今回の旅は2泊3日の日程ながら、非常に中身の濃い内容となった。
鉄道・温泉・CafeとHPで取り上げているコンテンツの取材の意味合いが色濃い旅である。
松本は気になるCafeが何軒かあり、馬肉や蕎麦といったグルメも充実しているので今後も足を運んでみたい街のひとつだ。
鉄道は、スーパーあずさE351系の試乗、新型のE257系、旧国鉄色の183系あずさの撮影。
温泉は、松本市内の浅間温泉、秋山郷、志賀高原の温泉。
Cafeは松本市内の旅館併設の老舗の店、和菓子の店が最近出店した店を回ってみた。
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スーパーあずさの愛称で知られるE351系は、かつて藤沢に住んでいた頃、湘南新宿ライナーの最終便でよく利用した。
本来のスーパーあずさとして中央本線の特急あずさに乗るのは今回が初めてである。
八王子駅から一番後ろの車両に乗るが、平日にもかかわらず結構乗車率は高い。
やはり人気のある車両なので、それだけ利用者が多いということだろうか?
新型のE257系が配備され、古い183系の車両は間もなくなくなっていく中、このスーパーあずさの車両は優等生的な存在だ。
伝統的な中央東線の特急あずさの流れをくむ落ち着いたカラーリングと、振り子設備によるカーブ時での安定した走行性能が特徴。
E351系あずさは、現在のJR東日本の在来線の特急車両の中でも近代化の先駆者として、今なお根強いファンの多い車両だ。
中央本線は利用する機会は多いが、松本まで特急で行くのは本当に久しぶりだ。
新幹線では車窓をゆっくり眺める余裕はないが、在来線の特急くらいのスピードなら車窓を眺めるゆとりがある。
八ヶ岳や甲斐駒ケ岳の勇姿を眺めているとあっという間に終点松本に到着する。
鉄道利用の際の宿泊先はなるべく駅に近いホテルを選ぶようにしているが、最近お気に入りでよく利用するのが東急インチェーンだ。
今回も松本駅前に東急インがあるので利用することにして、一旦荷物をフロントに預けて身軽になってから街へ繰り出す。
駅前から出ているワンコインの周遊バスに乗り、松本城の裏手の鷹匠町で下車する。
バス停そばの松本神社に寄り、開智学校を横目に見ながら開運堂 松風庵へ向かう。
山々が連なるアルプスの山並みをイメージしたという特徴ある屋根の下に、何やら目立つ幟が立っている。
持ち返り用の菓子である冷し白玉の宣伝である。開店直後というのにすでにお客さんがちらほら訪れている。
店内に入り、お茶席(喫茶コーナー)へ向かう。そこには京都かと見紛うばかりの素晴らしい庭園が広がっていた。
驚いたことに仕切りの大きなガラス戸が開け放たれていたので、庭とお茶席が一体となっている感じを強く抱いた。
数寄屋造りの茶室を木の間に臨み、店の名前になっている松の木の間から吹いてくる風が心地良い。
松の木の他に楓の木が植えられており、目線を下に向けるとほたるぶくろやつつじの花が咲いている。
庭先に野鳥が盛んに飛んできてはさえずっており、視覚だけでなく聴覚をも刺激してくれる。
視線の低い位置には野草やつつじ、真ん中には背の高い松の木や背の低い楓の木、そして奥の茶室が借景となっており、
実に計算しつくされた庭である。この庭を見ただけでもただものではないと思ったが、出された物を見てさらにその思いは強くなる。
自分は冷し汁粉を妻は白玉クリームあんみつを注文した。
麦茶の入ったガラスの器や食べ物の器が、ひとつひとつ異なった器で提供されていて、それがまた非常に洗練されている。
冷し汁粉は初めて食べたのだが、汁に思ったよりとろみがついていて味も意外と濃厚な感じ。
つぶ餡で小豆の粒がしっかり残っており、丁寧に作られた白玉はべたつかず、しっかり冷やされていた。
白玉クリームあんみつは、あっさりした白蜜と寒天、白玉、栗、アイスというシンプルながら結構食べ応えがあったそうだ。
特に寒天と白蜜の取り合わせが素晴らしく、それだけ食べてももかなり美味しかった。
感動さめやらぬまま、次の目的である蕎麦屋五兵衛へ向かう。
ここは、相互リンクしているうまさんにすすめられたので立ち寄ってみた。
松本市内には有名な蕎麦屋が数多くあるが、開運堂 松風庵の近くにあることと、浅間温泉へ行くバス停の近くにあることで
昼食をここで取ることに決めた。開店の時間にはまだ10分ほど早かったが、既に厨房では蕎麦を打っている気配が感じられる。
程なくして店の扉が開き、すかさず韃靼蕎麦を注文する。
説明すると長くなるので割愛するが、この蕎麦は中国原産で黄色い色の蕎麦で、噛めば噛むほど苦味を感じる薬膳蕎麦だ。
普通の蕎麦とは違った風味や香りだが、意外と美味しい蕎麦だった。限定10食のみなので早めに行かないと売りきれてしまうこともあるそうだ。
ここでしか味わえないということなので、じっくり味わって食べたのだが、最近自宅近くの富沢商店でも売っているのを見つけたので
今度買ってきてまた独特の味を味わってみようと思う。
梅雨時なので天気が心配だったが、さんさんと日が降り注ぎ、浅間温泉行きのバス街の間、初夏の陽気で汗ばむくらいだった。
浅間温泉へは頻繁にバスが出ており、割と近い場所にあり、共同浴場もいくつかあるので今回回ってみることにした。
これだけの大都市の近くに温泉街があるのは珍しく、松本市民がうらやましくなってきた。
まずは浅間温泉の入口に位置する共同浴場の港の湯へ向かうことにする。
下浅間(したあさま)バス停を降りると目の前に共同浴場らしい建物があるが、普通の民家の物置くらいにしか思えないので
その存在を知らなければ決して気が付くことはないと思うくらい飾り気の無いコンクリートの建物である。
浴室、脱衣所とも意外と広い。無人かと思われたが、ちゃんと番台があり少し安心した。
浴室と脱衣所の境は大きなガラス戸になっており、さらに番台から浴室の様子が見えるように小窓がついている。
平日の昼過ぎだった為、午前中の入浴客はそれほど多くなかったらしく、ただでさえ熱めのお湯がさらに熱く感じた。
番台のおばちゃんはうめてもいいよと言ってくれるが、加水せず洗面器でしばらく湯もみをしてから入る。
楕円形のタイルの浴槽で、カランとシャワーがある。やはり、浴槽のお湯で体を洗うのには熱すぎる為、後から設置したのだろう。
浅間温泉の入口にあり、ぶらっとバスで訪れるのには便利なお湯である。
次は倉下の湯へ向かうのだが、バス通りをそのまま歩いて行くと遠回りになるので、近道を通って行った。
また、この道は単に近道であるばかりではなく、実に趣深い道で散策するにも最適な道だった。
柳の並木や土蔵の立ち並ぶ一角があり民家の庭先には紫陽花の花が咲き、目の湯という由緒のありそうな古い旅館があったり
かつての浅間温泉を思い起こさせるような歴史の深さを感じさせられた。
仙気の湯という小奇麗な共同浴場はパスして、さらに浅間温泉の奥深くへ歩を進める。
温泉街は旅館やホテルが密集しているが、平日の昼間のせいか人通りはほとんどない。
予期せぬ地元住民専用の柳の湯という共同浴場を発見したり、浅間温泉分湯所という湯元らしき場所?を発見しながら倉下の湯を探す。
ここも浅間温泉の立ち寄り湯の相場である200円で入れるのが嬉しい。
かつて旅館の部屋として使っていた部屋はきちんと清掃が行き届いており、休憩室として十分使えそうな感じである。
二階へ向かう階段や廊下などを見ているとなかなか風情があり、泊まってみたい気分になる。
かつて旅館の内湯だった割にはカランもシャワーもなく、あるのは水道の蛇口だけである。
湯口の下にはパイプから出て来る汚れを受ける網が置いてあり、見た目にはちょっとよろしくない。
汚れに混ざって白い湯の花のようなものが一緒に出て来ている。
浴室自体が道に面している都合上、窓が小さい上に目隠しのコンクリートがある為に換気がうまく行かず、少々閉塞感を感じた。
誰も入ってこないことをいいことに浴槽の縁に頭を乗せて、とどになって横たわる。
浴室の天井の換気窓を見ると歴史を感じさせるが、浴室全体はタイル貼りにリニューアルされている。
次に向かったのは北せんきの湯。
細い路地に掲げてある看板には料金の支払方法、営業時間まで書いてある。
向かいの家に料金を支払い、細い路地を下って行くと、北せんきの湯はその奥にあった。
相当年季の入った浴槽のおかげで湯は黒く見えるが、色は透明である。浴槽の内側には木のけばが毛のように生えているのが面白かった。
湯口からの湯量は浴槽の広さに比べかなり贅沢な位で、湯口は茶色に染まっている。
噂通り白い糸くず状の湯の花と半透明のゼリー状の湯の花が認められた。後者は手に取ってみるとプニプニしていてグミのような感触だ。
つぶしてみると溶けて液体になってしまうのが不思議だ。こんな湯の花は見た事がない。
かなり熱いお湯なのだが、草津で鍛えられた私にとっては加水せずにギリギリ入れる程度の熱さに感じる。
さすがに長湯は出来ないので、窓を開けて涼しい風に吹かれて体の火照りを冷ましては、浴槽に入るということを繰り返した。
浅間温泉は単純泉ということなのだが、こんな圧倒的な存在感のあるお湯があるなんて思ってもみなかった!
もうしばらくするとW杯の日本vsチュニジア戦が始まるので、街中の電器屋さんの街頭テレビで応援しようと思い、
予定より早めに浅間温泉を後にする。松本駅行のバスに乗り、女鳥羽川の橋の手前の本町で下車し、縄手通りをそぞろ歩きながら
対岸にある旅館併設のカフェまるもを目指す。
雑然したイメージだった縄手通りは街作り事業の一環として、整備され石畳に武家屋敷長屋門風造りでかつての城下町を思わせる。
松本の喫茶店と言えば「まるも」というくらい有名なこの店の併設の旅館に泊まりたかったのだが、
翌朝早立ちのスケジュールだった為、次回の楽しみに取っておくことにする。
古びた扉を開くと、かなり照明が暗くなっているので奥の方まで見通せない。
しばらくして目が慣れてくると、店内の大部分が松本民芸家具で占められていることに気が付く。
炭焼きコーヒー、苺のミルフィーユ、リンゴのタルトを注文する。
特筆すべきは、リンゴのタルト生地に甘い酸っぱいリンゴのエキスが十分に染みており、しっとりとしていたことだ。
もともとリンゴのお菓子の類は好きな方ではないのだが、ここのリンゴのタルトは初めて美味しいと思えた。
座った席の脇には膨大な数のクラシックを中心としたCDがずらりと並べてあり、スピーカーが真横にあった。
流れてくる物悲しいピアノの曲は、どこかで耳にしたことのある有名な曲で、BGMもこの店の雰囲気にぴったり合っている。
カウンターにも近く、図らずもベストポジションに座れたのは幸運であった。
縄手通りの八百屋のTVを覗いて見たり、中町通りの家具のショールーム寒山でラジオに耳をすませてみたりしてW杯の情報収集をする。
都合により閉店させていただきますという貼り紙が目立ち、店仕舞いをしている店が大半で人通りはほとんどない。
楽しみにしていた倉のまち中町の散策は後日ゆっくりと楽しむことにする。
ハーフタイムの頃を見計らって源池の井戸で美味しい水を飲んでから、電器屋さんがありそうな本町通りへ向かう。
マンションの前を通りかかった時に物凄い歓声が起こっていたので、その時が多分1点目の森島のシュートだったのだろう。
電器屋の店頭のTVにたどりついた時は中田の2点目が入り、後半の半分が過ぎた頃だった。
結局最後まで店頭のTVで試合終了まで観戦し、一旦ホテルへ戻り一休みしてから馬肉料理で有名な米芳で夕食にする。
この店では、馬肉には味噌が合うという新しい発見があった。
東急イン松本の部屋からは、松本駅構内の様子が鉄道模型を見るように手に取るように見えた。
列車が発着する度に汽笛がこだまし、その度に窓から夜汽車の風情を心行くまで楽しんだ。
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