為栗駅
為栗駅は宿泊した平岡の隣にある駅とは対照的な秘境駅である。
駅の周りには何もないと思っていたのだが、後日調べてみると駅の裏に民家が2軒あるとのこと。
目の前を流れる天竜川には、その名も天竜橋という吊り橋がかかっており外界との結界となっている。
駅付近で天竜川が蛇行していて水量が多いのはのは、平岡ダムの治水工事の影響らしい。
信州から遠州へ下る船の舳先が為栗付近で進行方向が逆向きになり「信濃の国が恋しい」とばかりに信州の方を向き、
船頭泣かせであったこのあたりの地形を「信濃恋し」と言うようになったそうだ。
飯田線の数ある秘境駅の中でも風光明媚な眺めが楽しめる為栗駅は、衝動的に降りてしまいたくなってしまう典型的な駅かもしれない。
「信濃恋し」は地形的には北から南に流れている天竜川が、為栗駅付近でヘアピンカーブのように蛇行を繰り返している場所を指します。
対岸に渡ると東側から流れ込んでいる万古川を渡る鉄橋を通過する列車の撮影も出来るとか。
願いを込めて小石(恋し)を川に投げ込むと願いが叶うという縁結びの伝説もあります。
天竜橋を渡った対岸の西側から流れこむ和知野川付近にはキャンプ場があるので、駅寝ではなくキャンプ場で寝るというのも一興かと思います。
取材年月日2003年7月19日
飯田線は、「偉大なローカル線」と言われるだけあって乗り鉄の心をくすぐってやまない路線である。
25年くらい前に友人に連れられて出掛けたのが飯田線との出会いだった。
この時はものすごい山の中を通り、トンネルの多い路線で居眠りをするのには最適な路線という印象しかなかったが、天竜川の流れに沿って走る三河川合から天竜峡を結ぶ旧三信鉄道の区間の世間離れした風景だけは、鮮明に記憶に残っていた。
そして時は流れ、牛山隆信氏の「秘境駅へ行こう」という本がベストセラーになった頃、飯田線は秘境駅の宝庫ということが明らかなった。
18きっぷで中央線経由で飯田線へ出掛け、佐久間レールパーク、小和田を訪れ、平岡に出来た駅併設の温泉付きの宿泊施設に泊まり、早朝の列車を駆使して田本、金野という珠玉の秘境駅を巡って豊橋から西下した旅を敢行した。
飯田線・きのくにシーサイド・白浜温泉・京都カフェ巡り
この旅に行った頃、今回同行した内のひとりY氏は既にネット上で知り合っていたが、まさかこの10年後に乗り鉄の旅に出掛ける間柄になるとは思ってもみなかった。
Facebookで牛山氏が「日本全国・鈍行列車ランキング 2013年度版」を貼っていたのが全ての始まりだった。
ランキング第2位に上諏訪から豊橋行きの544M→554G 313系電車 走行距離213.7km 所要時間6時間57分というのを見つけて10年前に乗った列車だなあ、となんとなく思い出した。
昨年Y氏の友人のN氏と一緒にどこかに乗り鉄へ行こうという話が持ち上がったが、スケジュールの調整が付かずお流れになっていた。
もしやと思って時刻表を繰って調べてみると豊橋から東海道本線の普通列車で帰って来ることが可能なことが判明した。
飯田線を乗り通すだけでは不完全燃焼になってしまうので、田本駅で降りる事を思い立つ。
だが滞在時間が微妙に長すぎるのでもう一駅ということで白羽の矢が立ったのが為栗駅である。
取材年月日2013年9月08日