このカフェは、efishで一躍カフェ業界の風雲児となった西堀晋氏のプロデュースによるものである。手狭なefishでは実現できなかった氏の理想のライフスタイルが形となっていると思われる。叡山電鉄の茶山駅近くに古くからあった写真専門のギャラリーprinz(プリンツ)が、ギャラリー、カフェ、ライブラリー、CDセレクトショップ、そして2階には大小2つの滞在型の宿泊施設を備えた複合施設としてリニューアルオープンした。旅館やホテルにカフェが併設されていることは多いが、西堀氏はカフェを中心として視覚や聴覚を様々な角度から刺激し、かつ快適な生活空間に仕上げている所に新し物好きな京都人の感性の鋭さを読み取ることが出来る。
コンクリートうちっぱなしの一見平凡な外見なので、人をデザイン化したキッチュな看板がなければ見落としてしまうくらいだ。カフェのある1階は半地下になっており、芝生の庭を見上げる形になっており、明るいイメージ。しかしそれ以上に目に付いたのが、奥にあるHAPPY HOUSEという空間だ。それは、丸テーブルと一対の椅子を中心として小さな棚が円形に取り囲んでいる。そして、小さな棚のひとつひとつには非常に小さな電球が灯されている。
インテリアの一部だろうと思って気に留めなかったのだが、覗き込んでみるとちゃんと椅子とテーブルがあるので驚いた。ここは外界からは微妙に隔絶されており、恋人が語らうのにはぴったりな場所だと言えよう。この小さな電球に囲まれた空間は、sinamoで体験した電気スタンドがずらっと並んでいる空間に似ている。sinamoの店内が片面が鏡であったのに対し、こちらは円形の小さな棚に立体的に囲まれているので非常に強いインパクトが感じられた。残念ながらこれをプロデュースしたのはハッピーハウスというプロジェクトであり、西堀氏は関与していない。
ワンプレートのランチはスープ、サラダ、コーヒーもついて1000円は懐にも嬉しい。ただし、このワンプレートランチは数量限定なので、開店後すぐ訪れることをおすすめする。食事を終えてしばし店内を探索する。ライブラリーは照明が落とされ落ち着いた雰囲気。洋書のデザイン関係のものが多く、こういう空間にいるだけで自然に感性を刺激されるような気がする。CDセレクトショップはバーカウンターの奥にあった。後で知ったことだが、展示されているCDは全て試聴することが出来るそうだ。さて2階の宿泊施設だが、清掃中なのか扉が開いていたので室内を撮影させてもらう。さらに屋上にはローズガーデンがあるというので登ってみたのだが、この階段が意図的なのか妙に不安定でちょっとおっかない。今度京都に来る時は薔薇の時期にprinzに泊まって、この非日常的な空間を体験し尽くしてみたいと思う。