子供に優しい絵本カフェ「ペンネンネネム」は、偶然にも現在守り神としている晴明神社の近くにあった。この店のある一条大宮界隈はその昔京都の中心地であった所で、このあたりから西陣一帯にかけて古い町屋が数多く残っている。わら天神、平野神社、老松、北野天満宮、とようけ茶屋、TO−FU CAFE FUJINOと巡り神社巡りとお菓子を購入した後で北野天満宮前から今出川大宮までバスに乗りLe Petit Mecにたどりついたものの息子はすっかり眠り込んでしまい、喫茶スペースは満席。大宮通りを南下して途中水野克比古さんの町屋博物館を一瞥しながら歩いていくと、建物の裏手にひっそりと「ペンネンネネム」はあった。
ここはカフェのサイトでお世話になっている京都のるんこさんのおすすめなのですが、秘密にしておきたいカフェというのが実際に行ってみた実感だった。昔懐かしい昭和の雰囲気が残るような町屋を利用しており、40年くらい前に使われていたナショナルのアイロンなどが店の奥の台所の片隅にあった。店内はぬいぐるみや絵本などが博物館のようにセンス良く並べてあって若い女性や子供にいかにも受けそうな優しい空間となっている。宮沢賢治のペンネンネンネンネン・ネネムの伝記が店の名前の由来となっているのだが、店の奥に宮沢賢治の文章が掲げられてあったのが印象的だった。座り心地の良いソファや絵本や雑誌に囲まれてまどろんでいるとカフェにいるというよりも知り合いのお家にお呼ばれしたような錯覚を感じた。息子もこのまったりとしたゆるい雰囲気がすっかり気に入ってしまって手当たり次第に棚の本や置物をいじくりまわして神経質そうな店主さんが気を揉んでいたようで申し訳ございませんでした。
食事はペンネンネネムでカリビアンと名づけられたランチプレート(タコライス・タコス(ソーセージ&アボガド)・ペッパーポットスープ・トルティーアチップス・カシスヨーグルト)、マンマのパスタ、飲み物はアイスカフェオレとカフェフロートを注文した。タコスやパスタが思いの外美味しくここは食事を兼ねてゆっくりするのがいいかもしれない。東京だったらこのような膨大な絵本の在庫があったら商業ベースに乗せて博物館みたいにしてお金をとる施設に仕立て上げてしまうのだろうが、このお店に関してはオーナーが趣味みたいに絵本カフェとして営業しているところに好感が持てた。この店を訪れる前日に偶然にもこの店の公式サイトのトップ絵で使われている画像が水野克比古さんの娘さんの水野歌夕さんの撮影した写真集「京の路地風景」の表紙絵と同じであることを知って帰って来てから早速彼女の写真集を取り寄せた。気が付いたら余裕で1、2時間は居座ってしまいそうな居心地のよさがこのカフェの素晴らしさかもしれない。