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上州温泉巡り第二章
2002.03/15〜17

まぶりん麻呂。ちえりん
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 怒涛の湯巡りのおかげで昨夜は食事を食べ終わった後、横になった途端に寝てしまった。 今朝は宿のお嫁さんも戻ってきたようで、セルフサービスではあるがなかなか充実した朝食だった。 広い食堂で二人だけというのは、もったいない感じだ。もっとも平日に泊まる客も珍しいだろう。 チェックアウト後、10:40の新特急草津4号の時間までにはかなり時間があったので、宿の車で昨日入った平治温泉まで送ってもらう。

 平治温泉は、地元の人でも存在は知っていても入ったことがある人は少ないらしく、 連れて行ってもらうこちらが詳しい場所を説明する有様だ。 昨日浴室で一緒になったおじさんによると、営業時間は一応午前10時からということになっているが、 管理人が気まぐれなのか、時々施錠されたままになっていることがあるとのことだ。 10時ちょっと過ぎに到着し、扉を開けてみるとすんなり開いた。 今日こそゆっくりこの温泉を独り占めにすることが出来ると、思わずにんまりしてしまう。 プレハブ仮設の温泉で中が木造の浴室と浴槽というのは大変珍しい。 相変わらず泡の付きが素晴らしく、浴槽の縁に頭を乗せて、ぼーっとしているとあっという間に時間が過ぎてしまった。

 万座・鹿沢口まで歩いて行ったのだが、宿の人が言う通り10分くらいであった。 今回の湯巡りに際しては、初日の同行者がいたので久しぶりに時刻表を駆使してスケジュールを立てた。 本来なら2日目は川原湯温泉で途中下車して、中之条から経由で四万温泉へ向かう予定だった。 しかし、帰路は青春18切符を利用する為、急遽予定を変更し、万座・鹿沢口から新特急草津4号で中之条へ直行することにした。 吾妻線というローカル線ではあるが、特急だけにスピードが速い。 袋倉付近にある昨日入った半出来温泉見つけようと車窓を見ていたが、丁度トンネルの陰になり、見つけることはできなかった。 車窓から昨日車で巡った対岸の道を見ていると、改めて車の便利さにはかなわないと痛切に感じられた。 中之条駅からの四万温泉行きの吾妻観光自動車のバスは発車間近で、土曜日である為大勢の観光客で賑わっていた。 山道を行くこと40分で四万温泉の河原湯近くのバス停に到着する。 入ろうかな?と思ったが、個人的には外観があまり好きではなかったので、温泉の真上のベンチで昼食する。

 最初は四万温泉の共同浴場を全て入る事を目的としていた。 しかし、それ以上に魅力ある湯の泉という山奥にある無人の温泉へ早い時間の内に行っておきたいので、先を急ぐことにした。 四万温泉は川沿いに縦に長く続いている。下流から温泉口、山口、新湯、ゆずりは、日向見と続く。 温泉口には四万清流の湯、山口には上の湯と山口露天風呂、新湯には河原の湯と塩の湯飲泉所、ゆずりはにはゆずりは飲泉所、 日向見には御夢想の湯と地区毎に共同浴場や飲泉所が設けられており、温泉好きにとって散策コースとしても最適な温泉である。 川の上流へ歩いていくと、しばらくしてゆずりは地区に入る。町営の四万ゆずりは荘は、大学時代のスキーサークルの友人達と泊まった のだが、その時には温泉に興味がなかったので、隣りにゆずりは飲泉所があることを知らなかった。 ここは、飲泉所にしては立派すぎる建物である。早速置いてあった湯のみに源泉を入れて飲む。 四万温泉の湯温は総じて高い為、一度に大量に飲むことは出来ない。注意書きには等倍以上に薄めて飲むことと書いてあったので 水道の水を入れてうめた所、信じられないことだが、消毒液臭い臭いがしてたまらず飲むのをやめてしまった。 ここの湯はペットボトルに入れて持ち帰り、冷ましてから飲むのが良いだろう。

 しばらく歩いていくと日向見地区に入り、大きな観光案内地図がある。右へ行くと四万湖、左へ行くと薬師堂とあるので まず薬師堂でおまいりを済ませる。四万温泉のシンボルと言うべき観光名所だが、温泉街から離れているので訪れる人は少ない。 隣にある御夢想の湯は2階に公民館併設の平凡な建物なので、意外と気がつきにくい。 浴室は全て木造りで、小さめの浴槽が、いかにも霊験あらたかな厳粛な気分にさせてくれる。 お湯は予想通り熱めで、長いこと入っていることはできないが、湯上りは汗がなかなかとまらず、体の芯まで温まった。 薬師堂や地蔵堂のそばにある温泉は、共通してひっそりとしていて寺湯に入らせてもらっている感じがして身が引き締まる思いがする。

 実は、ここから山奥の湯の泉という無人の温泉までは、歩いたら相当な距離がある。 四万川ダムを迂回してつづら折の道を上がっていくのだが、ダムの壁面を見ると、下から直接登れる階段が設置されている。 しかし、階段の入口の門には無情にも鍵がかかっている。ここを登って行けば、どれだけ時間短縮が出来るか分からない。 しばらく登るとダムサイトに到着する。そのまま上流に向かって歩いていくと、湯の泉から湯を引いているこしきの湯が現れる。 冬季休業の為入ることは出来ないので、湯の泉に向かってひたすら歩いて行く。 ダムの奥に見える鉄橋の手前で左折して、林道を歩いて15分くらい行くと、お目当ての湯の泉が眼下に見える。 予想していたよりずっと小さな石造りの浴槽で、上を通る林道からは丸見えなので、女性が入るのはちょっと無理でしょう。

やむなく妻を待たせて、手早く入る。雰囲気的には徳島のホテル祖谷温泉の露天風呂に似た感じだが、さらに野趣に溢れる。 男女別になっていればなおさらいいのだが、この程度の規模ではそこまでは望めないだろう。 温めで泡の付きがすこぶる良いのお湯は、午前中に入った平治温泉に似ており、湯量も非常に豊富である。 そのまま川に大量に流れて行ってしまうのが惜しいくらいだ。 自分だけ入るのは妻に申し訳ないので、飲用にペットボトルにお湯を汲んで持ち帰る。 来るときは気が付かなかったのだが、帰路はダムサイトのそばから直接下に下りる遊歩道を経由して行ったらかなりの時間短縮になった。

 せっかく四万温泉まで来たので、有名な積善館本館の外観の写真を撮影して本日の宿である泉屋旅館へ向かう。 塩の湯飲泉所に立ち寄って再び飲泉にチャレンジする。ここは名前の通り塩分の成分が多い為かなりしょっぱかった。 使われている源泉が明治湯となっているが、確か積善館本館で使われているのもこのお湯だ。 この近くには地元住民専用の塩の湯という共同浴場があるのだが、入ることは無理なのであえて探そうとはしなかった。 宿へ行く道すがらに、前から手に入れたかった四万温泉名物の納豆を買い求める。 これはただの納豆ではない。四万温泉のお湯を使って作られている。しかも作っているのが白石商店という電器屋さんなのである。 納豆好きとしては念願かなったりなのだが、店主と思しき人物の愛想が非常に悪かったのが残念だった。

 本日の宿である泉屋旅館は、宿泊料金の相場が高めの四万温泉にあって、比較的安いのと、山口露天風呂と共同浴場の上之湯の すぐ近くなので迷わずここに決めた。 隣の立派な某有名旅館と比べると、外観の差は歴然としているのだが、川沿いの部屋からの眺めは良い。 しかし、目の前にある山口露天風呂に入っている大勢の人達が丸見えなのは、興ざめの感は否めない。 さりとて、せっかくの眺めなのでお互いを見えなくしてしまう目隠しを作るのも不自然なので、良い解決策はないだろうか? 今日は昼からずっと歩いていたので、疲れたので早速宿の浴室へ向かう。 大中小の3種類の浴室があり、それぞれ貸切にすることが出来る。 小と中は空いていたが、小はかなり狭く、薄暗い感じ。中はまずまず広く、明るい感じ。 迷わず中に入る。洗面器でかき回してみるが、四万温泉独特の湯温の高さに負けて、ホースによる加水に切り替える。 川沿いの大きな浴室が空いたみたいなので、早速階段を降りて行く。 一応屋根があり、壁で仕切られているが、大きくとられた窓からは、目の前にある対岸の露天風呂に入っている人が丸見えだ。 浴槽に入っている時は見えないのだが、立ち上がると目線があってしまうので苦笑してしまう。 浴室にはなぜだか使われていない水槽が置いてあり、掛け流しているお湯でこもった湯気を利用して観葉植物が茂っているのが印象的だった。

 夕食は部屋食で宿自慢の山菜料理がなかなか美味しく、インターネット予約特典の地酒と共に川のせせらぎを聞きながら堪能できた。 食後に窓から対岸の山口露天風呂を見ると、夕方とは打って変わってかなり空いている。 下駄を履いて橋を渡って露天風呂へ向かうが、街灯が故障しているのか、真っ暗で周りがよく見えなかった。 脱衣所は一応男女別に別れているが、露天風呂自体は混浴である。 面白いのは湯温が3段階に別れており、一番奥が熱い湯、その隣が温い湯、川の近くが適温となっていた。 適温の湯に入るのが景色も良く、おすすめなのだが、あえて挑戦してみたいのは熱い湯と温い湯に交互に入ることだ。 昨年大分の赤川温泉に入った時に実行して、疲労回復に大変効果があったので、今回もチャレンジしてみる。 しかし、熱い湯が予想以上に熱くて、温い湯にばかり入る。 あまり長い間温い湯に入ってもあまり温まらないので、適温の湯に入る。 適温の湯が狭いのが玉に傷だ。しかも、川の眺めがいいので日が高い内は芋の子を洗うような盛況ぶりだった。

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 翌朝、再び宿の大きな川沿いの風呂に入る。 昨日は、目の前の露天風呂に大勢の人が入っていたので、隠れるようにして入浴していた。 朝は露天風呂には入ることが出来ないので、誰もいないのをいいことに、窓を全開にして露天風呂気分を味わう。

 朝食後、すぐにチェックアウトして斜め向かいの上之湯に入る。 お湯が熱かったので、湯口の奥にあるコックを探し出し、湯の出を細くする。それでもかなり熱いので、やむなくホースで加水する。 そうこうしている内に、女湯には子供連れの若いお母さんが入って来たらしく、なにやら大騒ぎをしている。 共同浴場でこそ、子供のしつけはしっかりしてもらいたいのだが、今時の若いお母さんにそれを求めるのが無理なのだろうか? 水を止めてしばらくすると、湯温がじわじわと熱くなって来るのが分かる。 浴槽が小さいのですぐに湯温が高くなってしまう為、湯口のコックの存在は一見して分かる方が実用的だと思う。 湯口のコックを隠してしまっていては、湯温調節という本来の役割が果たせない。

 すぐそばの山口バス停から中之条行きのバスに乗る。東京へ帰る宿泊客で思いの外バスは混雑していたが、 なんとか空席を見つけて中之条駅までバスに揺られて行く。帰路は下り坂の為、往路より若干所要時間が短い。 今日は中之条駅から青春18きっぷを使って帰るのだが、このまま素直に帰るのはもったいない。 駅の近くに未湯の湯が3つもある川原湯温泉へ寄ってから帰ることにする。 万座・鹿沢口方面のホームに向かう人はほとんどいない。皆、このまま東京へ帰るのであろう。 川原湯温泉は泊りがけで来たことがあるのだが、その頃はそれほど温泉に興味があった訳ではないので、王湯、笹湯、聖天露天風呂の存在は知っていたが、 結局宿のお湯にしか入らなかった。

 川原湯温泉は建設中の八ツ場ダムの完成と共に水没してしまう。しかし水没を免れる高い場所に新しい源泉の掘削に成功した為、 温泉自体は存続することが約束されている。それ以上に不思議なのはJR吾妻線の方だ。 温泉や吾妻川が水没するのだから川沿いを走る線路も影響を受ける筈だが、線路の付け替え云々といった話は一向に聞こえてこない。 この時間に川原湯温泉駅で下りる客はほとんどいない。駅前には川原湯製菓などの温泉まんじゅうの店や食堂があるが、人通りはほとんどない。 ここでの持ち時間はあまりないので、妻と手分けして3湯に入る。自分は手前の笹湯、聖天露天風呂に、妻は奥の王湯にそれぞれ向かう。 一言言っておけば良かったのだが、王湯には展望の利かない露天と内湯があるのだが、湯の質では内湯の方が格段にいいらしい。 それを言わなかったばかりに、たっぷりと時間をとったはずなのに露天にしか入らなかったと聞いて、かわいそうなことをしたと思う。 一般的に露天と言えば眺めがいいと思いがちだが、王湯に関してはまったく展望も利かず、おまけに内湯と離れており、着替えなければ 両方の湯に入ることが出来ず、いかにも観光客向けに作りましたみたいだ。

 ここでまたひとつ勘違いしていたのだが、笹湯は混浴だと思っていたことだ。 笹湯に関する情報は事前に仕入れていた筈だったのだが、思い込みと言うものはこわいものである。 聖天露天風呂からほど近い場所にある笹湯の場所もすんなり分かり、まずはその建物の外観を見て思わずにやりとする。 温泉を外観から想像した場合、ほとんど外れたことはないからである。木造の鄙びた感じの建物であった場合はなおさらである。 妻をここに連れてくれば良かったと思ったがもう後の祭りだ。次回また連れてくることにしよう。 中へ入ると受け付けには人がいない為、料金箱にお金を入れる。 貸切状態を予想したのだが、こんな真っ昼間に先客がいたのには驚いた。聞けば地元の青年で、毎日入りに来ているとのこと。 Rさんがここで出会った青年というのは彼のことだっただろうか。 話好きでいろいろ質問責めにあい、温泉やら鉄道の話でひとしきり盛り上がる。 湯は予想通り熱そうだったが、加水していたおかげで適温になっていた。 驚いたことにここの湯には白い大きな湯の花が大量に舞っており、青系のレトロなタイルの浴槽の雰囲気とあいまって抜群の居心地の良さだ。 開け放れた窓からはのどかな風景が広がり、地元の人御用達の湯ということもあり、熊本の寺尾野温泉に通じる印象を感じた。

 聖天露天風呂は以前入ろうとした時は先客がいたので躊躇したのだが、湯巡りをするようになってからはそういうことは全くなくなった。 今回は誰もいなく、ホースで常に加水している為、お湯は適温に保たれている。 湯の花はまったくなく、湯の質としては笹湯と比べるとそれほど特徴は感じられないが、高台にあるので眺めがいいのが売りである。 脱衣所が設けてあって混浴なのだが、高台にあるとは言え、あまりにあけっぴろげなので、ここに入る勇気のある女性はほとんどいないだろう。 途中から入ってきた方は地元群馬の方らしく、今回の湯巡りの話をすると、知らない温泉ばかりだと妙に感心していた。 王湯に入っていた妻と待ち合わせて、駅前の川原湯製菓で温泉まんじゅうを土産に買い求めて、吾妻線の普通列車、高崎線の快速アーバン、 埼京線、小田急ロマンスカーを乗り継いだら、予想以上に早く帰ることが出来た。やはり、18キップには快速が強い味方である。

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