京阪の四条駅(地下)から階段を上ると、鴨川の対岸に異質な空間が広がっている。窓の大きなコンクリートのビルの中にオレンジ色の椅子が目に飛び込んでくる。これほどインパクトのあるカフェであれば、初めて来る人も対岸から見つけるのは簡単である。このカフェの存在を知ったのは、熱烈なファンであり、自分のHPでも応援している倉木麻衣さんに関係している。2001年の夏に発行されたJ*GMという音楽雑誌に彼女が特集で取り上げられたのだが、その時のコンセプトが京都であり、別のアーティストの撮影の場所に「efish」が取り上げられていたのである。旅行前から気になっていろいろ調べる内に、ここはとんでもなくハイセンスなカフェだということに気づいた。このカフェの存在がこのコンテンツの発足のきっかけになったと言っても過言ではない。
入り口側のもう一本の川に面した通りから店を覗いても、何の店であるかすぐには分からない。店のシンボルとも言えるオレンジ色の椅子と、魚をイメージした「efish」の看板があるのみだ。別に食べ物や飲み物が特別美味しいという訳ではない。実際に行って見てもらうと分かるのだが、カフェの域を越えた最先端のショールームといった雰囲気で、鴨川に向かって展望が開けているのが最大のセールスポイントだ。すぐ南に位置する花街「五條楽園」に金魚鉢を置いていることにヒントを得て、この店は建物を金魚鉢に見立て、1階のオレンジ色の椅子を金魚に見立てている。さらに驚くべきことに実際に大きな水槽が設置してあり、観賞用の魚が 訪れる人の目を楽しませている。「efish」という店の名前も「五條楽園」に由来がある。一条通りをAとして五条通りはEにあたる。「efish」は、営業中の看板がわりに金魚のいる水槽を店先においている「五条楽園」の遊郭にちなんでいる。
決して飲み物や食べ物は美味しいとは言い難いが、しかしこの雰囲気に身を置いているとそんなことはどうでも良くなってしまう。ここはあくまでも雰囲気が全ての店である。窓から鴨川の流れを眺めているだけで幸せな気分に浸れること請け合い無しだ。マガジンラックから何冊かの本や雑誌を持ってきて、しばらく読み耽ける。眺めていると「京都カフェ案内」という本の巻頭でこの店のことが紹介されている。本を読み終えて、店内をつぶさに観察して回る。2階にはバーカウンターとテーブルがあり、こちらは満席状態であった。食器やアクセサリーのみならず、旅行トランク、ソファ果てはバスルームまで展示してあり、なかなか面白い。従業員の接客マナーが素晴らしく丁寧で、決してマニュアル通りではなく心がこもっている。混み合っていても笑顔を絶やさないあたりにも人気の秘密がうかがえる。
取材年月日 2001年12月1日
河原町五条のバス停から歩いて行くと、店の前の小川の対岸には店名の由来になった花街「五條楽園」のネオンが目に付いた。約一年振りに訪れてみて、店のシンボル的な存在だったオレンジ色のスポンジ素材のソファが新しいものに替わっていた。訪れた時すでに老朽化してかなり痛んでいたのでいたし方ないのであろう。だがしかし、efishと言えばあのオレンジのスポンジソファが鴨川の対岸からもよく見えるイメージが強いので残念だ。2Fへ上がって行くとイメージキャラクターの黒猫が出迎えてくれる。しかもその後ろには笹の葉の初戎の飾りが置いてある。今回は2Fのバーで少し飲んでみた。その名も楽園というカクテルを頼んだのだが、味は今ひとつだった。くどいようだが、この店に味を要求すること自体意味がない。この店自体がアミューズメントパークであり、雰囲気を楽しみ、語らうのが主である。座った席が悪く音楽が少々うるさく感じた。先程行ったSinamoとはその辺の配慮が決定的に異なっている。照明を落とした2Fの奥の雰囲気は抜群だったが、テーブルがぐらぐらするのも残念だった。次回は1Fの水槽の前の席が空いていたので水槽と夜景を見ながらお茶を飲んでみたい。
取材年月日 2003年1月12日