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火の国温泉巡り4
2001.03/10〜03/17

まぶりん麻呂、ちえりん
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3/16
 朝食後に浴衣がけで歩くのには少々寒がっていたが、妻を地蔵泉に連れて坂を上がって行く。 この時も昨日の夕方に入っていた常連客がたくさん入っていて、観光客にはやはり入りづらい温泉ではある。 年度末の為か坂道の工事が行われており、常連客は工事の話でひとしきり盛りあがっており、余所者が付入る隙はなさそうだ。 これだけの良質な温泉なので、次回は何度かトライして空いている時に入ってみたいものだ。 坂を下り宿の内湯に入ると、後から宿泊客が一人入って来た。ここは浴槽、浴室とも大変狭いので2人入ればいっぱいになって しまうので、入浴なさりたい向きにはぜひ山田屋に宿泊して、上の地蔵泉、下の鶴寿泉とのはしごをおすすめする。

 山田屋を後に堀田温泉 夢幻の里へ向かう。ここは地元の人の人達の「好きな温泉のベスト3」に必ずランクインすると 言われるくらい有名であるが、少々分かりにくい場所にある。探すこと30分あまり、何度となくそれらしい場所を探して細いダート の道の奥にようやく発見する。大分自動車道の近くの朝見川沿いに造られた男女別の露天風呂と四つの家族風呂である。 休憩処のある管理棟で600円×人数分を支払い、貸し切りにできるので料金的にも割安感を感じた。 湯の色はブルー、グリーン、透明など日によって変わるらしいが、この日は透明であった。深い木々に囲まれた露天風呂は別府市内 にありながら深山幽谷の趣であり、川のせせらぎと鳥のさえずり以外は聞こえない。別府八湯の中でも屈指の露天風呂である。 湯が出てくる所は一旦堰き止められており、覗き込むと湯の花がいっぱい溜まっているではないか。湯の花大好きなので、 溜まっていた湯の花を全部浴槽に入れるとたちまち雰囲気が変わった。これ位自分の好みにかなった露天風呂には滅多に出会えない。 また、夏には蛍が見られる程水が綺麗な為環境には大変気を使っており、無公害石鹸やシャンプーの販売には感心させられた。

 次は亀川駅近くにある浜田温泉へ向かう。明治44年築の重厚な木造建築で、次世代にぜひ残してもらいたい素晴らしい外観だ。 駐車場に車を停め、いざ入りに行くと月に一度の定休日にあたり、残念ながら入れなかった。 ここはが亀川駅から近いので、列車の旅の途中でぶらりと立ち寄るのも良いだろう。 正午ぴったりに別府駅でレンタカーを返却し、本日の宿野上本館へ向かい荷物を預かってもらう。 竹瓦温泉の目の前にあるカフェTAKEYAで軽い昼食をとる。 ここはコーヒーの美味しい店だがビールもおいてあり、浴後の休憩にぴったりのお店である。

 別府温泉の湯巡りを始めるとしよう。 湯巡りにあたって宿のフロントでいただいた「別府温泉ぶらりいで湯散歩 WALKING MAP」が大変役に立った。 温泉のみならずグルメ情報も満載で、お店の営業時間や定休日、コメントなど詳しく紹介されている。 TAKEYAの脇にある日本一古い木製アーケードを通り流川通りを山側に少し歩き、薬屋の脇を入る。 まず楠町二区公民館の1階にある寿温泉だ。さらに分かり易く言えばラブホテルの前だ。 別府温泉は総じて湯温が高いが、ここは43℃と別府温泉のなかでも一番湯温が低く、入りやすいので大変気に入った。 大正13年開湯以来そのままの建物で、当時の建物によく見られるグリーンの塗装が大正ロマンを感じさるレトロな温泉だ。 受付のおばちゃんはとても親切で、わざわざ浴室まで案内してくれ、「ゆっくりしていって下さいね。」という一言が嬉しかった。 脱衣所と浴室が一体化しているタイプで、入浴中は貴重品の心配があるので、個人的にはこのタイプの温泉は安心できる。 湯は鉄分を多く含んでいる様で、小ぶりな浴槽は茶色に染まっている。思いの外湯量は豊富で、浴槽の縁からは絶えず大量のお湯が 排水溝に向かって流れ出している。しかも加水せずに入れる温泉は、別府温泉では貴重な存在だ。 ここは雰囲気、浴感、体感湯量、湯温、清掃状況、受付の対応どれをとってもかなり自分好みの温泉で、今回の湯巡りの100円以下の共同 浴場部門ではトップクラスの評価を与えたい。浴後は汗がなかなか引かず、冷え性に効くので子宝の湯と呼ばれるゆえんだ。

 事前の調査ではこの近辺には多数の温泉が存在することが分かっており、次回以降の湯巡りの下調べも兼ねてどんな所か見ておく。 楠銀天街に近い楠温泉は実際に入浴した人のレポによると寿温泉と同様43℃ということだが、入浴時間は15時からであり、 ちょっと薄暗い印象だ。永石通りを海沿いの国道10号線の方へ歩くと、松原郵便局の近くには松原温泉があった。 ぱっと見はかなり年季の入った個人病院といった風情で、事前に情報を得ていなければまさか温泉だとは思えないくらいだ。 ここも入浴時間が15時からなのでパスする。永石通りを山側へ行くと紙屋温泉がある筈なのだが、それらしい建物は見当たらなかった。

 道路工事をしていたので直前まで気がつかなかったのだが、いきなり通りの左側に永石温泉が現れた。 神社に似た外観で、ここが温泉であるという事前の情報がなければ気がつかないで通り過ぎてしまうほどだ。 ここは地元の有志が温泉を掘ってその利用法を思案していたところ、一夜にして湯小屋が出来た為、古くは一夜温泉と呼ばれた。 別府温泉特有の構造と言えるのだが、上にある脱衣スペースから階段を降りて浴室へ向かう。 ここの階段もなかなか年季が入っており、浴室へのアプローチとしてはなかなか情緒があってよろしい。 お湯は使用位置51.1℃で熱い為、水を大量に入れてうめていた。少々温く感じられたので水を止めるとたちまち熱くなって来る。 二人のおじいさんが、太平洋戦争当時の自分達の悲惨な経験を語り合っていた。こうして贅沢に湯巡りができるのも、昔の人達の苦難が あったからこそであり、老人をもっといたわらなくてはという思いにさせられた。 通りの角にある為、車の往来が少々気になる上に、道路工事の音が少々煩わしかったが、なかなかいい温泉である。 永石温泉をさらに山側に歩いて行くと末広温泉が現れた。丁度出てきたおじさんが入り口に鍵をかけているではないか! そうここはジモ専であり、入浴は組合員のみという掲示がされている。近くの煙草屋で頼めば鍵を貸してくれるという情報もあったが、 そこまで無理してジモ専に入ることもないだろう。

 末広温泉から別府駅方向へしばらく歩くと、亀の井ホテルの斜めに古びた大病院といった風情の中央公民館が現れた。 ここの一階には不老泉があり、昭和天皇が皇太子時代に入浴したと伝えられる由緒ある温泉だ。 浴室には洗面器が置いておらず、受付で料金を支払う際に洗面器を無料で貸し出すシステムだった。 地元の方は自前の洗面器を持参しており、観光客にのみ貸し出しているということが後日判明した。 脱衣所、浴室、浴槽ともたっぷりスペースがとってあり、かなり大規模な温泉であるが、料金は他の共同浴場同様に安いのが嬉しい。 ここもご多分に漏れず熱い為、肩までつかっての長湯はできない。寝湯用のスペースだろうか幸い浴槽の奥の方に大変浅い部分があり、 あまりの熱さに耐えかねてそこでずっと寝そべっていた。最も駅から近い共同浴場で、人の出入りがかなり激しい。 「別府温泉ぶらりいで湯散歩 WALKING MAP」によると竹瓦温泉へ戻る道すがらに梅園温泉というのが見える。 車が入れない路地にある様でなかなか見つからない。パトロール中と思しき二人連れの警官に尋ねても芳しい答えは返ってこなかったが、 この辺りはかつて梅園町であったということが分かったので、温泉の名前の由来を知ることが出来た。 新宿歌舞伎町あたりの胡散臭い細い路地を彷彿とさせる一角にようやく見つけることが出来た。ここは個人経営らしく入湯料は100円で 安いのだが、今回は妻が一緒なのでちょっと狭くて薄暗いのが嫌だということで今回はパス。

 一旦宿に戻りチェックインを済ませ、竹瓦温泉へ向かう。道後温泉を彷彿とさせる壮麗な木造建築で風格を感じさせる。 建造は明治12年、現在の建物は昭和13年に改築された際に、以前は竹屋根葺きだったものを瓦葺に改修された為に竹瓦の名がついたという 説がある。ここも入浴料はびっくりする程安いのが嬉しい。(注4月から別府温泉の共同浴場は値上がりになっている。) 併設の砂湯は40分待ちで宿の貸し切り湯の時間が迫っていたので、次回の楽しみにとっておき、普通湯に入る。 壁には竹をあしらった模様があり、なかなかおしゃれである。湯は使用位置56.6℃の為特に熱く、水が全開になっている。 わずかに緑色に濁っており、別府温泉のなかでも一番特徴のある湯だと思われる。しばらく空いていたが、上がる頃にはたちまち混雑して きて特に観光客の入浴が多く感じられた。本日の宿野上本館に戻り、予約済みの貸し切り半露天風呂に入る。 予約の時間ぎりぎりに宿に戻って来た為、番頭さんに急かされたが、その律儀な態度にかえって好感が持てた。 予約の段階で時間を指定され、制限時間も決められているおり、番頭がしっかりコントロールしておりなかなか好感が持てる。 浴後はすぐに部屋食の夕食となる。別注の関あじの盛り合わせは新鮮な海の幸がいっぱいで、これで1泊1万円はかなり安い。 竹瓦温泉のそばであるし、宿の対応も良かったので次回別府に来た時もここに泊まろうと思う。

3/17
 昨夜来の雨が依然として今朝も降り続いている。朝食後チェックアウトまでの一時に一階の男湯に入る。 昔この辺りは波打ち際であって、今も地面を掘ると砂が出て来るそうだ。64℃の自家源泉で浜の湯と呼ばれ、毎分100Lの含食塩類重曹泉 で多くの旅人の疲れを癒した由緒あるお湯だ。なお男湯の浴室には湯温を下げる為に温泉の滝があり、湯温を下げる工夫がなされていた。 温泉の滝は大理石を壁にして上から熱い湯を流して冷ましているのだが、この大理石はなんとかつて別府大分間に走っていたちんちん電車 の敷石であった。常日頃鉄道と温泉の融合を目指しているので、思わず大理石を撫でてしまった。 ここは柔らかな感じのお湯で、42℃を目標に加水せずに湯温を下げる努力がされているのは大変評価できよう。 浴室は窓を取り払った半露天になっており換気扇が不用だが、冬場は寒くないのだろうかと心配してしまった。

 チェックアウト後、列車の時間待ちの間を利用して二湯入る。雨が止みそうもないので、最寄りのコンビニで1本500円(いわゆるビニール 傘ではない)の傘を2本購入する。東京で買ったら確実に1本千円する代物である。別府温泉の中で一番気に入った寿温泉へ向かう。 番台のおばちゃんは人なつっこくて、ここの印象がいいのはおばちゃんの人柄にもある。懇意にしてもらっている甲府の某温泉の番頭さん を思い出して、ここを別府の常宿ならぬ常泉としたいところだ。今回の温泉巡りでは、一日に十湯以上入った日もあったが、やはり数を こなさないと分からないことが多いことが分かってきた。3000湯とか4000湯入った人の気持が最近なんとなく分かるようになってきた。 今回の旅で自分なりに解釈した結果、値段が安ければ安いほどいい温泉である確率は高いという結論に達した。 一見乱暴な解釈ではあるが、一定の水準以下であれば掛け流しである確率が高い。ふるさと創生基金で雨後の筍の様に出来た最近の温泉 は残念ながら殆どが循環であり、料金もそれなりに高い。低料金の温泉は山奥の一軒宿にありそうだが、意外とそれもあてはまらない。 立ち寄り湯の場合は古くからの温泉で共同浴場を探せば、大抵の場合良質な温泉に巡り会える。特に昨年3月に訪れた草津温泉で共同浴場 の良さに目覚め、温泉に対する考え方や評価の基準が以前とは大きく変わった。女湯の方からは常連さんらしいおばさん達の元気な話声 が聞こえて来るが、男湯は今日も貸し切り状態である。湯気がこもって仕方がないので、窓を開けると春雨に濡れるしっとりとした街並み が旅情をかきたてる。ああ今日で温泉巡りも終わりなんだなあと名残惜しい気がした。ここは古びているが清掃が行き届いており、「また 来て下さいね」と声を掛けられ、別府に来た際は再訪しようと心に誓う。

 商店街を抜け、駅前高等温泉の並湯の方に入る。黙っていたら受付で「300円です」と言われたが、 「安いほうでいいです」と言った。それでも追い打ちをかけるように「熱い浴槽がひとつですけどいいですね」と念を押される。 何か感じ悪いなあと思いつつも、長居する暇もないので並湯で十分だと言い聞かせる。先客が水を大量に入れていた為、それほど熱くない。 駅から近いので鉄道ファンにとっては憧れの温泉であったが、入ってみるとそれほど特徴のある温泉ではなかった。 外観はレトロで大変貴重なものだと思うが、並湯だけでは経営は苦しいだろう。そういう事情は分からない ではないが、高等湯の方を案内されるのはちょっといただけない。やはり、ここは高等湯が売りなのだろうか? 次回は高等湯の方に入ってみよう。なおここは男性のみであるが素泊まり可能なので、貧乏旅行の心強い味方である。

行程表中太字で記載の温泉は実際に入浴した所。細字の温泉は外観の見学のみ。
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