新潟秋山郷の入口にある逆巻温泉は中津川の対岸を渡って奥へ分け入った所にある一軒宿。ここまでの道のりは国道とは名ばかりで、所々ではすれ違うのもやっとという場所が多い。こんな道を定期バスが通っていること自体が不思議なくらいだ。宿自体は最近立て替えられた模様で、素朴な感じを期待していたのだが、いい意味で期待を裏切られた。センスの良い近代的で清潔感溢れる宿に生まれ変わっていた。中津川の上の断崖の上に建っているのだが、これには訳がある。温泉が自家湧出なのでその場所に旅館を建てたからである。ここからの眺めはダイナミックだ。一階の部屋を覗いてみると、前が川なのでガラス戸を隔てた向うは手付かずの大自然が広がっている。
名物の洞窟風呂の他に見晴らしの良い展望の湯というのがあるが、他に入浴客がいなかったので、洞窟風呂を2人で貸切にしてくれた。展望の湯は後から増設したものだろう。こちらは一転して眺めが良く明るい感じの浴室だ。洞窟風呂は岩の間から自噴している温泉をそのまま使っているのだが、なぜか時々熱いお湯が出て来る。泉温が42.1℃なので、恐らく浴用に加熱しているのであろう。窓を開けるとボイラーが唸りを上げており、重油の臭いが漂ってくる。理想を言えば源泉浴槽と加熱浴槽を分けてもらいたい。湧出量がさほど多そうではなさそうなので、それはちょっと無理かもしれない。洞窟は天然のサウナ効果が得られ、こもった蒸気で浴室全体が暖かいので特に冬には良さそうだ。
応対に出たのは若いお兄さんだったのだが、たいへん接客マナーに優れており、今度泊まってみようかと思わせるほどだった。宿の日帰り入浴でいつも思うのだが、応対に出る人の態度でその宿の第一印象がほぼ決まってしまうので、(仮に入れなくても)良かったと思う宿にはいつかは泊まってみたいと思う。