鳴子の硫黄泉と言えば、駅に近い滝の湯が有名だが、ことお湯の質ではこちらの方が上回るとの噂がある。
こちらは、川渡温泉における藤島旅館と同じような位置付けにある宿で、共同湯的存在で開放されている。
ここの硫黄泉は酸性なのだが、すぐ隣の西多賀旅館のお湯はアルカリ性である。
屋代さんの解説によると、東多賀と西多賀では使用している湯脈が違う為だからだそうだ。
このことは、これほど狭い地域に様々な泉質のお湯が存在する鳴子一帯を最も象徴的に物語っている。
旅館すがわらの食塩泉でまったりして一旦小休止状態だったが、宿の廊下を歩いて浴室へ向かうと硫黄の臭いが出迎えてくれて
硫黄泉好きにとっては笑いが止まらない状態になる。
木造りの浴槽、スノコ、白熱電球のスポットライトとまるで共同浴場に入り込んだのかと錯覚を感じる。
滝の湯とは比べ物にならないくらい小さい浴室と浴槽だが、同じ硫黄泉でもこちらの方が濃厚な感じだ。
白い湯の花は感知出来ず、東川原湯のさらに濃厚な湯に比べるといくらかあっさりとしたお湯ではあるが、硫化水素臭の強烈な臭いはもしかしたら鳴子一かもしれない、まさに鳴子を代表する硫黄泉と言える。実際帰りがけの朝にここと滝の湯をはしごしたのだが、帰ってきてしばらく強烈な臭いは体にこびり付いてなかなか取れなかった。
こじんまりとしたシンプルなお湯は、源泉が45℃という適温で湧いていることと相まってじっくり長湯をするにはぴったりである。
滝の湯が観光客用の共同浴場であるのに対し、こちらは地元住民用の共同浴場的な存在かと思われる。
塩ビのパイプが浴槽の上にいくつも口を開けて並んでいたのは、ガス抜きだそうで隣の西多賀旅館でも見られた。
この旅館の前にはスーパーがあるので湯治にはまことに都合のいい立地条件である。