ここは、草津一の格式と風格を兼ね備えた高級旅館である。立ち寄り入浴は不可であるが、
和風村湯めぐり手形を購入すれば、ここのお湯に入浴する権利を得ることが出来る。
湯めぐり手形を購入したのもここのお湯に是非とも入りたいと思ったと言っても過言ではない。温泉街から外れた国道に面しているので、
正直どんなものだろうと思っていたが、五千坪もの敷地面積があるので国道からはかなり隔たった所に建物は建っている。
すべて木造平屋建てでたった6つの部屋と4つの離れしかない。しかも全部屋に檜風呂付が付いているというので恐れ入る。
まず驚いたのは玄関からフロントを通り、浴室まで受付の男性に案内されたことだ。
自分の経験では日帰り入浴で浴室まで案内されたのは、ここと箱根の某ホテルだけである。
湯めぐり手形を利用しても入浴できるのは午後の2時間だけというのは、宿側としても最大の譲歩だろう。
ひょっとしたらチェックインが14時で、チェックアウトが12時なのかもしれない。
正直言って立ち寄り入浴客を取りたくないというのが本音だろうが、
ここの女将である宮崎正子さんは、草津温泉の女将会「湯の華会」の会長を務めたこともある関係で、
和風村への加入は当然のことと言えよう。
和風村に加盟している宿に泊まり、湯めぐり手形を購入して、街外れの敷居の高い温泉に入らせてもらおうという思うのは、
よほどの温泉好きでなければ実行しないことだ。
立ち寄り入浴での受付での対応如何で、「いつかこの宿に泊まってみよう」と思わせる常連さん予備軍を生み出すということも十分ある。
事によっては温泉そのものよりも従業員や女将さんのサービスや宿の雰囲気を重視する傾向があるのだが、
久々に出会った納得の行く良質なサービスであった。
湯めぐり手形で入浴できるのは、展望風呂「うららの湯」とそれに付属した内湯のみ。
「うららの湯」は緑に囲まれた檜の露天風呂があり四季の表情を眺めながら入浴することが出来る。
お湯は万代鉱のみだと思っていたが、後日調べてみたら万代鉱と湯畑をブレンドしたものだそうで、
万代鉱特有の肌がピリピリする感じがあまりしなかったのはそのせいだろう。
ここの露天風呂は特に眺めがいいという訳ではないのだが、あたりは静寂に包まれており、聞こえるのは鳥のさえずりと浴槽に注がれているお湯の音だけというのが印象的だった。それに比べて、内湯のガラス張りは曇ってしまい外なんか見えやしないのが残念だった。
ガラス張りをとっぱらていっそのこと半露天にしてしまってはどうだろうか?
さもなくば法師温泉の新しい浴舎のように引戸のガラス戸にするというのもいいかもしれない。
公式HPをチェックした所、女性用の内湯は引戸のガラス戸になっているようでした。
環境の良さ、素晴らしい温泉に並んで食事が最もこの宿の売りである。テレビで紹介されるのは、
毎日築地から直送される食材を使った懐石料理と部屋付の檜風呂であって、「うららの湯」の湯の露天風呂は紹介されていないかもしれない。
帰りがけには女将さん直々にお見送りしていただき、ちょっと感激させられた。2000年に草津町制100周年を迎えたのをきっかけに、
女将さん全員集合ポスター作成した時の「湯の華会」会長が宮崎さんだったのだ。
「効能温泉吾妻線」と謳われたキャッチコピーと共に女将さんたちの元気なエネルギーやパワーを表現したポスターは、
非常にインパクトがあってかなりの集客効果を与えたことだろう。
今でもJRの駅に貼られているのでご覧になっていない方は、片道でもいいので吾妻線を利用してポスターをご覧下さい。