河口湖畔の紅葉はちょうど見頃で、紅葉祭りの会場で軽い昼食を済ませた後、今回のメインとも言える「霊峰の湯」に向かった。ここは河口湖に4つある湖畔の湯の中で一番泉温が低いものの、非加熱の源泉掛け流しが味わえるとあって最高の評価が与えられている。建物の外側には無料の足湯が設置されているが、あまり必要性を感じられない。夏場になればそれなりの需要があるのかもしれないが、それ以外の季節は泉温が低いので常にお湯を供給しているかどうかは不明だ。壁の注意書きには湯の花が出ることもあるとのことで、入浴前から期待が持てそうなお湯である。男湯には42度の加熱循環のお湯と源泉である33.7度の非加熱掛け流しのお湯がある。女湯にはこの他に源泉と加熱した湯をブレンドした浴槽があるようだ。
非加熱の源泉浴槽は2人くらいでいっぱいになってしまう作りで、源泉の湯量に見合った浴槽の大きさと湯使いをしており好感が持てる。33.7度と42度では結構体感的に温度差があるので交互に入って温冷浴法を楽しむことが出来る。無色透明の湯だが微かに硫化水素?の臭いがして温泉らしさを感じさせる。浴室は、石と木を組み合わせて作られた最近の共同浴場によく見られるタイプで清潔感が溢れている。狭い浴室だがカランやシャワーも完備しているが、浴槽に泡が入ってしまいそうなので特にシャワーを使用する際は注意されたい。ここはじっくりと温泉を味わうべきで、体や頭を洗うのはやめた方がいいだろう。
観光客は皆無といった感じでひっそりとした感じが他の観光施設と対照的だ。このあたりは秀峰富士の絶景ポイントだが、温泉からは富士山を望むことは出来ない。もし仮に富士山が望めるような作りであったら観光客が押し寄せるかもしれない。一大観光地の河口湖にあってここだけは非常に落ち着いて静かに温泉を楽しめる、観光地の中の秘湯と呼べる貴重な存在だ。驚くべきことにここは管理人不在の時は「ふれあい箱」と書かれた料金箱にお金を入れるようになっている。浴後に休憩出来るカーペット敷きのフリースペースもあってなかなか重宝する。共同浴場のようなシンプルな浴室とおおらかな入浴料金の徴収方式には、一瞬ここが観光地であることを忘れさせてくれる。施設自体がこじんまりしているので大人数で訪れるのは好ましくないが、出来ればあまり人に教えたくないような素晴らしい温泉に久々に出会えた気がした。