松之山温泉と言えば、婿投げが有名である。泉鏡花文学賞を受賞した鉄道紀行作家宮脇俊三先生の鉄道ミステリー小説「殺意の風景」で知り、いつの日か豪雪地帯である松之山温泉を訪れたいと思っていた。小説の中の婿投げは、豪雪地帯の巻(松之山温泉)に書かれている。婿投げとは嫁をもらった婿さんを観音堂から放り投げる習慣。雪があるから大丈夫。歓迎会のおり皆私を抱えあげた。下は除雪されたコンクリートの道!
まつだい駅から宿泊先の凌雲閣の送迎者で着いたら、すぐさま鷹の湯へ向かった。3月のはじめだというのにあたりは雪国の風景が広がる。凌雲閣から松之山の温泉街までは少し距離があり、3歳の息子も初めての雪の風景に興奮気味に楽しんでくれていたようだ。
松之山温泉は南北朝時代に発見される。一羽の鷹が傷を癒しているのを見て、木こりが源泉を発見したとされている。松之山には鷹の湯、庚申の湯、鏡の湯、湯田の湯、じょうもんの湯、湯坂の湯、翠の湯という七つの源泉があるが。まさにその由来となった鷹の名を冠した鷹の湯は絶対に外せない。
内湯は緑がかったわすかに白濁したお湯だが、カルキ臭を感じたので早々に併設された露天へ向かう。階段を下りていくと内湯で感じたカルキ臭は感じられず、その代わり松之山特有の石油臭を感じた。内湯、露天とも循環に差し湯程度のかけ流しなのだろうが、塩素消毒の有無をはっきりと感じられるのは珍しい。
露天では飲泉してみた。凌雲閣の源泉鏡の湯と比べると明らかに鷹の湯の方が苦みを強く感じられた。苦みの成分は何だろうと両者の成分分析表を比べてみたら、カリウムイオン(K+ )の量に違いを発見した。鏡の湯に比べ鷹の湯は三割増しだ。カリウムイオン(K+ )は塩味というよりはほろ苦いような(純粋な塩味と異なる)味を生ずるということらしい。