ここは屋代さんがHPを管理している宿である。
夜8時過ぎであったにもかかわらず、貸切の内湯に入らせていただくことが出来た。
貸切湯が使用中だったので、入らせていただく時間待ちの間にロビーで宿のご主人のお話をうかがう。
特にこの旅館のお湯は温度管理が大変だそうだ。
源泉の湯温が日によって10℃くらいの温度変化があるということで、ご主人の苦労話は尽きない。
また、ここのお湯は一見平凡な無色透明なのだが、日によって白濁したり、紫がかった色になるそうで神秘的なお湯である。
そうこうしている内に、貸切湯が空いたので、私は貸切湯へ向かう。
丁度大浴場が女性専用タイムだとのことで、ちえりんは階上の大浴場へ向かう。
貸切湯はかつて男女別の浴室として使っていたのであろうか。予想以上に広いのはそのせいであろう。
お湯は浴室の片隅からちょろちょろとしか出ていないが、もちろん掛け流しだ。
これが、ご主人のおっしゃっていた温度管理の難しさだ。
大量の源泉を投入しながら同時に加水するのと、湯量を絞るのと温度管理の方法は2通りある。
なにせ源泉の湯温が60℃くらいなのだから、熱いと感じたお客さんが大量に加水してしまうことも多々あるそうだ。
嬉しいのは浴槽の底に黒い大きめの丸い石が敷かれていることだ。
なんとなく熊本の奴留湯を思わせ、足裏に絶妙な刺激が加わって具合がよろしい。
実はこの石は、東京駅のスレートに使われているのと同じ宮城県登米産の石だそうだ。ヘビーな湯が多い鳴子にあって食塩泉を求める向きは少ないだろうが、ここは入ってみると分かるのだが実に落ち着いた気分になれる。大浴場からあがって来たちえりん曰く、お湯の色がなんと白濁した紫色だった。
丁度女性専用タイムが終わったそうなので、階上の大浴場へ急いで撮影だけしておいた。
ちなみにこの宿は高松宮さまが泊まられた宿ということで、流石にセンスが良くお湯も良い。
鳴子で安心して人に薦めることの出来る数少ない存在だ。
特に大人数での利用の場合、和室の続き部屋があるので心強い。
宮さまの泊まられた部屋は常連さんのリクエストが多いらしく、次回は是非泊まってみたいものだ。
取材年月日 2002年9月14日
2歳9ヶ月の息子を連れて久々に鳴子の湯巡りをするにあたって宿泊先として真っ先に思いついたのが、この旅館すがわらだった。
無料で貸切に出来る家族風呂・部屋食・緻密な湯温管理のされた温泉・格式ある和風の旅館などあげればきりがない。
しかし一番の決め手になったのは食塩泉という誰にでも入りやすい泉質であった。
他にもいくつか候補はあったのだが、ヘビーな泉質、高すぎる湯温、浴室にカランやシャワーがないことで却下された。
川渡の沼倉旅館あたりもよいのだが、子連れの湯巡りの場合飲食店や土産物屋が適当にないと困る。
ある程度栄えている温泉街にあって、湯温が温めな宿泊施設というのはなかなか無理な注文だ。
だいたいにあおいて温泉街が発達しているような場合は、総じて湯温が高いのが一般的だ。
そこで狙い目なのは自家源泉を持つ宿や湯温管理が行き届いた宿だ。
夜更けに目を覚まし大浴場に併設されている露天風呂に向かった。
半円を描いた形で石組みにもなかなか趣を凝らした本格的な露天風呂で、ここはかなり気に入った。
ふと空を見上げると朧月夜が雲の切れ間から見え隠れしている。
こういう瞬間というのはなかなか温泉巡りをしていても出会ったことが無かったので、ちょっと感動した。
しかしながら、この露天風呂はをとりまく環境には首をかしげてしまいたくなる。
コンクリート打ちっぱなしの大浴場の壁面は何とかならないのだろうか?
時々和風旅館にはありがちな斬新なデザインというのはいいのだが、あまりにも風情の面でマイナスになっている。
壁面を竹などの自然素材で覆うなどの配慮がされても良かったのではないだろうか?
露天風呂が素晴らしい分大浴場の外観が残念でならない。
敷地内に豊富な自家源泉を持つこの宿にはきっと宿泊者専用の浴室があるに違いないと想像して、宿泊した翌日の早朝に館内をくまなく探索してみた。
ほとんど使われていないと思しき薄暗い1階の客室棟を歩いていると、不意に浴室という矢印で示された案内書きを見つけた。
どんどん階段を上って行くと果たして小ぶりな内湯と、後から増設した真新しい半露天風呂があるではないか!
半露天風呂の付近からはこの宿の湯元となっていると思われる源泉があるらしく、パイプ類が縦横無尽に張り巡らされている。
内湯のお湯は今ひとつのコンディションだったが、半露天風呂はさすがに一番湯元に近いだけにフレッシュな感じがした。
結局朝食の時間になるまで1時間近くずーっとこの湯に出たり入ったりを繰り返していた。実はこの宿泊者専用の半露天風呂からは、陸羽東線の気動車がチラ見出来るという特典が付いていることが一番のポイントである。
高松宮様の泊まられた温泉旅館というのを探し当てて泊まるというのが、最近何となく自分の中でライフワークと化して来ている気がする。
宮様の温泉旅館を選ぶ基準というのは以下の通りではないだろうか?
自分勝手に思いついたのを並べてみた。
1.源泉掛け流しの温泉
2.湯量豊富な自家源泉を持つこと
3.建物の外観や内部の装飾に意匠をこらしてあること
4.歴史のある古い建物であること
5.食事の質が高く洗練されていること
6.色鮮やかで目にも美しい食器に食事が盛られていること
宮様というと高貴で近寄りがたい感じがするのですが風流な温泉の達人とでも言いましょうか、温泉巡りの上で自分の目指している人物のひとりです。
取材年月日 2006年9月14日〜16日