仕事で沖縄へ行くことになったまぶりん麻呂。は、心の奥底で密かに喜んでいた。何故って沖縄に出来たモノレール「ゆいレール」に乗る絶好の機会が到来したからである。沖縄滞在は3日間あるので乗り潰す機会は必ずやあると思っていたら、あっさりと2日目の昼間にまとまった時間がとれたのでモノレールで首里城へ行くことにした。壺川駅から那覇空港へ向かい折り返しの便の運転士は見習の新人さんだった。指導しているのは若いお姉さんではないですか!戦後鉄道のなかった沖縄では、運転経験のある人はいる筈がないのでかぶりつきの展望シートに座りながら心の中で密かに応援していた。とか言いながらお姉さんの方ばかり見ていたのは誰だ(笑)
首里城へ行く道すがらに茶房を掲げている、雰囲気の良さそうな店を見つける。それが、この琉球茶房あしびうなぁであった。掲げてある説明書きを見ると琉球王国時代にあった美里御殿(注)の跡地だということだ。まだ営業時間前だったので首里城見物の帰りに立ち寄ることにする。
お店というより個人の住居を茶房に使っているという感じの玄関を入ると、そこには泡盛の古酒の甕がずらりと並んでいるではないか!これはただものではない店かも?と思い、襟を正させる気分で店内の廊下を奥に進んでいく。母屋側にはいくつかに区切られた畳敷きの部屋が並び、後から建て増しされたと思われる廊下側にはいにしえの琉球王国時代の御殿を偲ばせる素敵な庭園が広がっている。庭園を見下ろすようにテーブルが並べられているので、カップルで食事をしたりお茶をするにはこちらがおすすめ。 逆L字になった中央部分の庭を見渡す絶好の位置に陣取るが、しばらくして奥の座敷にいた中年のカップルが廊下の方に移動してきて隣に座った男性がタバコを吸っているのには閉口した。食事をしている時以外はずーとタバコをくゆらせていたので、いい気分が台無しになってしまった。日本の飲食店において全面禁煙というのは、売上が減少するのではという店側の危惧の上にほとんど成り立たないというのが実態と言えよう。隣に男性が来るまでは、庭を見下ろす席についた途端食事や飲み物が来る前に五つ★をつけるつもりだったのだが、残念なことだった。
気分を取り直して庭の撮影をしているとBGMがかかっているのが気になった。いにしえの琉球王国時代の雰囲気にひたろうと思っていたのだが、風鈴の音ぐらいがこの場の雰囲気に合っているのでは?と思ってしまった。非常に辛口な論調になってしまったが、裏を返せばこれだけ気に入ったカフェは久しぶりだからだ。伝統的な民族文化を色濃く感じさせる店を好む傾向があるのだが、この店は首里城の参道にある美里御殿跡という立地条件、歴史的背景ともに非の打ち所がないだけに今後の店の発展を期待してやまない。
前置きが非常に長くなったが、注文したのはソーキ汁定食とシークワーサージュース。ソーキ汁はけんちん汁の具の肉が骨付きの豚肉になった感じだが、これがすこぶる美味しかった。メニューには他にも沖縄そば、てびち煮付定食などの郷土料理が並び、フードメニューは充実していた。夜は泡盛を片手に手軽に沖縄料理が楽しめるそうだが、予約制という噂もある夜のあしびいうなぁの外観を一目見ようとライトアップされた首里城や守礼の門を見た後に寄ってみると、昼とはまた違った幻想的な雰囲気だった。
ランチタイム、ティータイム、ディナータイムといつ訪れても満足度の高そうなカフェだが、首里城とセットで訪れる(当たり前のことですが)のをおすすめします。最寄駅は沖縄モノレールの首里駅だが、この店の前の道をまっすぐ下っていくと儀保駅に行くことも出来ます。途中、いかにも風情のある昔懐かしい鄙びた食堂や、首里城に献上していたちんすこうの老舗のお店があったり、時間に余裕がある方は帰路に散策しながら儀保駅までの坂道(逆行程だと急坂があるので少々難儀です)を行くのが通な旅行者というものかもしれません。
(注)店の前に掲げてあった説明書きを引用
尚寧王の時代十七世紀以降、首里城の北側当蔵には、八つの御殿が集中していました。御殿とは、一間切りを領有し、王府の政治機構の中でも重鎮された特権階級であり、御殿親国と呼ばれた階層です。その一つ美里御殿は、当時の三士官の住居屋敷跡でありましたが、庭園の一角を残し第二次世界大戦で焼失してしまいました。ここ「あしびうなぁ」は美里御殿跡に建物と王朝時代の風雅な琉球庭園を再現しております。どうぞ、静かに流れるひとときをごゆっくりとご堪能下さい。