紫野にある大徳寺の近くにある銭湯藤の森湯を改装した、カフェや雑貨屋の入った離楽庵WOOD−INNの一階の左側にさらさ西陣はある。場所的には大徳寺に近いのだが、これといった目標物がない商店街の中にあるので辿り着くのが難しい。千本通りの鞍馬口のバス停で下車して、鞍馬口通りを千本通りから入り、智恵光院通り越えた東側にあると説明した方が分かり易い。地元の人向けには鞍馬口通智恵光院東入ルという記述が妥当だろう。鞍馬口通りにはもう一軒露天風呂も備えた銭湯船岡温泉があり、藤の森湯はあまりに距離が近すぎた為に入浴者数の減少に屈して、廃業を余儀なくされた。この歴史ある建物の外観や内装を再利用することが出来たのは、立派な唐破風の入り口とレトロモダンなタイルによる所が大きいと思われる。
一見すると銭湯か神社にしか見えないこの建物の中にカフェが作られたこと自体に、京都人ならではのテイストが溢れている。入って右側がショップで左側がカフェ&レストラン「さらさ西陣」になっている。左側にカウンター席があり、短い階段を登るとかつて浴室であった広々とした空間が広がっていた。男湯と女湯を隔てていた壁は通路を設ける為に一部切り欠かれていて、うまい具合に利用されている。手前のテーブルにはなぜかレトロな地球儀が置かれていて、とても魅力的に感じたので、そこに座ることにする。上を見ると古い銭湯によくある明かり取りと換気を兼ねた窓がある。それよりもこの店の居心地の良さを決定的にしているのが壁のタイル!元の銭湯のものをそのまま使っているとのことで、緑と茶色を主体としたエキゾチックな色合いが大変印象的。トイレも元浴室同様レトロでかわいらしかったので、思わず長居してみたくなってしまう程だった。テーブル席はテーブル、椅子、ソファがビッグサイズで、かなりゆったりとした気分でくつろげる。
メニューを見て品数のあまりの多さに驚いた。もっとも昼はランチセット目当ての客が引きも切らない。その質、量ともカフェの範疇で語るにはあまりにも素晴らしい内容との評判が高い。注文したランチセットが出て来て、そのボリュームでさらに食後のコーヒーまで付いて採算取れるの?と首をかしげたくなるような安価な値段設定に、人気の秘密があるようだ。ちなみに注文したのはこの日のBランチ「豚とタケノコのトーチ味噌煮」、840円也。ごはん、サラダ、スープ、香の物、コーヒーor紅茶がついて、ボリュームたっぷりでなかなか美味しい。ややもするとカフェのごはんは男性には物足りなかったりするものだが、ごはんのお代わりが出来るのでなんとも定食屋感覚の太っ腹だ。カフェ&レストとの名前にたがわず食べ物のメニューが多く、アルコールは何でも揃っていそうな感じ。今度来る時は夕方に大徳寺でまったりしてから、17時で夜のメニューに変わってから是非訪れてみたい所だと思う。店員のお姉さんも美人で、笑顔を絶やさず、てきぱきとした接客態度もすこぶる好感が持てた。ソフト、ハードとも洛北のカフェでは名店と呼ぶにふさわしい存在である。