今回の旅は鳴子温泉湯巡りが目的であるが、ついでなのでJR完乗を果たそうと思う。
最近鉄道で遠出をすることがほとんどなくなっているので、周遊きっぷを利用して快速を乗り継ぐことを主眼に計画を立てた。
地下化された仙石線の仙台〜あおば通、山形新幹線の山形〜新庄これを片付ければ現時点での完乗は果たせる。
しかし、12月には東北新幹線の盛岡〜八戸の開業が控えており、きれいな体でいられるのは二ヶ月半くらいだ。
台駅で最速達のやまびこ1号を降り、在来線の東北本線のホームへ向かう。
快速南三陸は、今や電化区間を走る貴重な気動車の快速列車である。
車両はキハ40系3両、気仙沼方面へ直通で行けるので地元の人の足としてかなりの需要があると見え全席がほぼ埋まるほどの乗車率だ。
岩切を過ぎると、左手に利府支線が分かれ新幹線の試験車両が見える。塩釜〜松島ではほんの少しだけ海の景色が楽しめる。
小牛田駅の構内では、陸羽東線の気動車や電気機関車などが留置されており、
時間待ちの間を利用してホームに降り、鉄道の要衝の駅ならではの光景を満喫する。
小牛田から石巻線に入ると景色は一変して、黄金色の稲穂の真っ只中を列車が進行して行く。
石巻線は単線の為対向列車の時間待ちが結構あり、快速とは言えローカル線ならではののんびりした旅を満喫できる。
自動改札などはなく、木造駅舎で駅員が改札に立って切符を回収する昔ながらの光景が見られる。
きままな旅だったら気仙沼線の気仙沼駅まで乗り通してみたいものだ。
前谷地で快速南三陸1号を降り、向かいのホームに停まっている気動車に乗り換える。
石巻の近くなるにつれ住宅が増えて来て、あっという間に石巻駅に到着。
以前この駅は石巻線と仙石線とは別々の駅舎があり、乗り換えには少々不便だった記憶がある。
仙石線・石巻駅舎はかつて地元の人は電車駅と呼んでいたらしい。
平成2(1990)年7月、仙石線・石巻駅舎は石巻線の駅舎に統合され姿を消した。
快速うみかぜはすでに入線しており、僅かな乗り換え時間を利用して車両を撮影する。
103系の車両はカラフルな塗装がされ、ドアには自動開閉ボタンが取り付けられている。
数年後には山手線で余剰となる205系が仙石線に配備されるそうなので、今回で見納めになりそうだ。
石巻を出発してからは平凡な住宅街を走り、退屈な景色で思わず居眠りをしてしまった。
野蒜駅で目が覚めて、安心する。ここからが仙石線の車窓のクライマックスとも呼べる区間だからだ。
陸前大塚〜陸前富山では海辺に最も接近し、美しい松島の漁村の風景が窓一杯に広がる。
どのあたりだったか失念したが、多賀城〜仙台に新駅の設置が決定したという大きな看板を見つける。
仙台の2つ手前くらいから仙石線は地下に潜り、終点のあおば通で下車。
駅名の記念撮影などを手早く済ませ、向かい側のホームに停車している列車に乗り込み、再び仙台駅へ戻る。
仙山線の快速はいつも混雑しており、トイレ前ではあるが空席を確保してから、駅弁を買いに出掛ける。
仙台駅のの駅弁は種類が多く迷ったが、暖めて食べる容器の牛タン弁当にする。
妻は牛タンを食べたことがないので、珍しそうに食べていたが、野菜の付け合わせがなく牛タンと麦飯だけというのが少々物足りない気がした。
仙山線は愛子駅を過ぎたあたりから山岳路線の様相を呈し、作並駅で空いてきたのでボックスシートへ移動する。
時刻表を見るとかつて臨時駅であった面白山高原駅は、いつの間にか正式な駅に昇格しているのに気が付く。
この駅からハイキングコースが設けられており、JR東日本のハイキング特集の冊子にも紹介されていたのを思い出す。
この駅の近くにはスキー場もあり、通年の需要が見込まれることから正式な駅に昇格したのだろう。
仙山線の車窓のクライマックスは面白山高原駅〜山寺の山々の風景に尽きると思う。
山寺駅に停車中には、切り立った崖の上にある山寺を見ることが出来るが、
仙台寄りの車両ではホームの屋根が邪魔で見えないので山形寄りの車両に乗車することをおすすめする。
羽前千歳駅で奥羽本線に合流し、北山形駅はは左沢線と奥羽本線のホームが離れており、レトロな色調木造の跨線橋が目を引く。
仙台駅発車時の5分程の遅延を取り戻せないまま、山形駅に到着。
ひとつしかない新幹線の自動改札は開放され、駅員が形式的に乗客の切符を見るだけである。
足早につばさ号に乗りこもうとするが、ただでさえ少ない2両の自由席なのに禁煙車両は1両しかない。
連休初日とあって自由席は相当な乗車率で、かつての在来線特急つばさの時代からは想像できないほど利用者が増えている感じだ。
通路にも人が溢れているのでやむなくデッキの扉の所に立って車窓を眺める。
在来線のホームや踏み切りを新幹線規格の車両が通り過ぎるのを見ていると、予想以上にスリル感がある。
感覚的には京浜急行の特急と同じように、実際よりも体感速度は速く感じる。
さくらんぼ東根駅で大勢降りたので、すかさず空席にダッシュしてようやく座れた。
新線ではないが、在来線の新幹線化で一応乗っておきたい路線をようやく乗り、目出度くJR全線完乗を達成する。
新庄駅はかつての山形駅同様に奥羽本線が途中でぶった切られた形になっており、駅舎も建て替えられ、かつての面影は全くなくなっていた。
僅かにレンガ造りの車庫が残るのみで、面白味のない駅になってしまった。
ここでは時間待ちがかなりあったが、何もすることがなくホームでボーッとしていた。
せわしない乗り継ぎで少々疲れてきたので、こういう息抜きもたまには必要だ。
陸羽東線の2両編成ワンマンカーの後ろの車両のボックスシートを2人で占領し、足を投げ出す。
ここでやっと求めていた非電化ローカルの気動車ののんびりとした旅情を満喫する。
陸羽東線は最上川沿いの陸羽西線に比べ、非常に地味な車窓の路線だが、沿線には瀬見温泉、赤倉温泉を始め
今回の旅の目的の鳴子周辺にも沢山の温泉地を控え「奥の細道 湯けむりライン」という愛称が付けられている。
国鉄時代当時から変わらない木造の駅舎や待合室を見ながら車窓を見ていると、1時間ほどでに鳴子温泉駅に到着する。
ここで跨線橋を渡り、小牛田行の列車に乗り換える。24分の時間待ちを利用して一旦駅舎を出てみる。
駅周辺の土産物屋などを見て回るが、以前とあまり変わらない感じで活気がなく少し寂れた感じであった。
橋上駅の鳴子御殿湯駅は見晴らしが良く、鳴子峡の紅葉の中を走る写真の次に有名な撮影地でもある。
川渡温泉駅はあっけらかんとした何もない駅で、駅前の電話ボックスから本日の宿沼倉旅館に電話して迎えに来てもらう。