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入川森林軌道跡ハイクと丸山鉱泉
2001.08/25〜08/26

旅行者 まぶりん麻呂、ちえりん
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 08/25

三峰口〜(専用バス)〜川又…前田夕暮の歌碑…入川渓流観光釣場…入川東京大学演習林ゲート…入川森林軌道跡…東京電力入川取水口…シオジ原生林の広場…赤沢谷・入川本谷合流(復路は往路の逆)


 08/26

慈眼寺(秩父十三番札所)少林寺(秩父十五番札所)惣円寺(秩父七福神弁財天)今宮坊(秩父十四番札所)…秩父駅前有料駐車場(下りSLパレオエクスプレス撮影)…ポムドテール…秩父神社秩父まつり会館


 8/25

 自宅から秩父方面に行くのには5通りの経路がある。
1.相模大野〜町田〜八王子〜東飯能〜西武秩父/御花畑
2.相模大野〜町田〜八王子〜寄居〜秩父
3.相模大野〜新宿〜池袋〜東飯能〜西武秩父/御花畑
4.相模大野〜新宿〜池袋〜寄居〜秩父
5.相模大野〜新宿〜熊谷〜秩父
1は最速達タイプで往路はほとんどこの経路を使用する。2は東飯能以北の八高線の景色を楽しみたい時に使用する。 1と2は八王子から JR東日本の秩父奥武蔵フリー乗車券を使用出来る。(注:秩父奥武蔵フリー乗車券は2002年3月で廃止されました) フリー区間内では経路選択が出来るので気ままな旅にはぴったりだ。 3は一見遠回りな様だが、池袋始発の秩父鉄道直通の西武線快速急行に乗れば所要時間は2と遜色はない。 西武鉄道の秩父フリーきっぷが利用できるが、当日に始発駅でしか買えない為、あらかじめ購入することが出来ず、 また行き帰りとも経路の選択が出来ない為未だに使用したことがない。 4は東武線には割り引き切符の設定がない為未だに使用したことがない。 5はSLパレオエクスプレス乗車時に利用する。 JR東日本のホリデーパスを使用すれば2との組み合わせが有効だ。

 今回は三峰口駅9:35集合のハイキングに参加するので、迷わず経路1を選ぶ。 八王子からの八高線は高麗川まで電化され、以前のオレンジ色の旧式の気動車とは比べ物にならないくらいスピードアップ している。山手線の使い古しが主に使われているが、最近新型車両も投入されている。 東飯能では先発の西武線普通列車を見送り、次発の秩父鉄道直通の快速急行に乗る。 快速急行とは言っても秩父線内は各駅停車の為、のんびりしている。 この列車に仕様されている車両は、ドア付近以外は向かい合わせになっているセミクロスシートでゆっくり出来る。 八高線の東飯能〜寄居に勝るとも劣らない川沿いの風景で結構気に入っている。 横瀬駅で前4両を切り離し、身軽になった後4両三峰口行きは西武秩父駅に進入する。 前4両寄居行きは西武秩父駅には停車せず、渡り線を通ってすぐ下に見える秩父鉄道の御花畑駅へ進入する。 この日は秩父鉄道主催のハイキング参加者と思しき人々で、車内には興奮気味の中年客の笑い声で満ちていた。

 三峰口で下車すると駐車場に3台の観光バスが停車しているのが見える。 改札脇での受付で参加費1500円を払い、そそくさとバスに乗り込む。 バスは三峰口から西へ国道140号線を走る。途中ダムの建設に伴い、巨大なループ橋が完成していた。 かなりの高度まで一気に上がり、下の方にダムの建築現場が小さく見える。 ここでダム建設に伴う立ち退きに関して意外なことを耳にした。 立ち退きに際して支払われる補償金は時期にかかわらず、常に一定の額だということだ。 川又の駐車場のトイレで用を済ませ、国道140号線の脇の道を下に降りていくと入川渓谷であった。 台風の影響で水かさが増してはいるが、濁りもほとんどなく清冽な流れが心をなごませる。 ブナの原生林がもたらす豊富な涌き水が、コースの至る所で見られ、触ってみるととても冷たい。 しばらく行くと観光釣場があり、その奥はキャンプ場になっており、バンガローが立ち並んでいる。 川原では多くの家族連れが釣りをしたり、川遊びをしている。ここまでは一般の車の立ち入りが許されているので結構車の出入りがある。

 入川東京大学演習林ゲートを抜けると、いきなり立派な森林軌道跡が現れる。 このあたり一帯は東京大学の演習林になっており、今回のハイキングに関しては特別に許可を得ての入山とのこと。 跡と言っても、かなり完璧な姿で残っており、鉄道ファンならずともハイキング参加者の興味を惹いていた様だ。 上り下りの行き違いの為のポイントや、小川を渡る桟橋など見所はつきない。 カーブの向こうから木材を満載したトロッコがやって来ても不思議ではない、そんな光景の連続だ。 今回のハイキングは森林軌道跡を歩くので、鉄道ファンが随所でシャッターを切る光景が目に付いた。 もちろん自分もその一人であり、団体行動の妨げになってしまったことをいたしかたないと思うと共に少々反省している。 やはり、最後尾からゆっくりと撮影しながら歩くべきだったと思う。

 途中、秩父鉄道の職員で今回は添乗員として参加しているSayさんと歓談しながら歩く。 鉄道壁紙やアイコンを作成しており、当HPでも使わせていただいている。 森林軌道跡は平坦であるので、廃線後はハイキングコースや登山道に転用されているケースが多い。 いままでに歩いた、寸又峡、西沢渓谷などと比べ物にならないくらいはっきりとした軌道跡で、崩落もほとんどなく ハイキングコースとして安心に歩ける。ただし、ここ入川軌道跡は東大の許可を得ないと立ち入りできない。 10月、11月にもあと3回ほど同じ企画でハイキングが催されるが、自然保護の立場から今回の様な大人数のハイキング は今年限りになるとの見通しであろうと説明があった。話しながら歩いていたら、妻と離れてしまったので慌てて追いかける。 赤沢吊橋の手前の景色の良い場所で思い思いの場所で昼食をとり、来た道を再び歩く。 足が慣れて来たせいか、帰路は予想以上に早く戻ることが出来た。

 ここで入川軌道について説明をしておこう。 入川軌道は、荒川上流の入川渓谷沿いにブナやカツラなどの伐採木・木炭運搬用として入川と滝川が合流する大滝村川又地区 を起点に赤沢谷出合まで延びていた5.1キロの軽便鉄道だった。今では資料や写真も少なく、「幻の軌道」と呼ばれている。 当然宮脇氏の「鉄道廃線跡を歩く」シリーズにも掲載されていない。 その起源は戦前とされ、大正14年、亡父から跡を継いだ歌人の前田夕暮を社長とする関東木材合名会社がその拠点を 両神村小森から大滝村入川へと移したことで、一つの集落を作るほどの繁栄を導いたと言われている。 最初は人力でトロッコを押していましたが、やがて馬が引くようになり、戦後はエンジンを積んだ内燃機関車が4〜5連結の ボギーを引いて運搬していました。レールの幅は普通の鉄道よりも狭いナローゲージ(762mm)で、機関車の重さは 4.5〜6トンと今から思えばおもちゃのような軌道でした。当時は蒸気機関車よりも力の強い内燃機関車が木材運搬に はなくてはならない存在だったのでしょう。 戦時中は武器として終戦後は町の復興の為に木材の需要も多く、大変な賑わいをみせましたが、安い輸入材や環境破壊に押されて 昭和45年、森林軌道の幕を閉じました。現在は軌道跡がひっそりと残り、十文字峠や甲武信岳への登山路となっている。 冬季(12月〜4月)は凍結の為利用できませんが、新緑や紅葉の頃には一段と美しい渓谷美が楽しめます。

[記事引用]秩父鉄道作成のハイキングマップの説明文

 三峰口に戻ると丁度急行秩父路6号が入線しており、急行券を買って早速乗り込む。元国鉄車両の改造であり、 クロスシートのいわゆる急行型で古き良き鉄道の旅を彷彿とさせる。冷房の利きがが車両によって異なるのはご愛嬌だが… たった15分程度で下車してしまうのはもったいないことだが、秩父駅で下車する。案の定他に下車客は誰もいない。 駅ビル内のじばさんセンターで日本酒、ワイン、秩父観光協会発行の観光ガイドブックを求める。 このガイドブック様々な視点から秩父路を紹介しており、これからの秩父巡りに活躍が期待される。 秩父駅前からタクシーに乗り、本日の宿丸山鉱泉へ向かう。市街地を抜けると、車窓から武甲山が見え始め車は一気に高度を上げる。

 程なくして宿に到着。市街地より近い割に山峡の趣が感じられて、想像以上にロケーションは良さそうな宿だ。 秩父の荒川沿いにはたくさんの鉱泉があり、秩父武甲鉱泉郷といわれている。丸山鉱泉もそのひとつとして秩父周辺では昔から有名な旅館である。 部屋へ案内され一息ついてから、風呂場へ向かう。まずは、後から新設されたと思しき露天風呂へ向かう。 浴槽の大部分が屋根で覆われている半露天であり、思ったほど見晴らしも良くない。 お風呂は岩風呂で湯船の底は浅めなので少し寝そべった感じで入浴する。こちらのお風呂には打たせ湯もついている。 当然加熱循環であるが、塩素臭が鼻についたのが少々残念だった。

 期待外れに終わった露天だったが、気を取り直して売り物の薬草花悦の湯へ向かう。 ここは休憩室が併設されており、これから家路に着こうとしている湯上りの客がくつろいでいた。 花悦の湯は宿泊客と日帰り客が共用のお風呂で、旅館とは別棟になっており日帰り専用の受付もある。 渓流に面した浴場はこぢんまりとして大きさで、内風呂は手前が鉱泉風呂で熱め、その奥に名物の薬草風呂で温めの2つがある。 変わっていたのは洗い場の所に凹凸のある木肌の板が設置されていたことだ。 何の為か分からないが、タイル張りにはない自然の風合に好感が持てた。敢えて言うなら足載せ台と言う所か? 薬草風呂のお湯はかなり色が濃く、独特の芳香がする。この芳香は主に奥秩父に自生する松房の蔓(松藤)によるものである。 松房(松藤)は、モクレン科の蔓状の植物で、初夏になると黄白色の花を開き、秋になると紫黒色の実を結びます。 この蔓を乾かしたものを松藤と言う。他には木天蓼(マタタビ)クロモジ等が芳香の成分である。 いわば森林浴をしているようなアロマテラピー効果が非常に感じられ、売り物にしているだけのものはある。 マツフジ、マタタビ、ヨモギ、オオバコ、ドクダミ、ニワトコ、スイカズラ、ゲンノショウコなど10種類以上の薬草成分により 皮膚、胃腸、リュウマチ、腰痛、肩こり等、美容などに効果がある。 内風呂の外には檜の薬草露天風呂があり、アングルによっては近くを流れる川もちらっと見え、別棟の露天風呂よりも 明るい雰囲気で、しかも温めなのでここは大変気に入った。 なぜか内風呂では汗が出てこなかったが、露天に入ると汗が吹き出し、浴後も汗がなかなか引かなかった。

 丸山鉱泉は鉱泉だが限りなく温泉に近いと言われている。参考までに鉱泉水のデータを記載しておく。
1.1000ml中の蒸発残容量 0.039g
2.残存含鉱物イオン(1000ml中)
  Ca+(カルシウムイオン)350ppm
  Mg2+(マグネシウムイオン)174ppm
  Na+(ナトリウムイオン)150ppm
  K+(カリウムイオン)30ppm
  Mn+(マンガンイオン)微量
  Fe2+Fe3+(鉄イオン)微量(測定不能であるが含有している)
  Se(セレンガス)発生確認(測定不能であるが含有している)
3.Total
  69ppm含有しており、普通水の約3倍以上のイオン量を含有している為、鉱泉でもかなり温泉に近いと言える。



 8/26

 朝食後に露天に入った後、宿の送迎用のマイクロバスで西武秩父駅まで送ってもらう。 妻の足の指の状態が思わしくないので街中に点在する札所巡りをすることにする。 まず初めは御花畑駅近くの第十三番寺 旗下山慈眼寺。 曹洞宗で本尊は聖観世音菩薩 真言は「おん あろりきゃ そわか」。 7/8のあめ薬師(薬師さま縁日)は目の健康を願う人で賑わう。 街中にあるにもかかわらずどっしりとした山門と華麗な装飾の観音堂は印象的だ。 秩父札所開創と伝わる十三権者像があるそうだが、この時はその存在を知らなかったので、後日訪れることにしよう。

 秩父鉄道の踏切を渡り秩父駅方面に進み第十五番寺 母巣山少林寺。 臨済宗建長寺派で本尊は十一面観音菩薩 真言は「おん まか きゃうりきゃ そわか」。 白いしっくい塗りの本堂でおよそ寺院とはかけ離れた洋風建築。 名前からイメージしていた想像とは全く違ったが、境内に咲く小さな花たちの方に興味を抱いた。

 次ぎは再び秩父鉄道の踏切を渡り、慈眼寺近くの惣圓寺。 浄土宗で本尊は阿弥陀如来。 この寺の鐘は江戸時代忍藩秩父領の標準時刻を報知する役を果たしていたので、秩父絹市、秩父夜祭等この音色の合図により開始されたという。 守護神としてまつられている八臂大弁財天は秩父大火により焼失した。 後に弘法大師作、秩父惣圓寺と記した掛軸のお姿が見つかり、再現したと伝えられている。 昭和51年、開運秩父七福神巡りが開かれ、参拝祈願に訪れる人が増加しているそうだ。 弁財天は財宝来招・商売繁盛・知恵授け・音楽の神などで知られる。

 最後は十四番寺 長岳山今宮坊。 境内にある幹まわり8.56mの大欅には十年前に起こった不思議な出来事を契機に龍神木と呼ばれるようになった。 この社には奈良時代以来八大龍王神と宮中八神がまつられている。 この大欅には空洞があり、昔から洞木(どうぎ)と呼んで、龍神の棲家であると云われてきた。 平成3年12月31日、元日祭の準備の為氏子たちが社殿の清掃をしていた時、奉安してあった御神体(龍の彫り物)がにわかに動き出し、周囲に突風が舞い起こった。 そこに居合わせた宮司も氏子も一斉に驚きの声をあげた。風は竜巻となって大空を駆けのぼり、やがて大欅の空洞のあたりに消えていった。 万物に生命を授けてくださる龍神をもっと大切にしたい、という時代の要請に応えて、永い眠りから醒められた八代龍王神が、 この社に奉仕する人々に対して歓喜を顕わしてくださったのにちがいないと人々は思った。

 秩父駅に下りのSLがやって来る時間にはまだ余裕があったので、街中に秩父夜祭など全国の祭りを紹介しているフリースペースでしばし休憩する。 秩父神社の鬱蒼とした森を見ながら秩父駅へ向かう。かねてより調査しておいた駅前の有料駐車場でSLを待ち受ける。 果たして時間通りに5001列車はやって来た。遥か彼方から汽笛が聞こえてから待つこと数分でゆっくりと姿を現わした。 夏休みの時期は、ゴールデンウィーク中に行われたイベントで子供達が鯉のぼりなどのイラスト塗り絵をしたものが車内を飾っている。 それにちなんで色鉛筆をモチーフにしたヘッドマークを掲げている。ヘッドマークに関しては鉄道ファンの間でも賛否両論ある。 いずれにしても秩父鉄道がSLの存続をかけて頑張っていることには敬意を表したい。 相変わらず動いている被写体は苦手だ。チャンスは一度だけだが、停車間際ということもありゆっくりしたスピードなのでなんとか納得の行く写真が撮れた。 駅に停車すると最後尾のヘッドマークを追いかけてダッシュする。何枚か写真を撮ると、SLは慌しく発車していった。

 丁度昼時なので駐車場の向かい側にあるポムドテールという洋食屋さんに入る。 昼のメニューは少なかったが、値段の割になかなか充実した内容であった。 生クリームをつけて食べるフレンチトースト、サラダ、メインは妻は野菜のたっぷり入ったグラタン、自分はシンプルなトマトソースのパスタ 食後にアイスコーヒー、追加で綺麗に盛り付けされたデザートを付けても一人1,050円というのは驚きだ。

 食後は駅近くの秩父神社に向かう。正直言ってあまり期待していなかったのだが、社殿の壁面の色鮮やかな彫り物の数々は日光東照宮にも匹敵するほどであった。 それもそのはず権現作りの本殿、弊殿、拝殿は徳川家康が再建し、つなぎの龍は左甚五郎作であり有名なのだそうだ。 最後は秩父まつり会館を見学する。日本三大曳山祭の12/2、3に行われる秩父夜祭の資料展示館で、昭和の名工の手による屋台、傘鉾が 1台づつ常設展示されている。2階は秩父夜祭の歴史や構成、屋台の後幕、水引幕など関係資料が展示されている。

 帰路は寄居から八高線経由で帰ることとする。丁度上りSLの後発の普通電車に乗ると長瀞駅でSLを追い抜き、寄居駅の時間待ちの間と3回 見ることが出来そうだ。秩父駅で改札を早めに済ませて、ホームの最前部でSLを待ち受ける。 隣駅の御花畑駅に停車しているのが見えるが、なかなかやって来ない。夏休み最後の休日ということもあり、秩父駅から乗車する客は予想以上に多かった。 みんな身を乗り出してSLがやって来るのをいまかいまかと待ちわびていた。 やっとSLが到着し、ヘッドマークを中心に撮影する。程なくして発車し、SLに乗っている子供達に手を振り見送る。 後発の普通電車に乗ると三脚と一眼レフを持ったSLファンが乗車していた。長瀞駅で先発のSLに追いつこうということだろう。 長瀞駅でSLを追い抜き、寄居駅で八高線の列車が入線してくると同時にSLが入ってきた。 前から気になっていたのだが秩父鉄道と八高線の接続は悪い。特に急行秩父路とSLの乗り継ぎは最悪だ。 秩父鉄道としては終点の熊谷まで乗ってもらいたいということであるから致し方ないと言う所だろう。 八高線は夕方の時間帯のせいか意外と乗車率が高かった。途中土砂降りの雨に見舞われ、生憎景色には恵まれなかったが、ローカル線の風情を満喫した。

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