はっきり言ってこのカフェは、ほとんど期待していなかった。ネット上では犬同伴で入れるカフェとして紹介されているくらいで、地下に美容院が併設されているくらいしか特徴がないと思っていた。しかしそれがいい意味で裏切られることになるとは、思ってもみなかった。地下鉄千代田線代々木公園の駅は次の代々木上原駅が地上駅である為、深度の浅い所に駅が設けられている。大手町寄りの階段を上り、改札をくぐり、地下鉄駅としては比較的距離の短いエスカレーターを上れば目の前右手は代々木公園の緑が広がる。エスカレーターを降り、そのまままっすぐ歩いていくと右手に代々木公園西門が見えて来る。実は、大学の3年間所属していたスキーサークルのトレーニング場所が代々木公園の西側だった為、西側のもうひとつの最寄駅である小田急線代々木八幡駅から歩いて行ったのが懐かしく感じられた。
しばらく行くと左手に代々木小公園があり、その先に目指すviolettoという紫色の文字が見えてくる。店名のvioletteにちなんだ花のイラストが、フランステイストでなかなかおしゃれだ。店内に入ると一般的なこじゃれたカフェといった印象で、奥まったテーブルの所にあった装飾くらいが目を引いたくらい。地下を覗けば、照明を落とした1階のカフェとは対照的な明るい活気のある美容室から話し声が聞こえてくる。メニューが出てきたが、向こうのテーブルではスタイリスト兼カフェ担当と思しき女性スタッフが大きな黒板にメニューを書いている。その作業が終わるのを見届けると、おもむろにマスターと思しき人物が出て来て、お食事になさいますか?と尋ねてきた。「はい。」とうなずくと、くだんの女性スタッフが満面の笑みを浮かべて先程の黒板を持ってくる。
黒板を見るとパスタや前菜など、かなり本格的な料理のラインナップで少々驚いた。渡り蟹のパスタなどもあり目移りしたが、結局鴨とポルチーニ茸のリングイネをチョイスした。ヌードルのような感じの太い麺と鴨肉の肉汁からなる濃厚なソースが絶妙なハーモニーを奏でているではないか!そしてトッピングには白い野菜がごろごろと5、6個乗っかっている。最初はジャガイモかと思ったが、食べてみると冬瓜のようだ。もちろん淡白な冬瓜をそのまま食べても美味しいのだが、濃厚なソースを付けて食べるのもいい。先客も後から入ってきた客も渡り蟹のパスタを注文している。やはりこの店はパスタが売りの本格的なフランス料理の店のようだ。それは、クリスマスディナーの料理が印刷された宣伝広告を見て納得した。
Apetizer 2品をチョイス
季節の野菜のコリアンダー風味 〜鯖のマリネ添え
鴨とフォアグラのテリーヌ
アボガドとカニのサラダ仕立て 〜沖縄産シークァーサーのヴィネグレット
本日市場から、鮮魚のカルパッチョ
タラの白子の冷製 〜グレープフルーツとシェリーヴィネガーの温かいソース
フランス産山栗のポタージュ
オニオンと山エノキ茸のコンソメ赤ワイン風味
Main 1品をチョイス
牛舌のポトフー 〜カブと里芋、シブレットの香り
小鳩のロースト 〜りんごのソテー添え
ハーブで育てた豚肉と野菜の赤ワイントマト煮込み
鴨のコンフィ 〜ポンムランデーズ添え
Dessert 1品をチョイス
ブラックカラントのタルト 〜ビターチョコレートのジェラート
パルフェ 赤い果実のソース
ラ・フランスのロースト 〜キャラメルジェラート添え
エスプレッソの香りのプディング、モンブラン仕立て
食後にはチョコレートケーキ(violette風)とエスプレッソをシングルで注文した。チョコレートケーキは甘すぎず、しっとりとした食感。何よりもうれしかったのはきめこまかくホイップされたたっぷりの生クリームに付けて食べる瞬間だった。メニューにエスプレッソのシングルとダブルが載っていることに、常々本格的なお店の証拠だと思っている。前菜・一品料理・パスタ・ワイン・カクテル・スイーツ・エスプレッソなどレストラン呼んでも差し支えないくらい揃っており、代々木公園でフランス気分に浸れること間違いなしだ。ただし、スタイリストさんが店の中を闊歩するのがマイナスポイントだ。美容院併設なのである程度は仕方がないのだが、出来れば別の通路を作った方が店の雰囲気は保たれるのになあ。