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朝食時間の1時間ほど前に起床し、朝風呂の定番となりつつある凪の湯へ向かう。
凪の湯の左隣りにあった建物は撤去され、饅頭爆弾攻撃で悪名高き?長寿店の新店舗になっていた。
饅頭攻撃を避けて右側のグランカフェよしだやの側から行くので、特別問題はない。
いつも通り誰も入って来ないので、バルブを全開にして熱めの湯を堪能する。
最初に来た時はちょっと抵抗を感じたこの外湯は、江戸時代には花柳界の女性達にこよなく愛されたそうだ。
そうした昔の風情を楽しむには、やはり朝風呂が一番でしょう。
日当たりのことを考えると、煮川の湯にはかなわないが、それでも私は朝風呂はここと決めている。
という訳で、二番目は煮川の湯へ向かうことにする。さすがに外湯一熱いお湯は、身が引き締まり、目が覚める。
ここは熱いので長湯できないのだが、先客の一人が興味深い話をしていた。
「ここの湯はずーっと浸かっていると体がおかしくなる」ということだった。
具体的には足がどうのとか言っていたが、強酸性の草津の湯の中でもここ煮川の湯は特別に皮膚には強烈な刺激があると力説していた。
朝食後に部屋でゆっくりした後、散策に出掛ける。
今日はまだ歩いたことのない草津の東側から北側を通り、西側へ抜けるコースで歩いてみることにする。
まずは、前回浴室の写真を撮り損ねているこぶしの湯へ向かう。
前回も冬の時期に訪れたが、その時ほど道路の雪が少ないものの、冬の時期に広い道を歩くのは車が通る度に水が跳ねて気になる。
清掃中という貼り紙がされているが、男湯、女湯とも清掃は終わっているみたいだったので、入らせていただく。
前回はマナーの悪い子供達で閉口させられたが、今回は貸切状態で、併設の坪庭をバックに浴室の写真を撮ることが出来た。
ここは建物が東向きに建てられているので、朝日が差し込む中の朝風呂はさぞかし気分がいいだろう。
いかんせん町外れにあるので、早朝に来ることが出来ないのが残念である。
利用者のマナーが悪い為か、相変わらずトイレはふさがれているのが気になる所だ。
つつじ亭さんの角を右に曲がり、ホテルヴィレッジへ歩いていく。
S字カーブの中程では、町内で集められた道路の雪がトラックで運ばれて来ては、川に捨てられている。
この川は、温泉の湯(近くの中和工場で魚が住める状態に処理されている)が流れているので、あっという間に溶けてなくなってしまう。
デジカメで写真を撮ろうとするが、溶けるのが早くてなかなかうまく撮れない。
しばらく歩くと右手に群馬大学付属病院草津分室が見えてくる。その先にようやくホテルヴィレッジが現れた。
会員制のマンションとホテルからなる、草津における正統派リゾートの象徴とも言うべき存在である。
この広大な敷地の中にある「ボン・クォーレ」というレストランの評判がすこぶる良いので、一目見ようとはるばるやって来た訳だ。
一番手前の棟で敷地の案内図を見て、すぐにその場所は分かった。昼前であったが営業を始めているので、入ってみることにする。
駐車場が凍結していて危うく転びそうになりながらもたどり着く。
駐車場側の1Fには、クリスタル製品などが展示されており、高級感あふれる店を予感させる。
階段を上がると、マンション側からの入り口になっており、どうやらこちらが本来の入り口の様であった。
食事をするべく入ろうとすると、11時50分なのでまだランチの営業はやっていないとのこと。
その辺を散策してから来る旨をボーイに告げ、道をさらに東側へ下っていく。
道の左側にはスキーが出来そうな見事な斜面があって、子供連れがそりで遊んだり、雪だるまを作っている。
そんなのを見ている内に、ホテルヴィレッジの中で美味しいパンを売っていることを思い出し、そちらへ向かう。
テルメテルメという日帰り温泉施設を通り越して、ホテルの正面へ出ると白根山の雄大な眺めが飛び込んでくる。
この眺めの良さは草津一であろうと思われる。いい場所に作ったものだと感心する。
驚いたことにホテルの敷地内に小さなスキー場があり、リフトまで設置されている。
1Fにあるケーキショップでお目当てのパンを見つけるが、時間が遅かったせいか、2種類のパンしか残っていなかった。
それよりも美味しそうなケーキの数々に目を奪われた。ここで食べたら高くつくと思い、テイクアウトすることにした。
一番目を引いたジャンボシュークリームは想像を絶する巨大さで、とても一人で1個食べるのは困難だ。
2人で1個食べれば十分な量なので、それだけ買って宿へ戻る。
宿に戻る度にケーキを持ち込むので少々気が引けるが、HPで持ち込みOKとあり、連泊するのでまあいいだろう。
苺は3ヶ入っており、カスタードクリームはかなり甘味控えめだが、さすがに食べ応えがあるので二人で一個食べるのがよろしい。
ジャンボシュークリームを食べ終えてから、再び散策に出掛ける。
冬の時期に散策というのは似つかわしくないが、この日は前日よりさらに気温が上がり、風も穏やかで散策にはもってこいの条件だ。
長寿の湯の手前の路地を左に曲がり、次の路地を右に曲がりペンション街へ進んでいく。
ここにペンションが集まっているのかと言えば、日本におけるペンション発祥の地である「綿貫ペンション」さんの存在が大きい。
実際に歩いてみると、これほどのペンションの立ち並ぶ中、流石に「綿貫ペンション」さんの建物はひときわ老舗の風格が漂っている。
喫茶店を併設しているので、機会があったら入ってみたいと思わせるような素敵な感じのペンションで気に入った。
囲山公園の北側の道沿いに相撲協会の施設があるのに気が付く。
なぜこんな所にと思い、通りの反対側の白根神社側を見ると雪に埋もれて使えないものの屋根つきの土俵があるではないか!
古来相撲とは、神社へ奉納する意味合いで行われていたので、草津場所なんてのもここで行われているのだろうか?
白根神社の裏手から回り込み、神社にお参りする。
神社正面へ続く踏み跡は、神社の軒先に近い所に沿って続いている。
今日は暖かいせいか、軒先から雪解けの水が盛んに落ちて来て、その合間を縫って小走りに通り抜ける。
南側からの参道は以前は雨や雪が降るとぬかるみになっていたのだが、最近綺麗に舗装され歩きやすくなった。
再び囲山公園から西へ歩いて行く。持参の地図によると、もしかしたら天狗山スキー場の方に抜けられるかもしれない細い道がある。
広い道をそのまま行けばたどり着けるのだが、交通量が多い上に路肩に雪があり、とても歩けたものではない。
ベルツ通りの駐車場の所を西へ進み、そのまままっすぐ細い道を歩いていく。
理髪店を過ぎた頃に、雑木林の中の雪原の上に小動物の足跡を発見する。
西に傾き始めた夕日のやわらかい斜光線が、雪の上に木の影のシルエットを放射状に作り出している。
雪の写真は難しいのだが、朝か夕方のやわらかい斜光線を使って撮影したのは初めてだったが、うまく撮影出来た。
肝心の道の方は、ペンションに阻まれており行き止まりになっていた。
仕方なく来た道を引き返し、駐車場を南へ曲がり草津ホテルへ下っていく。
西の河原は思いの外雪が少なく、撮影出来そうなスポットはほとんど無かった。
その代わり、穴森稲荷の参道や祠が新しく整備されていたので、さっそく取材を敢行する。
参道には雪がかなり積もっているが、踏み跡があるのでなんとか登れそうだ。手摺を頼りに転ばない様に、なんとか上までたどり着く。
羽田空港の近くの京急羽田線に穴森稲荷という駅名があるので、もしや?と思っていたら案の定そこの分社だとの説明書きがある。
祠の前に真っ白なお清めの砂の入った箱があるので、ありがたく頂戴しておく。
京都などで話に聞いたことはあるのだが、実際に目にしたのは初めてだ。それもただで頂けるのは珍しいのではないだろうか?
西の河原露天風呂の奥へ続く道を歩いていくと、男湯が丸見えである。
女湯は完璧に見えないのだが、あれだけ見えてしまうと歩いている方が目のやり場に困ってしまう。
別にこれといった目的はないのだが、鬼の相撲場までの短い距離を往復した。
途中には「日本のミカタ」でケイン・コスギが入ろうとした川の中の湯煙は見えなかったが、あの辺だろうという見当はついた。
宿に戻り夕食前に内湯に入る。今日は脱衣所の足拭き用のマットは取り替えられており、床も全く濡れていなかった。
夕食は心なしか昨夜よりはグレードアップしているが、依然として仲居さんは無愛想なのが気になった。
夕食後に一休みしてから、草津に来ると必ず立ち寄る湯畑下の喫茶店「ぐーてらいぜ」へ向かう。
空いていれば必ず座るお決まりの席がある。一番奥の裏口から入った所にあるテーブルである。
何故なら荻原健司の使用したクロスカントリーの板が飾られており、マスターの表情やコーヒーを入れる様を観察できるからである。
今回は運良くこの席に座ることが出来た。旅館の泊り客の笑い声が絶えず聞こえるのは、構造上仕方のないことだろうか?
最近若者向けにシェイクやスムージーといった新商品が開発されているので、行く度に試してみることにしている。
妻はウィンナーコーヒーを、私は抹茶シェイクを注文する。
「ぐーてらいぜ」は老舗旅館「日進舘」さんの浴室だったものを改装して喫茶店にしたものである。
いかにも浴室を彷彿させる太い木の梁や、高い所にある明り取りの窓など店内の様子を撮影する。
抹茶シェイクに使用している抹茶アイスは甘すぎず、苦すぎず絶妙のハーモニーを醸し出している。
メニューに抹茶があるくらい抹茶には自信を持っているらしく、あっさりとした大人向けの上品な味に仕上がっている。
宿に戻り、家族風呂が使用中だったので順番待ちをしていた。
少し離れた場所で待つこと10分あまり、ようやく空いたと思って行こうとすると陰に待機していた家族連れに先を越されてしまった。
家族風呂の前で待っていなかった我々が悪いと言えばそれまでだが、あまりにも姑息な手段に腹が立った。
仕方なく妻は女湯へ、私は浴衣に半纏を羽織り下駄がけで地蔵の湯へ向かう。
やはり地蔵の湯の浴室の照明は少し暗すぎる。女性客の中には、この点を指摘する向きが最も多い。
男性の私でさえそう思うので、女性は一人で入るのがこわいであろうか?
お湯自体はすぐ隣りに源泉が湧いており、強酸性でありながら目にも優しい湯で、草津の外湯の中でも一番のお気に入りである。
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