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昨夜来の雨も上がり、出発する頃には晴れてきた。今回の旅は天候に恵まれている。
宿に程近い甲斐建築という建設業者が管理するなるほど温泉を撮影してから出発する。
こじんまりとしたかわいらしい風情の湯で、札を掛けて貸し切りにすることが出来るのが良い。
やまなみハイウェイ経由で快適なドライブを楽しみながら野矢温泉へ向かう。
道すがらには所々から温泉の蒸気が上がっており、こんな所に温泉があるのか?という疑問は
吹っ切れ、とある民家の前にそれらしき建物を発見する。
しかし、事前の現地の地理を把握していなければ絶対に辿り着く事はできないだろう。
この温泉はとある掲示板で知り合いになった九州在住の方から直々に教えていただいた。
偶然ではあるが、その方とここの温泉の所有者の名前が一緒であって親近感を感じた。
様々な個性的な温泉や食事処、大分・熊本の温泉に関するHPなどの情報を提供していただき、
それを元に温泉巡りの計画を立てました。遅れ馳せながらこの場を借りてお礼を申し上げます。
ここは個人の経営するジモ専であるが、200円を家の方に払ってから入る。
小さめの浴槽が男女別にあるだけのシンプルな造りだ。コンクリートの壁も床もいい感じに古びている。
早速入ろうとするが、激熱の湯である。草津の大滝乃湯にある時間湯の熱い湯にも匹敵するだろうか?
草津直伝の湯もみを洗面器でしばらく行い、やっと肩まで入れるようになる。
熱くて耐えられなくなってきたのでホースで水を入れ、ぎりぎり入れるくらいの温度まで下げる。
こういうシンプルなお湯は人によって評価が大変分かれると思うが、ひっそりとした感じが大変気に入った。
浴後にアクエリアスで水分を補給していると、近くを通る久大本線に特急ゆふがゆっくりと通過していく。
鉄道と温泉の融合をひたすら目指しているまぶりん麻呂としては、夢のような光景だった。
なお温泉の裏手には川が流れ、釣り人が糸を垂れていた。やまめでも釣れるのだろうか?
由布院温泉に明治時代以来の共同浴場があるので、丁度道すがらなので立ち寄ることにした。
由布院というと下ん湯が有名であるが、最近は有名になりすぎて観光地化しすぎの感は否めない。
いくつかの共同浴場があるそうなので、知られざる本来の由布院の静かな温泉を楽しんでみたいものだ。
ところが由布院の入り口付近で大渋滞に巻き込まれて30分くらいタイムロスしてしまった。
渋滞をやっとくぐり抜け、夢想園の近くに車を停める。
ここは貸し切り露天や由布岳の眺めが素晴らしい大露天風呂が売り物であるが、
以前泊まったことがあり、最近になって循環という噂もあるので今回はパスする。
高台にある為、客室からの眺めが素晴らしく久大本線の列車が眺められるので気に入っている。
売店ではバーナード・リーチが絶賛した貴重な小鹿田焼きの皿を売っており、今も愛用している。
また、自家製のプリンは隠れた逸品であり、後述する明礬温泉の地獄蒸しプリンといい勝負だと思う。
加勢の湯は番地的には西石松公民館の近くなので、その付近を探すとあっさりと見つかった。
外観はどう見ても物置にしか見えないので、車から降りて探さなければ絶対に見つからない。
外の看板には石松の湯としか書いてないが、間違いなくここである。
物置の入り口(本当にそう見える)を開けると、懐かしい田舎の物置にタイムスリップした様だ。
これくらいインパクトのある造りは、かえって稀少価値があるが、決して万人向けとは言えない。
通行量の割とある道に面していて車の音が少々耳障りなのが少々残念ではあるが、
この雰囲気は渋さを通り越して、入るものを圧倒する強烈な存在感を感じさせた。
大きい浴槽は真ん中に一応仕切りの板があり男湯と女湯を分けているが、浴槽内はつながっている。
入浴時間が朝と夕方だけ?なので、そのせいかお湯が供給されていなく、非常に温い。
男湯の隅にコンプレッサーを発見してスイッチを入れると、しばらくして熱い湯が供給される。
物置の中の湯浴みは奇妙な感覚だが、慣れてくると不思議と気分が落ち着いてきた。
湯巡りをしていると思われる若い二人連れの男性が入ってくるが、腕の刺青を見て恐くなって、
浴槽の端でじっとしてしまい、声をかける精神的なゆとりもなかった。
幸運なことに湯が温かったせいか、彼らはお気に召さなかった様で5分くらいで引き上げた。
25分くらいしてやっと湯量も増え適温になるが、車に妻を待たせているので、あまり待たせるのも
悪いのでもう少し入っていたかったが30分で切り上げる。
再びやまなみハイウェイに乗り、由布岳の雄大な眺めを堪能しながら、快適なドライブを楽しむ。
大分自動車道の脇道を行き、乗馬クラブを過ぎた辺りで伽藍岳(硫黄山)方面のダートを1km程行く。
はるか上の山腹からは大量の蒸気が噴出しており、強烈な硫黄の臭いが漂っている。
塚原温泉 火口乃湯は、900年前源為朝が巻刈りの際に発見したと伝えられ、皮膚病に特に効く
ことで大変有名な温泉である。受付で名物の15時間蒸して作られる温泉玉子を早速いただく。
玉子の殻のみならず中身まで茶色くなっており、およそ玉子とは思えない濃厚な味がして、これから
入るお湯の良さが予想された。なお、温泉玉子は売り切れになるので早めに行くことをお薦めします。
入湯料400円(4月からは500円)を支払い浴室棟へ向かう。
男女別の浴室は広めで、薄い黄色味を帯びたお湯で、湯治色を色濃く残すひっそりとした温泉だ。
お湯のph値はなんと1.4で、これ以上酸性の強いのは玉川温泉しかないそうである。
湯口のお湯を飲泉すると、良く言えば柑橘系の酸っぱい味、悪く言えば胃液のような味がした。
ここは純粋に温泉を愛する人か、湯治目的で訪れる人しかおらず、気持の良い湯浴みができる。
この旅の時点ではデフレという言葉は巷に溢れていなかったが、入湯料の値上げは後述する別府温泉
でも行われる模様で致し方ないと思うが、やはり安いに越したことはない。
脱衣所には温泉MLの2000年度と1999年度の温泉番付が掲示してあり、興味深い温泉がかなりあった。
今回の湯巡りで入った温泉がかなり含まれていたので、一人悦に入って撮影しておく。
改めてこの地域に多種多様な良質の温泉が存在するか認識させられた。
別府湾を眺めながら明礬を抜け、鉄輪温泉の無料駐車場に車を置き、頭と体を洗いに熱の湯に入る。
文字通り熱いということで有名だが、浴槽が大きく奥には水が全開で出ていたのでさほどではなかった。
ここは特に洗い場が広いので体を洗うのには適しており、実際ほとんどの人が体を洗っていた。
わずかに白濁し、独特の臭いは鉄輪特有のものと思われるが生理的には少々受けつけない。
丁度夕方の時間帯で人の出入りが激しいが、広いのでさして気にはならない。
熱の湯の奥には昔の熱の湯跡があり、レンガ造りの構造物の中に浴槽らしいものが認められた。
ヤングセンターの裏手の川沿いにある民営の温泉へ向かう。
ここは別府温泉道八十八湯に入っていないが、温泉ファンの間では密かに愛好者が多い素晴らしい温泉だ。
一応事前に場所を確認しており、また幸いにも道しるべが所々あったが、非常に見つけにくかった。
道すがらの商店街は時間が止まったようなたたずまいで、映画のロケなんかに使えそうな感じだ。
川沿いを降り、蒸気が盛んに出ている所へ向かうといきなり谷の湯が現れた。
レトロな造りでかなりの歴史を感じさせられ、一見して素晴らしい温泉であることが分かる。
あくまでも私見だが、このように古い造りの温泉は外見から中の様子は大体予想できる。
入湯料70円(安い!)を支払い中へ入ると、一人先客がいただけでのんびりとした雰囲気だった。
鉄輪、明礬に共通しているが、温泉の入り口や浴室には必ずと言っていいほど仏様が迎えてくれる。
古くからの信仰と温泉が結びついている温泉の雰囲気は個人的に大変気に入っている。
透明なそれほど熱くない湯で、浴槽は小ぶりだが昔ながらの木の造りがいい味を出している。
鉄輪の昔からの情緒を色濃く残しているであろう名湯であり、絶対に外せないと思う。
ただし大変見つけにくい所にあるので、見つかればの話ではあるが…
締めくくりは渋の湯である。ジモ専の元湯の前にあり外観、内装ともにリニューアルされており、
近代的な温泉だ。ここは熱の湯同様公営であり、無料であるのがうれしい。
夕方の入浴ラッシュで、ただでさえ小ぶりな浴室は人であふれており、入るのをためらうほどだ。
それでも人を掻き分けて入ると、ここは蛇口全開で加水しているにもかかわらずかなり熱い。
ロケーションがいいのと知名度が高い為、混み合うのは致し方ない所だろう。
元湯の裏には、蒸し湯がある。以前入ったことがあるので非常に懐かしく感じた。
下着を着用して巨大な蒸し風呂に入るのだが、混浴なので下着姿の女性にはどぎまぎした覚えがある。
本日の宿泊地明礬温泉に到着し、何はともあれ名物の岡本屋のプリンを食べに行く。
売っているのは旅館ではなく、湯の花小屋の立ち並ぶバス通り沿いの売店であった。
湯の花小屋は岡本屋の所有物であり、この辺一帯ではやはり格の違いを見せつけられた。
湯の花小屋から立ち昇る硫黄の煙を見ながら食べる地獄蒸しプリンは味わい深いものがあった。
食後に一旦宿にチェックインし、鶴寿泉へ向かう。
ここは地元の方の気軽な共同浴場といった風情で、入り口の仏様に挨拶して入らせていただく。
入浴料を入れる箱はなかったが、お賽銭を置いて入るのが観光客としてのマナーであろう。
ここは後ほど入りに行った地蔵泉に比べて硫黄の成分が薄いと言うことだが、
知名度が低いせいかその分空いていて、ゆっくりとした湯浴みが楽しめる。
木造の四角い浴槽があるだけのシンプルな造りで、浴室は割と広めであった。
白濁した硫黄泉で嬉しかったが、かなり熱いので我慢して入るが10分位が限界であった。
次は湯の花小屋の上にある地蔵泉へ向かう。
ここは白濁したかなり濃厚な硫黄泉であり、地元の人はここを硫黄泉と呼んでいる。
地元のみならず県外からの来訪者が絶えず、いつでも混雑していることで大変有名である。
もともとの創業は大正8年だが、現在の建物は平成5年に復元されており建物は意外に新しかったが、
浴室に関しては昔の文献に基づいて忠実に再現されているそうである。
脱衣スペースから階段を降りて、浴室入る構造は翌日入ることになる別府温泉でもおなじみである。
この時もご多分に漏れず大変混み合っており、芋の子を洗う状態にもかかわらず、お湯はかなり熱い。
浴室の壁は木だが、下の部分が石造りになっており、既に温泉の成分がこびりついていい味を出している。
ほとんどが地元の年配の常連客らしく世間話に花が咲いていて、話に入りこむ隙は全くない。
人それぞれだろうが、余所者はちと肩身が狭い思いをするのではないだろうか?
本日の宿である山田屋の内湯は、別府保健所の温泉認定第1号ということで効能には定評がある。
入口の仏様にお線香をあげたのだが、窓を開けなかった為、浴室まで線香の匂いが充満してしまった。
硫黄泉で有名な明礬であるが、ここの湯は唯一緑礬泉であり、大変貴重な存在である。
特に皮膚病に良くことは塚原温泉と同様であり、なめると同じような酸っぱい味がした。
浴室は大変狭く、本当に湯治目的の宿であることが分かる。入浴客が多いときは宿泊客優先であるので
立ち寄り入浴は断られることもあるそうなので、宿泊して何度も入るのが良いだろう。
ここは150年前から湧く歴史のある温泉だが、年々湧出量が減っているとかで先行きが心配である。
山田屋は全館禁煙、食事時にアルコールを一切出さないという方針の湯治専門の宿である。
その代わりアルコールの持ちこみは容認しており、バス停近くの商店でビールを買ってくる。
夕食は体に良さそうなものばかり並び、量は多すぎずカロリー計算もしっかりなされていると思う。
夕食後に鶴寿泉へ行くと、おじさんが「熱かったらホースで水を入れてもいいよ」と言ってくれたので
そうさせていただく。入浴時間が20時までで、最後の入浴客なのでそう言ってくれたのだろう。
もっとも常連客は熱い湯を好むので、あまり加水することはしていないそうだが。
ここの入浴客はみな親切な方ばかりで、面白い事に地蔵泉とは全く客層が異なる。
二つの共同浴場は、泉質で選べば地蔵泉、雰囲気で選べば鶴寿泉といった所であろう。
再び宿の内湯に入り、浴後に空を眺めると別府市内にもかかわらず満天に星が広がっていた。
あまりに素晴らしいので、しばらく星空を鑑賞してから部屋へ戻った。
行程表中太字で記載の温泉は実際に入浴した所。細字の温泉は外観の見学のみ。
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