたりしている。また、ペンションを経営しており、格安料金で泊まれるのも魅力だ。 ここは、食事処としても気軽に利用することが出来、また店員の質も高く、広い駐車場もあり、重宝している店のひとつだ。 ケーキセットをいただき、向かいの土産物屋で白馬土産の中では一番人気の銘菓「雷鳥の里」を買い求める。

 本日の宿白馬くるまやは、国道から少し入った所にある、思ったより古い建物の民宿であった。 宿の敷地の広場からは、白馬山々が望め、キャッチボール、フリスビー、バドミントンなどをするのに最適の場所である。 宿に入ると、大きなゴールデン・レトリバーのミッシェルが服の袖に噛み付いて離さない。 よほど退屈していたのだろう、人懐っこい犬だ。昔、犬を飼っていたことがあるので、犬の方でも犬好きな人間というのは一目見て分かるのだろう。 しかし、初対面でここまで熱烈に歓迎されたことはない。部屋でくつろいでいると、長時間のドライブのせいか、疲れがどっと出てきた。 宿の風呂にゆっくり入り、出てくると夕食の支度の音がする。玄関を上がった所には囲炉裏があり、毎日一組がここで食事をすることができる。 ここは、民宿というより、遠い親戚の家に招かれた気分にさせてくれる、そんなアットホームな雰囲気が気に入った。

 しばらくすると、囲炉裏に火が入り、二階まで炭のにおいが立ち込めてくる。 ここは格安の宿であるが、連泊するので実は料理に密かに期待はしていた。 出て来た料理の質・量共に申し分なく、今まで泊まった格安の宿のイメージとはかけ離れた素晴らしいものだった。 キノコや栗など地の物をふんだんに使った家庭的な料理には、作り手の愛情が感じられ、久々に料理に対し感動すら覚えた。 また宿のご主人が話好きで、人間嫌いな自分でも知らず知らずの内に、白馬の魅力を饒舌に語るその語り口に魅了されていった。 本当にこんなんで採算とれるのだろうか?と思うほどの料理を食べつつ、囲炉裏の脇に置いてあった宿泊者の感想ノートを眺める。 利用者の殆どがリピーターで、インターネットで知ったというのが圧倒的に多かった。 料理に対しては絶賛の言葉が寄せられており、老朽化した施設面(ハード)よりも食事に象徴される(ソフト)が補って余りあるという 意見が大半を占めていた。この点は実は宿選びをする際のひとつの評価基準にしており、久々にいい意味で期待を裏切られた。 また、旅行前にくだらない質問をしても、丁寧に返事をしてくれ、そういった心遣いも非常に嬉しかった。

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