世田谷代田駅
1927年開業。この駅は東京都内にありながら、奇跡的に昭和の香りを残す駅の構造物やホーム壁面と一体化した長大な木造ベンチが残っていた。これだけ小田急らしい駅は、本線上にもほとんど残っていないだろうと思えるほど価値の高い駅だと個人的に思っている。特にこげ茶色の木造ベンチは、幼少の頃の小田急線ホームの記憶を蘇らせる素敵なアイテムだ。更に圧巻なのは、通路の壁側上部に黄緑色のアクリル板?が設置され、掲示用ポスターのスペースと、スリットの入った曇りガラスなど小田急オリジナルとも言える一連の駅舎の基本構造が維持されていたことだ。毎日車窓からあの日当たりの良い上りホームのベンチに座って、のんびりロマンスカーが通過する様を見られたらいいなと思っていた。2013年度に完成する連続立体化(地下化)工事に伴って仮駅での運用が想定されるため、このベンチを記録しようと思い立って訪れてみた。
1945年の空襲で井の頭線永福町検車区が被災し、井の頭線の大半の車両が焼失してしまった。連絡する路線を持たない井の頭線に車両を運び込むための連絡線(代田連絡線)が世田谷代田から新代田が敷設された。井の頭線の新車が陸送されることになった為などの理由から、わずか8年足らずで廃線となってしまった。無人の北口改札付近には車椅子用のスロープが設置されていたが、廃線の遺構は連続立体化(地下化)工事によって跡形もなくなってしまいました。
取材年月日2003年12月13日