ここは以前旅館として営業していたのだが、現在では日帰り入浴のみ受付をしている。見た感じは普通の民家と大差ないので入口の看板がなければ気付かずに通り過ぎてしまう所だった。ここも浅間温泉の立ち寄り湯の相場である200円で入れるのが嬉しい。かつて旅館の部屋として使っていた部屋はきちんと清掃が行き届いており、休憩室として十分使えそうな感じである。部屋に入ると、平成2年発行の浅間温泉の温泉分析書が貼ってあるのが目に飛び込んで来た。部屋に温泉分析書が貼ってあるなんて初めて見たが、昔の温泉宿ではこういうことは当たり前のことだったのかもしれない。二階へ向かう階段や廊下などを見ているとなかなか風情があり、泊まってみたい気分になる。
かつて旅館の内湯だった割にはカランもシャワーもなく、あるのは水道の蛇口だけである。湯は先客が加水したのだろうか、かなり温めであったが、これはこれで入りやすかった。湯口の下にはパイプから出て来る汚れを受ける網が置いてあり、見た目にはちょっとよろしくない。浴室自体が道に面している関係で窓が小さい上に目隠しのコンクリートがある為に換気がうまく行かず、少々閉塞感を感じた。誰も入ってこないことをいいことに浴槽の縁に頭を乗せて、とどになって横たわる。浴室の天井の換気窓を見ると歴史を感じさせるが、浴室全体はタイル貼りにリニューアルされている。共同浴場を思わせるシンプルな造りは、私の好きなタイプである。浴後は廊下の突き当たりの安楽椅子に座って、心地良い風に吹かれてまったりとした時間を過ごした。このしっとりとした風情からも、かつては武士階級しか入れなかったことということも納得させられた。