通いつめるほど好きになるほどの価値のある温泉は、草津温泉や鳴子温泉を除くとこの山口温泉だけである。このところご無沙汰しているが、ネットを通して温泉に興味を持ち始めた頃に知ったこの温泉との付き合いは長い。住宅地の中にある温泉の為宿泊が出来ない為、残念ながら二番目に好きな温泉となっているこの温泉は、心の故郷のような存在だ。休憩室と個室のある二階からは富士山と八ヶ岳が望め、住宅地の中にありながら雄大な気分にさせられる。この温泉が好きな理由は素晴らしい温泉であるのは言うまでもないが、経営者である山口さんの魅力にもある。第一印象は少々強面でとっつきにくいが、常連さんでも一見さんでも変わらない気さくな接客態度と気配りには感心させられる。山口さんの人望からか温泉ファンのオフミの会場として山口温泉が使われることが多いのも事実である。二階でくつろいでいると田舎の親戚の家に来たような感覚をいつも抱いている。
1987年にぶどう畑を掘っていたら湧いた温泉は、地下920mから自噴している。毎分686リットルと湯量も豊富で、内湯・露天ともに非加熱の掛け流しとなっている。温泉ファンの口コミで評判の高いこの温泉は一言で言うと「アワアワ、ヌルヌルの温めのお湯」である。内湯では体感であるが37度くらい、露天では36度くらいの温めの湯である為、1時間でも2時間でもゆっくり入っていられるのがうれしい。この温泉の湯量の豊富さは、内湯の竜の形をした湯口の所から滝のように流れ落ちるお湯を浴びると実感出来る。やや黄色がかったお湯は遠めにはやや濁っているように見えるが、これには訳がある。遊離二酸化炭素が48mgしかないのだが、非加熱の源泉をそのまま使っているので湯には無数の細かい泡が発生している。湯口の延長線上にある場所では、発生した無数の細かい泡が溜まって白濁したように見えるのである。
臭いは金気臭と微かな硫黄臭。味は金気味。飲泉すると消化器官にやさしくお通じが良くなる。源泉はペットボトルで無料で持ち帰ることも出来る。源泉をそのまま飲むよりも、冷やして飲むと金気臭が消え飲みやすくなる為持ち帰る常連客も多い。ご飯を炊いたり、湯豆腐にしたり、焼酎の割り水ににしたりと持ち帰った後の楽しみも様々だ。特に湯豆腐にするとタレがなくてもそのままで食べられるほど不思議と旨みが出てくるのでおすすめだ。豆腐の成分と温泉の成分が反応して旨みが出てくるのだろうが、実にありがたいお湯である。
車の場合、甲府昭和ICで降り国道20号線甲府バイパスの「山縣神社北」交差点を南に折れ、山縣神社の先を左折し道なりに行くと大きな案内の看板が出迎えてくれる。アルペンの所を南に折れる行き方が最短ルートだが、山口温泉の手前にV字の急カーブがあり、分かりづらいのでおすすめしない。電車の場合、竜王駅からタクシーを利用するのがよい。所要時間は7〜8分、料金は1000円くらい。ちなみに徒歩だと約30分ほどかかるので、滞在時間を1時間削ってまで歩いていくのは正直おすすめしない。甲府駅南口バス乗り場から「平岡」または「鰍沢営業所」行きに乗車し、「榎郵便局」で下車し7分くらい歩くという手もある。徒歩の場合住宅地のまっただ中にある温泉なので、道に迷って辿り着けない可能性が高いので要注意だ。
山口さんは「日本秘湯に入る会」の会員であり、番頭さんというHNとして親しまれている。受付で「日本秘湯に入る会」の会員であることを申告すると入浴料金を割引にしてくれる。二回の休憩室や個室を利用して一日中滞在する常連客に対しては、食べ物飲み物持ち込み無料で、自由に使える冷蔵庫と電子レンジがあるのが太っ腹である。以前は丼物やラーメンなどの出前の取次ぎを行っていたが、現在は取りやめている模様。重ね重ね宿泊することが出来ないのが残念であるが、近場の温泉付のホテルに宿泊してプチ湯治をするにはこれほど居心地の良い温泉は日本全国を探してもそうそう見つかるものではない!