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火の国温泉巡り2
2001.03/10〜03/17

まぶりん麻呂、ちえりん
3/13
 朝食後に庭園露天風呂へ入る。日本庭園に溶けこんだ素晴らしい庭園だがほとんど入る人がいないのだろう。 石には藻がびっしりと繁殖し、腰を下ろすと藻に含まれていた酸素?が泡となって放出される。 あまり気持のいいものではないので早めに切り上げて、混浴の大浴場へ向かう。 丁度格子から朝日が斜光線となって浴槽にさんさんと降り注いでいる。 あまりに美しいのでデジカメを脱衣場から慌てて持ってきて、シャッターを何度も切る。 あっと言う間に朝日はもう当たらなくなり、この時の印象は非常に強く心に刻まれた。 お湯良し、料理良し、これで1万円は掘りだし物だ。久々に万人におすすめできる鄙びた温泉旅館だ。 この間は豊肥本線と熊本電鉄の取材なので鉄道旅行記に掲載。

 菊地渓谷を一目見ようと菊地阿蘇スカイライン経由で東に車を走らせ、菊地渓谷の駐車場で地図を見ると 川に下りるまで相当な距離があり、物見遊山で行ける所ではなさそうだ。これからでは時間的に到底無理だ。 機会があれば時間をたっぷりとって渓谷沿いのハイキングを楽しみたい所だ。 大観望の西側に位置する展望台からは阿蘇やくじゅうの山並みが午前中よりはっきり見え、 360度の大パノラマはさすが世界一のカルデラ地形ならではの迫力を感じた。 車を北に走らせ、南小国町から北西方向にある杖立温泉へ向かう。

 水量豊かな杖立川の両岸の至る所から温泉の煙があがり、予想以上に規模の大きな温泉街である。 チェックインを済ませ温泉街に繰り出す。お目当ての蒸し湯を発見し、さつま芋を入れて蒸かしておく。 温泉街のはずれの川沿いの無料露天風呂元湯は、源泉98℃の熱い湯で一切加水していない。 不思議と適温で豪快な川の流れを眺めながら野趣溢れる湯浴みが楽しめるが、対岸からは丸見えであり、 脱衣所もオープンなスペースなので女性は入るのには勇気が必要かもしれない。 日が暮れてきたので裸電球を点けると、さらに秘湯ムードが高まって来る。 二つある裸電球の内のひとつはかなり高い位置にあり、点けようとしてバランスを失い転んでしまった。 したたか脛を岩にぶつけちょと腫れてしまったが、これも教訓だ。下駄履きの時は足場に注意せねば。 30分経ったのでそろそろお芋も出来ているかなと思い蒸し湯に戻ると蒸気がほとんどでていない。 蒸気のバルブらしいものをいくらひねってもちっとも出てこない。どうしようもう食事の時間だ。

 あきらめて本日の宿米屋別荘へ戻ると宿の内湯に入ってきた妻が宿にも蒸し湯があると教えてくれた。 喜び勇んで釜に先程のさつま芋をいれておくが、バルブを捻るのを忘れてしまった。 後で料理を運んできてくれる仲居さんにバルブのありかを尋ね、蒸気を出せば30分で出来あがった。 夕食は本館の食事処で個室であった。鶯色の襖紙がなんとも高級感を醸し出しさながら料亭の気分だ。 夕食はお品書きがついており、ひな祭りの宴とある。そう言えば玄関にはまだ雛壇が飾ってあったが、 俗に行き遅れるという言い伝えは地方によっては全く異なるのだろうか? 非常に手の込んだ料理が配膳用エレベーターを駆使して、実にタイミング良く運ばれてきた。

 夕食後に蒸かしたてのお芋をいただく。かなり細身だがなかなかおいしく出来あがっていた。 鉄輪温泉の湯治宿にも自炊の設備に蒸し料理用の釜があり、なんでも御飯まで炊けてしまうそうだ。 蒸すという料理法は極めて原始的でなおかつ手がかからなくて燃料費もただであり、いいことずくめだ。 ちなみにここ杖立は源泉が98℃な為、部屋に配るポットのお湯も温泉を使用しているらしい。 米屋別荘はもともとビジネスの宿として始まったが、貸し切り露天風呂を5つも作り、男女別内湯、 混浴露天、女性専用露天、蒸し風呂など様々な温泉が楽しめるのをで人気が高いらしい。 フロントで鍵を借り、打たせ湯と泡風呂のあるタイプの貸し切り露天風呂へ向かう。 予想以上に広く、手前に泡風呂、奥に打たせ湯付きの露天の豪華版である。 いかにも女性が好みそうな作りで、なかなか良く出来て綺麗に纏まっている印象だ。 が、しかし源泉98℃の湯はかなり熱く、かなり加水しないととても入れないのが残念だ。

3/14
 翌朝混浴露天風呂長寿霊泉に入る、丁度同宿の年配グループが入りに来て悲鳴を上げている。 見た目は気持ち良さそうな露天だが、入ってみるととてつもなく熱い。 もっと広い露天にして体感温度を下げるか、加水せずに自然に温度を下げる方法を検討してもらいたい。 蒸し風呂は真下から高温の蒸気が盛んに出てきて、1分位が関の山で熱さに耐え切れず飛び出してしまう。

 かねてから場所を確認しておいた奴留湯温泉 共同浴場へ向かう。 見た目はきれいな公衆トイレといった風情でとても温泉には見えないので見落としがちである。 明日の午前中は月に二度の清掃とかで危ない所だった。 ここは38℃の硫黄泉で一般的には硫黄泉は熱いが、これだけ温い硫黄泉というのも大変珍しい。 硫黄泉好きで温い湯が好きという大変矛盾した好みのまぶりん麻呂にはぴったりの温泉だ。 ここは昔殿様が北里を訪れた時に同行した奴さんが、この温い温泉で旅の疲れを癒したことから 「奴を留める湯」ということで奴留湯温泉と名付けられたということである。 湯量はかなり豊富と見え大きな浴槽の縁からは絶えず大量の湯が流出している。 浴槽の底には川底温泉と同様大きな石がごろごろしているが、共同浴場には珍しいと思う。 糸くず状の白い湯の花が浮かび、湯は確かに硫黄のにおいがする。 ここは知る人ぞ知る穴場だが根強いファンが多く、浴後の評価が高いのも入ってみて納得した。 九州の200円で入れる共同浴場としては文句なくトップクラスであることは間違いない。 奴さんよろしく長湯していたい所だが、行程に支障が出るので40分ほどで切り上げた。

 次は貸し切り湯で有名なはげの湯温泉 くぬぎ湯へ向かう。 ここでは蒸し湯があり、杖立と同様卵やいもなどの料理が出来る。 温泉利用者は無料で利用できるが、それ以外は300円の利用料が必要である。 もっともここまで来て温泉に入らないなんて人はまずいないだろうが… ここは露天と内湯があり、前者は1200円/50分で湯の花が多いそうである。 後者は800円/50分で湯の花はほとんどないとのことだが、泉質にこだわらなければこちらで十分だ。 風が強く露天風呂の増設工事?をやっていて騒がしいので、内湯を選ぶ。 コインタイマー式に小銭を入れるとお湯が勢い良く出てくる。5分ほどで浴槽にはお湯が満ち、 その後は出てくる湯量が少なくなり、30分経つとお湯の出が止まる仕組みである。 24時間営業で人件費もかからず、いつでも入れたてのお湯が楽しめる良く出来たシステムだ。

 湯を入れ始めると同時に残りのさつま芋を蒸し湯に入れておく。 昨日の轍を踏まないようにバルブを開くと、ものすごい勢いで蒸気が噴出したので注意が必要だ。 内湯ではあるが窓を開ければ湧蓋山麓の眺めが楽しめるので、景色的には露天と大して変わらない。 30分経ってお湯が止まったので、芋を引き取りにいくとほかほかに蒸し上がっている。 丁度昼食時だったので、車に戻り持参の携帯食料と共に昼食とする。 湧蓋山の向こうには本日の宿がある湯坪温泉がある為、本日の走行距離は極めて短い。 温泉の管理棟の脇に天然の涌き水が出ていたのでペットボトルに詰め、山を降りる。

 曲がりくねった387号線を北に向かい、川底温泉を通り過ぎる。 この先の宝泉寺温泉の入り口付近には、かつて旧国鉄宮原線の宝泉寺駅があった。 駅があったと思われる場所は駐車場となり、公民館の様な建物が建っていた。 腕木式信号機やポイント切替機、点検用のトロッコが展示してあり、僅かに往時が偲ばれる。 宝泉寺温泉と言えば石櫃風呂が有名である。ここは宝泉寺観光ホテルが管理しており、 となりにはホテル所有の風呂がある模様で、女性の楽しそうな笑い声が聞こえる。 石櫃風呂へ入ろうとすると先客のおじいさんが「熱くてとても入れないよ!」と言うのもかまわず 入ろうとしたが、腰までつかったところで熱過ぎて思わず飛び出した。 熱過ぎるので石櫃に入ろうとする人はほとんどいないらしく、蜘蛛の巣が張っていた。 水で相当うめないと入れないが、蛇口もホースもないので、石櫃は飾りの様なものだ。

 東へ向かう道すがらの串野温泉に共同浴場があると情報を得ていた為、車窓から探したが、 見つからなかったのであきらめて先を急ぐ。 走行距離が短い為に行程にゆとりができたので、震動の滝を訪れてみる。 駐車場から10分くらい歩くと左右に2つの滝が現れ、右の方が震動の滝だ。 どちらもダイナミックで素晴らしい滝だが、展望台から距離が離れているので少々迫力に欠ける。 震動の滝付近には温泉が湧き、年間でも限られた日にしか近づけない?と聞いたことがある。 文豪川端康成が長期滞在した小野屋の下に隠れる様にして、筌の口共同温泉はあった。 黄褐色の熱めの湯で、薬湯の様な独特の臭いがして、いかにも効能のありそうな泉質だ。 浴室は天井が高く明り取りがある為、大変明るい雰囲気の共同浴場である。 浴室の床には黄褐色した温泉の成分が層を成しており、成分の濃さが想像できる。 飲泉すると硫黄臭と鉄分を感じた。貸し切り状態で楽しんでいたが、杖を突いた足が不自由な おじいさんが浴槽の所までゆっくり歩いて来るのに驚いて場所を譲る。 浴槽の縁には手摺があり、そこから大変苦労してつかり、本人はご満悦の表情だ。 浴後に小野屋商店の店先にラムネにちなんだ俳句が掲げてあり、風情を感じたので涌き水を飲み、 ラムネを求め飲んでいると、丁度路線バスが通りかかり皆こちらを見ており少々恥ずかしかった。

 本日の宿湯坪温泉のゆつぼ亭の位置を確認しつつ、旧道経由で筋湯温泉へ向かう。 温泉街のはずれの駐車場に車を置き、早速共同湯の探索を開始する。お目当ては薬師湯だ。 ガイドブックで紹介されていた様子と一変して、外壁、内装とも黒い板にリニューアルされていた。 以前は脱衣スペースと浴槽が同じ高さだったが、以前下足箱があった高い位置に変更されていた。 清掃も行き届いており、62℃の高源泉は裏手の湯畑で冷まされ、丁度良い湯加減になっている。 細い路地でかくれんぼをしている少年が覗き込んできただけで、貸し切り状態だ。 安易にコンクリートの床にせず、昔ながらの木の温もりを生かした作りが嬉しい。 こじんまりとした共同湯としては草津の凪の湯に似た、情緒豊かな温泉で気に入った。 薬師湯の奥には温泉祭が行われる薬師堂があり、細い路地がいい味を出している。 旅館に併設の混浴露天の岩ん湯、筋湯温泉の源泉であるせんしゃく湯は撮影するだけにとどめた。 筋湯と言うとうたせ大浴場が有名だが、個人的にはうたせ湯に惹かれるものがないのでパスした。

 湯坪温泉方面へ戻り河原湯を見学しようとするが、駐車スペースが近くにない為苦労する。 脱衣所、風呂場ともお世辞にも綺麗とは言えず湯は温めの様であり、撮影するにとどめる。 実はその奥にある田の中の湯を非常に楽しみにしていた。 ここは何人かの温泉通の方の評価が高く、非常に期待していたのだが、行ってみたら… かつてあったと思われる天井が壊れた為、半露天状で浴槽がぽつんとあるだけの素朴な湯のはずだが… なんと浴槽にお湯が入っておらず、気を取り直して裏へ回ると湯は確かに湧いている。 単に引き湯されていないだけなのか?それとも廃湯なのかちょっと判断しかねる状況である。 本日の宿ゆつぼ亭は1500坪の敷地に、5棟の建物が点在する和風旅館だ。 白壁に黒い瓦屋根の民芸風の造りで、館内も太い柱や梁、高い天井が落ち着いた雰囲気である。 自家源泉を持ち気泡岩風呂、御影石風呂、檜風呂は中から鍵が掛けられ貸し切りにできる。 他にうたせ露天ともうひとつ露天があり、どれにしようか悩んでしまい贅沢な悩みだ。 単純硫黄泉とのことだが、無色透明で硫黄臭はほとんど感じられなかった。 夕食はヨーロッパのアンティーク家具が入った洋風食堂でいただく。 グラタンが出てきたので、毎晩麦焼酎のお湯割りにしていたが、洋食が予想されたので白ワインにする。 豊後牛の陶板焼きや自家生産ヤマメの塩焼きなどの新鮮な食材が次々と食卓に並ぶ。 これで1泊2食1万円からとは信じられないくらい大変お値打ちな宿である。

行程表中太字で記載の温泉は実際に入浴した所。細字の温泉は外観の見学のみ。
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