12月8日に訪れたさぼうるですっかり神保町レトロカフェの虜になってしまった。3日ぶりに訪れた神保町は、師走の寒さが身にしみて感じらる季節になって来た。今日は鉄道ファンの聖地と言うべき書泉グランデに初めて足を踏み入れる記念すべき日だ。その前に取材予定前の腹ごしらえにと考えていた老舗の洋食屋南海キッチンを覗くと、満員御礼だった。ここは後日改めて訪れることにしよう。最近はインターネットではやっていそうな店を探すのが特技みたいになっているようだ。さぼうるを横目に見ながら、ラドリオ、ミロンガ・ヌォーバ、そして今日これから訪れる予定の神田伯剌西爾の外観の撮影をしておく。書泉グランデの6階で全国の駅弁を紹介している文庫本を買い、駿河台下交差点近くのエチオピアという有名なカレー店へ行く。やはり寒い季節には新陳代謝を高め、体の底から暖めてくれる本格的なカレーが食べたくなる。

　自家焙煎の豆を使うカフェでブレンドが3種類もあるということで、驚きのラインナップである。階段を降り、古めかしいガラス戸を開けるとタバコの煙が文字通りモクモク立ち込めていた。嫌煙家である私は思わず入るのをためらってしまうほどであった。入って右手の小部屋は禁煙のようなのでそちらへ退避する。やはりカフェで全面禁煙というのは難しいのだろうか？特に出版業界の多いこの地域では。入って左手には囲炉裏が置いてあり、和風カフェとしてもかなり珍しいとされた店内で憩うつもりだったが、いかんせんたち込めるタバコの煙に恐れをなしてしまった。唯一評価を下げたのはタバコの煙と換気の行き届かない店内だった。

　ここに来たからには店の看板メニューである、苦味の効いた神田ブレンドと冬季限定と思われるコニャックショコラをセット750円を注文する。ブレンドコーヒー500円、ケーキ400円なのでかなり値頃感を感じる。小部屋には大学生らしき男性グループが3人いて、学生の街だなあと思いつつ、君たちはタバコを吸わないのか？偉いなあなどと心の中で思いながら、店内をデジカメで撮影する。こういう店員の目の行き届かない小部屋は撮影にもってこいだ。ここぞとばかりコーヒー豆用ハカリ、花瓶、メニューに至るまでくまなく撮影を敢行する。

　神田ブレンドを一口飲んで、全身に衝撃が走った。コクテル堂のオールドビーンズを使った相模大野のＴＲＯＩＳ　ＡＮＧＥＳ、深煎りブラジルが印象深い京都の六曜社地下店、70年の歴史を感じさせる絶品のスペシャルブレンドコーヒーしか置いていない京都のスマート珈琲店のいずれにも引けをとらないコクと苦味の効いた美味しいコーヒーを久々に味わったという、満足感が得られた。

　気が付いてみたら、最近のカフェ巡りでストレートなコーヒーをいただいたのは久しぶりのことだ。やはり自家焙煎の豆はいい。コニャックショコラは、最高級のチョコレートを使用したガナッシュクリームと本格バニラをきかせたクリームのハーモニーが素晴らしい逸品で、色々他にもスウィーツがあるがまずは６種類もある中から選ぶケーキからチョイスするケーキセットがおすすめ。ケーキ自体はあまり甘くないが、ホロ苦い神田ブレンドと極上ケーキを一緒に食べると誰しも思わずうなってしまうのではないか？和風の店内にジャズのＢＧＭが流れるというのはミスマッチと思っていたが、実際に体験すると不思議と違和感がなく落ち着けた。精算を済ませて帰り際に月末まで有効な100円の割引券をくれるので、行きたい気分にさせられてしまう。これはかなり破格の待遇だ。なにせ極上の深炒りコーヒーと絶品のケーキセットが650円でいただけるのだから！久々に見つけた自家焙煎珈琲店のヒットで、年末にもう一度豆を買いに行きがてら訪れてみたいと思う。