3/10
別府駅からレンタカーを借り、カーナビの設定をしたが走行中に操作を誤り、亀川方面へ行ってしまった。
別府観光港でUターンをするが、国道は渋滞していた為脇道にそれて観海寺温泉へ向かう。
行き先はちょっと秘密にしておきたいのでここではあえてふせておく。
事前の調査であたりをつけていた場所には、遠目から見て温泉の煙が所々にあがっている。
小さな橋を渡り細い急坂を登り始めた所で対向車が来るので、あわててバックして道を譲る。
登っている途中で鉢合わせしたら完全にアウトである。二度と車では来たくないと思ったほどの急坂である。
やっとたどり着くと、おばさんが手招きをしているので階段を上がり二階へ上がる。
ここは食事をすれば温泉に入らせてもらえるシステムである。先に食事の注文をし、撮影の為外へ出る。
犬がひなたぼっこしている。なぜか温泉地には必ずと言っていいほど犬が似合う。
なぜ猫ではいけないかと言うと、単に犬好きであって猫が嫌いなだけだからである。
お昼時のせいか次第にお客が次々とやって来て、帰る頃には駐車場には車が入りきらないほどであった。
名物のだんご汁(けんちん汁の中にほうとうがはいっているイメージ)を食べ、いよいよ露天風呂へ向かう。
別府一、いや九州一とさえ絶賛される素晴らしい別府湾の眺めだ。これほどの景観の湯は滅多にはない。
弧を描く海岸線のかなたには天気が良ければ佐田岬が望めるというが、今日ははっきりとは見えなかった。
コバルトブルーに乳白色が加わった、明礬の温泉保養ランドの露天の湯に似た見た目にも綺麗なお湯。
そして浴槽は驚くほど広いのである。というか温泉プールと言った方が適切な表現かもしれない。
885系新型特急車両が別府駅に進入するのが見える。鉄道模型を見ている様な大パノラマに酔いしれた。
大分自動車道別府ICより大分光吉ICを目指す。快適なドライブだったが、強烈な横風に悩まされた。
出発直前にメールで知人より教えてもらった塚野鉱泉へ向かう。鄙びた湯治色が濃い温泉地である。
三軒の旅館の内、手前の山水荘で聞くと内湯はないとのことで入湯料150円を払い共同浴場へ向かう。
150円という値段設定は旅館での入湯税と同額であるが、外来入浴料金が収受できているか怪しいものだ。
草津の外湯を彷彿とさせる風情であり、なかなかいい味を出している共同湯だ。
鉱泉なので当然沸かしであるが、湯口からお湯を出してみるとものすごく熱い。
色はうっすらと茶色く濁っており、いかにも効能が高そうな鉱泉である。
後で分かったことだが、ここのお湯は別府九大温泉治療学研究所高安博士のお墨付きの良質な鉱泉である。
浴後にペットボトルを手にした人が共同湯の奥に向かうのを見て、ついて行くと塚野霊泉があった。
宅配便にて発送用のポリタンクがずらりと並べてあり、水を汲みに来る人が絶えない。
ここは温泉に入るより飲泉としての名声が高いそうで、一口飲ませていただく。
炭酸泉特有の酸味が強く、塩辛い味のサイダーといった感じで一気に沢山はとても飲めない。
いよいよ日本一の炭酸泉の長湯温泉へ向かう。個性的な温泉が点在し、期待に胸が踊る。
途中山深い曲がりくねった30号線をしばらく走り、本日の宿紅葉館に到着したのは16:30頃であった。
部屋はがに湯のまん前で最高のロケーションだ。早速水着を着込んでがに湯へ向かう。
長湯温泉といえば芹川に浮かぶ露天風呂のがに湯が有名である。
今は人工の岩風呂になっているが、昔は自然の軽石の中から炭酸泉が湧出していた。
炭酸の泡の多さが特徴で泡を吹く甲羅のような軽石は蟹になぞらえられ「がに湯伝説」も生まれた。
かに湯に注ぐ炭酸ガス濃度は1200PPMを誇り、湯船でも700PPMを維持している。
この数字がいかに凄いかということは花王のバブの7倍ということからもうかがえる。
しかしあまりにオープンなロケーションの為、水着着用でなければとても入れたものではない。
緑色に濁ったお湯で温いので湯口の所に陣取る。上を向いた竹筒から湯が一定のリズムで吹き出している。
湯が下に流れ出して来て、そのうち炭酸の泡と共に勢い良く蟹の泡よろしく湯があたり一面に飛び散る。
旅館の窓より打ち合わせ通り、入浴シーンを撮影してもらう。
少々風が強く肌寒く感じられた為、日が暮れるまで1時間以上芹川のせせらぎに耳をすませながら長湯した。
ギャラリーが何人か現れたが、さすがに入ってくる人はいなかった。
ここは見るだけの人がほとんどで、入るのはよっぽどの温泉好きであると思われる。
夕食後宿の内湯に入る。40℃くらいで温めでありこの温度の炭酸泉が体に最も良いと効能書きにはあった。
鉄分を多く含むのか浴槽は茶色に染まっているが湯は無色透明で、ちょっと物足りない感じがした。
3/11
今朝はかに湯に入っている若者?グループの騒がしい絶叫で目覚める。時計を見ると5時過ぎである。
しかもこんなに冷え込んだ早朝によく入るものだ。自分も密かにその時間帯を狙っていた口なのだが…
旅館の温めの内湯にゆっくり入ってから湯巡りを開始する。大盛況のがに湯を横目に天満湯へ向かう。
入口で40円を入れると自動ドアが開くシステムだ。一説によると一度に三人入れるという説があるが、
回転式ドアの方が無銭入湯防止に有効だと思われた。営業開始を待ちわびていた先客二人に先を越された為、
浴室の撮影は断念する。あくまでも個人的な見解ではあるが長湯温泉には二つの泉質があると思われる。
ひとつはがに湯に代表される緑色に濁ったがに湯系、もうひとつは天満湯に代表される透明な天満湯系と仮に呼ぶことにしよう。
天満湯には大きな浴槽があるだけで他にはなにもないシンプルな造りだ。
お湯自体は宿の内湯を熱くした感じであまり印象には残らなかった。
さて帰ろうと思い自動ドアの前に立つが、よく考えてみれば開くはずはなく一人で苦笑いをした。
トイレのとなりのドアを開けるとさらに回転式ドア(遊園地等の出口で見かけるヤツ)があり、かなり厳重だ。
天満湯の前にあった地図を見ると長湯には私設の公衆浴場がたくさんある様だ。
がに湯の先に二軒あるので手前の大塚家の湯に向かう。
長湯温泉の看板があり、温泉の裏手には大量の湯が排出されているのですぐにそれと分かる。
本当に民家の庭先の物置としか思えない簡素なコンクリート造りで、扉を開けると開くではないか。
下足入れとわずかな脱衣スペースだけでいきなり浴槽があり、かなりの湯量が流出している。
一見して素晴らしい温泉だと分かった。偉そうにと思われるだろうが、様々な温泉を体験することで
自分なりの温泉に対する鑑賞眼は養われてきたと自負している。
天満湯系の透明なお湯で注ぎ込む湯量が物凄い。豊富な湯量であまり熱くもなく、
渋めで素朴な風情は温泉ファンなら入りたくなる穴場の名湯であろう。
かじか荘の所で右折して、芹川をかじか橋で越えると左手にしづ香温泉がある。
管理人が不在の為か先客の二人は無銭入湯の様だ。まぶりん麻呂はもちろん100円を箱に入れてから入る。
噂通り演歌が流れており、しばらくして管理人が来るとおもむろにボリュームを上げる。
管理人のおばあさんはかなりの演歌好きらしく、これでは温泉に入りに来たという感じがあまりしないが…
がに湯系の緑色でかなり濃厚な湯で、表面にはうっすら油分が浮いている。
浴槽の深さの好みは人それぞれであるが、まぶりん麻呂は膝を立てて入れるのを目安にしている。
ここはちょっと浴槽が深すぎて、あまりゆっくり入っていたい気にはなれない。
旅館に戻る道すがら清田家の湯に寄るが、廃湯になっている模様で荒れ果てていた。
朝食後に妻と栃原の湯へ向かう。別の温泉を温泉を見つけて近寄ると、ジモ専の秋吉温泉ではないか!
当然のごとく鍵はかかっていたが、ジモ専を発見したという喜びがこの時初めて分かった。
栃原の湯は青味がかっていたが、光の加減でその様に見えたのだろうか?
帰りがけに大塚家の湯の前を通って宿へ戻る。
チェックアウト後に宿近くの長生湯へ向かう。は建物、浴槽とも数々の賞を受賞し、温泉街に調和している。
がに湯系の緑色の48℃の熱い湯の為ので長湯できないが、浴槽、お湯とも万人におすすめできる。
ロケーションがいいせいか結構人の出入りがある。せめて入湯料は100円にしてくれないかなあ。
浴槽はまだ新しい為、析出した成分がこびりついていなかったが、何年後かにはいい味になるだろう。
長生湯をはじめとして各旅館から出る使用済みの湯は川に排出されているが、
長生湯の所だけ析出した成分が大きな岩の様に成長しており、その歴史の長さを感じさせられた。
千寿温泉に入りに西へ向かうとくず渕温泉や直入荘などあったが、とても全部入れないのが残念だ。
千寿温泉の駐車場はかなりの車があり、入る前から人気の高さがうかがえる。
温泉の建物はかなりゲロ渋で、浴室の方もかなり期待ができそうだ。
別棟の受付のおばちゃんに一人100円ずつ支払い、早速入るとなんと6人も先客がいる。
しかも入代わり立ち代り出入りが激しいのでこれでは絶対に浴室の撮影はできない。
がに湯系のしづ香温泉を更に濃厚にした感じでドロっとした浴感である。
奥の湯口からはゴボゴボガボッという音と共に炭酸ガスを多量に含んだ湯が噴出して、異様な雰囲気だ。
素晴らしい!ここは長湯で一番濃厚な湯であろう。濃厚な湯が好きなまぶりん麻呂好みのお湯だ。
浴場の床には析出物が黄土色をした月面クレーター状の層を成しており、凄みを感じさせる。
長湯という地名は長野地区と湯原地区が合併してできた地名であり、長野地区にあるながの湯へ向かう。
道すがら車窓から知り合いの温泉仲間が発見した山の中腹にある温泉マークを見つけ、近寄って撮影する。
ながの湯は大、中、小の貸し切り湯で人気の為、別棟に男湯と女湯が新たに出来ていた。
休憩室でしばらく待っていると中浴場が10分程で空いた。
ここは24時間利用可能で管理人が不在の場合でもきちんと料金が収受できる様にできている。
長湯温泉は温泉の先進国ドイツを見習って温泉施設や飲泉施設を整備して、ドイツから温泉の視察者も
必ずここの湯を訪れるとのことである。またここでは長湯の詳細な地図が置いてあるのが嬉しい。
長湯温泉は日本一の炭酸泉として有名で湯に溶けている状態なので炭酸濃度体感できなかったが、
ここの湯は透明で何の変哲もないが、入ってみると体に泡となって肌にまとわりつく。
あまり知られていないがこの近くに長湯を上回る物凄い炭酸濃度の為有毒ガスが発生する某温泉へ向かう。
その温泉は長湯からほど近い七里田温泉にある。最近できた温泉館ではなく、下湯という名前の温泉である。
ジモ専であるが温泉館で頼むと鍵を貸してもらえる。はっきり言ってここは万人向けではない。
というか大抵の人は入りたいと思わないだろうから、あえて場所の説明は必要ないだろう。
入浴の心得を一通りレクチャーを受け、温泉館の入浴料と共通なので券売機で入浴券を購入する。
ここは事前に大体の場所と建物の外観を知らなければ、決して見つけられないと思う。
左側のドアを開けると、建物の中には男湯と女湯のつもりだろうか浴室が二つある。
地元の方も最近はほとんど利用されない為で、右側の浴槽は湯垢とも湯の花ともつかない茶色の物が多い。
左側の浴槽はなんとか我慢できるくらいだったので湯をかき混ぜ、隅に茶色の物体を追いやる。
かつて経験したことのないゲロ渋な浴室で、個人的にはすっかり気に入ってしまった。
浴室はちょっとした銭湯くらいの広さで、綺麗に掃除をすれば一般に開放できるのでは?と思ったが…
温度がかなり低い為加熱が必要であり、維持するのも容易ではなく、日帰り入浴なら温泉館がある。
表面には油分が浮いており、パッと見には別に何の変哲もない透明なお湯である。
が、入ってみると体中に面白い程大きな炭酸の泡がびっしりとまとわりつく。お湯はかなり温めだ。
このままではなかなか上がれない。まず体を動かさないでおくと次第に暖かいお湯の層ができる。
足と足をくっつけ、腕を組みぴったりと胸につけ、体の表面積を小さくする。
毛深い方なので体毛についた泡が白く見え、おじいさんになった様だ。
泡は払いのけてもすぐに体にまとわりつく。これほどの泡は滅多に体験できない。
暖めたサイダーの中に入るといった感じが当てはまり、なめるとかつてない程の炭酸味がきつかった。
脱衣所の窓が開き、人の気配がする。なかなか戻らないので、温泉館の方が様子を見に来た様だ。
温泉館へ戻る途中で鍵を貸してくれた温泉館の方が車で通り過ぎたので軽く会釈をして見送る。
下湯に対して地元では温泉館は上湯と呼ばれ、対照的に白っぽくて熱い湯だ。
流石に今日はハイペースで入り続けた為のぼせてしまった様で、頭と体を洗い終えると鼻血が出た。
七里田温泉は江戸時代は岡藩の殿様も入りに来て、大変な賑わいを博していたそうだ。
平成10年に温泉館が出来てから入浴客が押しかけ、地域の活性化が期待される。
外には源泉が持ち帰り可であったので、ペットボトルに詰めて持ちかえり飲料水にする。
本日の宿赤川温泉 赤川荘へ向かう。九重連山の素晴らしい眺めを楽しみながらの快適なドライブ。
源頼朝が、富士の巻狩りの作法を阿蘇大宮司に学ばせる為に派遣した梶原景時らが帰途、久住高原で
巻狩りを行った際に発見されたという歴史の古い温泉である。
九州大学温泉治療研究所温泉理学科によれば硫化水素と炭酸ガスを同時に含んでいる泉質は他に例がなく、
何にでも効くということでこの日も日帰り入浴で込み合っていた。
源泉が26℃ということで加熱している浴槽があり、冬場にはつらいが冷泉と加熱浴槽に交互に入る
温冷浴法が特に疲労回復に抜群という話を聞き、早速チャレンジしてみる。
まず手前の41℃に加熱された男女別の露天に入り体を温めてから21℃の混浴の露天の冷泉へ入る。
泉源が異なるのか、加熱浴槽の湯と冷泉の湯の色は全く異なっている。
加熱浴槽は緑がかった濃厚な白濁の湯で、冷泉はコバルトブルーに乳白色を混ぜたきれいな色だ。
この日は雪解けで温泉の成分が一気に出てきているとかで年間を通じても良好な湯の状態だそうだ。
ここで七里田温泉下湯での体験が生きる。大抵の人は、足をつけただけで退散してしまう。
混浴の露天には打たせ湯が新設されており、しぶきが飛んでくるので手前の岩肌の方に移動する。
この時の温度は21℃ということで入った時は恐ろしく冷たく感じられた。
何度か温冷浴法を繰り返している内に次第に体が慣れてきて、30分程繰り返している内に変化があった。
視力が悪いせいか慢性的に悩まされている首の凝りがすっかりとれているではないか!
体全体も軽くなっている。これだけ即効性のある温泉というのは大変珍しい。
加熱浴槽が空いてきたのでしばらく雄飛の滝を見ながら、鳥のさえずり、木々のざわめき、
硫黄の香りと体全体で秘湯のたたずまいを満喫する。
再び外来入浴者で込み合ってきたので内湯へ向かう。41℃に加熱された浴槽と源泉13℃の冷泉がある。
冷泉はさすがに冬場は無理で、腰までつかってすぐに引き上げた。
加熱浴槽は思いの外深く、注意が必要だ。奥の方に腰掛け用の大きな石がありそこでしばらくくつろぐ。
このくらいの湯温は長湯できるので気に入っており、気がつくと1時間30分以上経過していた。
夕食ははっきり言って期待していなかったが、出される料理は無農薬で温かいものをタイミング良く
出す手際の良さとこだわりの料理の質の高さに驚いた。これで7500円とは恐れ入った。
夕食の途中で池田オーナーによるミーティングが行われる。伝達事項と宿の宣伝が少々。
食後にもう一浴と思っていたが、夕食時に焼酎を飲みすぎてすっかり寝入ってしまった。
部屋には立派なテレビがあるが電波が受信できない為ビデオ専用だそうだ。
ビデオはフロントで貸し出しているそうで、テレビを見たい方は食堂でどうぞということだ。
夜は滝がライトアップされ幻想的な景色が楽しめるそうで、次回来た時には絶対に外せない。
3/12
翌朝は男湯と女湯が入れ替わっており、今度は雄飛の滝がよく見える。
注意したいのは沸かしのお湯は、壁で仕切られた左側から右側に流れてくるので右側の露天の加熱浴槽は
少々温い為、冬場は温冷浴法には適さないと思われる。
もっともまぶりん麻呂は懲りずに再度震えながら温冷浴法に挑戦したのだが…
朝食は御飯の外に出された手作りのパンがなかなか美味で、食後のコーヒーも格別の味わいだ。
朝食後に送迎担当の黒い犬のモモ子と警備担当の白い犬のリッキーと記念撮影する。
懇意にしていただいている甲府の某温泉の番頭さんのお土産に赤川温泉の湯の華を求め、宿を去る。
西へ車を走らせると瀬の本で、交通の要衝でありかつ眺めの良い場所だ。
乗馬でトレッキングをしている一団を発見する。雄大な景色の中では米粒くらいしか見えない。
黒川方面に車を走らせ、下鶴温泉 萬屋別館下鶴荘へ向かう。場所が今ひとつ分からなかったので、
本館で道を尋ねると向こう側の山のはるか上にあるということだ。なるほど眺めがいいはずだ。
ダートの急坂をしばらく行くと温泉付?分譲地があり、すでに売約済みの所もあり別荘なのだろうか?
下鶴荘は食事処としても営業しており、一組早めの昼食をとっていた。
黄色いお湯で少々温めだが、素晴らしい阿蘇の山々を眺めながらの湯浴みはなかなか気持が良い。
ダートの急坂を降り、小田温泉方面へ車を走らせ、滝つぼ温泉へ向かう。
道端に滝の看板があるが見えない。ここのはずだが、どうやら橋の真下にある様だ。
一応貼り紙がしてあり、入浴料は800円ということだが管理人は不在である。
確か滝のそばの川沿いにある素朴な露天風呂のはずだが、鍵のかかる脱衣所が作られ河原から
容易に近づきにくい場所に移転しており、無銭入浴を防止しようとしているのがうかがえる。
滝と露天風呂を撮影するだけに留めておく。田の原温泉へ向かう途中に秘境七滝の看板を見つける。
駐車場に車を止め、階段を降りていくと小ぶりな滝が連続しており、手軽に秘境が楽しめる。
知り合いから教えてもらった食事処を探すが、見つからないので黒川トンネルを抜けると、
「やまたけ」という田舎料理屋を発見。地鶏の炭火焼と自然薯が売りの店だ。
細身のさつまいもがあったので、後日ふかしいも用に購入しておく。
大きな畳の部屋にいろりがいくつも置いてあり、そこで焼き物をして食事をするシステムだ。
焼き鳥では重いので鶏汁にしておくが、我々以外は地鶏の焼き物を一斉にいろりで焼いているので
室内はたちまちいいにおいとものすごい煙が充満する。
駐車場はたちまち満車になり、相席の食事処にも客が入り、なかなか人気の店だ。
田の原温泉へ向かうと雨から雹に変わり、川沿いに「男はつらいよ」のロケに使われた大朗館を発見。
隣りにはレトロなグリーンの外観がいい味をだしている田の原共同浴場がある。
中へ入るといきなり浴槽があり、一応壁があるが男湯と女湯は通り抜けできる構造になっている。
もしかしたら真ん中の壁は後から作られたもので創建当時は混浴だったと思われる。
脱衣スペースの所に入浴料の案内の貼り紙と料金箱があり、そこへ200円を入れて早速入る。
浴槽の内側は析出した温泉の成分の為か黒くなっているが、透明なお湯だ。
浴槽は大きめだがなんとなく風呂場というより、昔の洗濯場といった風情だ。
確かに洗い物をしないようにという貼り紙がしてあったのには、思わず納得させられた。
男湯と女湯の仕切りの壁は思いの外低い。
こういった造りは古くからある共同浴場によく見られ、個人的には気に入っている。
湯上がりには雹は止み、天候は回復してきた。田の原温泉の先で右折し、ファームロードを行く。
この道は99年4月に開通したばかりの全長17.5kmの近道で、最新版の地図でなければ出ていない。
道幅が広く、カーブが少なく、谷間も橋で越え、鉄建公団の高規格なローカル線の様だ。
岳の湯、はげの湯、山川温泉、寺尾野温泉、田の原温泉をほぼ直線的に結んでいる。
旅程の作成にあたってこの道の存在はこの地域を迷わずに効率良く回れる切り札となった。
4軒の集落の奥にひっそりと寺尾野温泉 薬師湯はあった。
ある程度の事前の知識はあったのだがまさかこんな所に!と思う所にあるので、うまく説明はできない。
それでも探しに来る人が絶えないそうで、地元の人が迷惑しているとのことなので自力で探し当てた。
地元の人達が畑仕事の後のひと風呂用に作った温泉であり、入らせていただくという姿勢が特に求められる。
窓の外には山深い風景が広がり、古き良き日本を具現化している数少ない温泉と言えよう。
ブルーのタイルが目に鮮やかで、下足箱、脱衣所、浴室の清掃は完璧であり、かなり好感度は高い。
手前の浴槽は温めで、一応仕切りの板があるが浴槽は男湯と女湯はつながっている。
奥の浴槽は適温で、飲泉するとわずかに硫黄の味が感じられるがあっさりとしており飲み易い。
大変雰囲気が気に入ったのでいつまでも入っていたい気がしたが、後のスケジュールも詰まっている為、
40分程で涙を飲んで切り上げた。次回はゆっくり入りたい温泉である。
ファームロードを更に北上し山川温泉 山林閣へ向かう。共同浴場があるのにそこへは行かない。
一般的には共同浴場の方が良いのが普通だが、ここ山川温泉においてはちょっと違っている。
某Web Masterによると共同浴場は熱くて入れない源泉浴槽にのみ湯の花が大量に存在するが、
山林閣は内湯、露天とも湯の花が豊富であるとのことだ。湯の花フェチとしては迷わずここを選んだ。
53℃で少々熱いが、湯をかきまわすとたちまちクリーム色の溶き卵状の湯の花があたり一面に広がる。
自分が椀物の具になった様な気分になったという表現がぴったりで、なかなか楽しめるお湯だ。
露天風呂が売りで時間帯によって三種類の露天が男湯、女湯、混浴と変わる。
この時は丸太風呂と50t以上と推定される巨岩を配した巨岩風呂が男湯、
滝と清流の眺めが楽しめる大小ふたつの浴槽のある滝の湯が女湯だった。
男女別の内湯の窓を開け放てば、川が見え露天と変わらない景色が楽しめる。
はるか上の方を仰ぎ見ると先程のファームロードが見える。滝の湯に入っていたら丸見えだろう。
内湯の方が狭い為か湯の花の濃度は濃く感じられ、次回は泊まりで堪能したいお湯である。
ここは山奥にもかかわらず北海道直送のかにづくし料理で知られる。廊下にも蟹の甲羅が並んでいる。
建物の主材に松が使われ、純和風な作りは周りの自然に溶けこんでおり隠れ里の様相である。
廃線探訪ですっかり遅くなってしまったが、携帯を持っていないので宿に連絡が出来ない。
本日の宿は川底温泉 蛍川荘へと細く曲がりくねった387号線を北へ急ぐ。
ようやく宿に辿り着くが、仲居のおばあさんが出てきて宿の方の出迎えがないのが少々寂しい。
それもそのはずこの日の宿泊客は我々だけで、心配だった混浴の大浴場にも二人きりで貸し切りできた。
この温泉は歴史が深く、菅原道真が大宰府に左遷された時、刺客を逃れて身を隠した時に発見された。
その名の通り町田川沿いの川の底から湧き出しており、浴槽の底には大きな石がごろごろしている。
石をどけると砂であり、川沿いの源泉の真上に浴舎が建てられており、法師温泉と同様である。
大浴場は三つの浴槽があり、上流から下流へと温度が高、中、低と異なり、高温はうちみ・ねんざ・婦人病、
中温はリューマチ・神経痛、低温は切り傷・美白作用と効能が異なる。
一番入り易いのは中温だが、あえて高温と低温に交互に入り温冷浴法も楽しめる点も見逃せない。
夕食は味付けと食器のセンスの良さが光った。さすが三笠宮殿下がお泊まりになられた由緒ある宿である。
火の国温泉巡り2へ