小野田線 クモハ42
昭和初期に鉄道省が開発したクモハ42は、私鉄との間でスピード競争が激しかった京阪神間の急行列車に使用された。
自分の父親の年齢と同じこの車両にかねてから乗車したいと思っていた。
小野田線の雀田〜長門本山、通称本山支線のわずか2.5km、5分の区間で朝夕の通勤時間帯にのみの運転だったので、乗り潰しのプランに組み込むのに苦労した。
結局前夜小郡に宿泊して、始発の宇部線に乗りクモハ42の始発列車の始発駅である宇部新川へ向かった。
惜しむらくは日照時間の短い秋の早朝に訪れた為、光量不足で満足の行く写真が撮れなかったことだ。
しかし、新聞を読む老紳士や、貴重な固定客である女子学生など被写体には事欠かなかった。
薄暗い明け方に車内にガラス窓から朝日が差し込んでくると、景色が心なしかセピア色に見えてきて
タイムスリップを体験するには最高の車両だった。
この時撮影したクモハ42 006は2000年11月に廃車になり、辛うじて残った1両のトップナンバーであるクモハ42 001は、惜しまれつつ2003年3月のダイヤ改正で姿を消した。
[参考文献 鉄道ジャーナル別冊No.24他]
取材年月日 1995年10月22日