外交官の家は、ニューヨーク総領事やトルコ特命全権大使などをつとめた明治政府の外交官内田定槌氏の邸宅として、東京渋谷の南平台に明治43(1910)年に建てられました。
設計者はアメリカ人で立教大学の教師として来日、その後建築家として活躍したJ.M.ガーディナーです。旧内田邸は、海外暮らしが長かった定槌氏の意向を反映して、当時の日本人住宅としては珍しく徹底した洋風化が図られました。建物は木造2階建てで塔屋がつき、天然スレート葺きの屋根、下見板張りの外壁で、華やかな装飾が特徴のアメリカン・ヴィクトリアンの影響を色濃く残しています。室内は1階に食堂や大小の客間など重厚な部屋が、2階には寝室や書斎など生活感のあふれる部屋が並んでいます。これらの部屋の家具や装飾にはアール・ヌーボーの意匠とともに、アーツ・アンド・クラフツ(19世紀イギリスで展開されたに美術工芸の改革運動)のアメリカにおける影響も見られます。
平成9(1997)年に横浜市は、内田定槌氏の孫にあたる宮入氏からこの館の寄贈を受け、山手イタリア山庭園に移築復元され、一般公開しました。そして同年、国の重要文化財に指定されました。室内は家具や調度類が再現され、当時の外交官の暮らしを体験できるようになっています。各展示室では、建物の特徴やガーディナーの作品、外交官の暮らし等についての資料を展示しています。また、付属棟には、喫茶室が設けられています。
[記事引用 横浜山手西洋館のリーフレット]