かつて国指定の文化財に指定された古い共同浴場であったが、数年前にヒバ造りの立派な建物にリニューアルされた。
新しいものが駄目だと否定する向きもあるが、ここは新しく生まれ変わってからは一般の入浴客も受け入れており、
外観、内部とも観光客受けしそうな万人向けの入りやすいお湯になったと思う。
ヒバの強烈な香りが温泉の雰囲気を損なっている嫌いがなくはないが、
これはこれで10年くらい経ったらものすごくいい雰囲気のお湯になることは間違いないと断言しておこう。
到着した時は、丁度外来入浴の方が入られたばかりなので、屋代さんの案内で母屋の方へ向かう。
こちらの母屋も指定文化財であり、個人の住宅としては確かに不釣合いなほど大きく立派な造りだ。
広間でお茶や食べたこともない山菜などをいただく。こういう触れ合いは通りすがりの旅人にとって嬉しい限りだ。
しばらくして源泉の場所へ連れて行ってもらう。見ると洗い場用に使われているという余ったお湯がざんざん流れている。
もったいないなあと思いながら庭の共同浴場へ向かう。
外観からは想像出来ないが、共同湯として坪単価はかなり高くなっているものと思われます。
中を見ると大理石が敷かれており、梁も物凄く太くて立派なヒバ材で、共同浴場としては破格の豪華な造りだ。
何せ混浴で三方に窓が開け放たれているので、恐らく入らないと思っていたちえりんも感激して一緒に入ることにした。
服を脱ぐのももどかしく入ろうとすると、ちょっと熱いので桶でしばらくかき混ぜて、掛け湯をして入る。
茶色がかったお湯の中から非常に細かい泡が絶えず湧き出しており、
湯の表面付近を観察してみると、泡が気化して空気中にミストとして飛び出している。
光線の当たり具合が良かったせいもあるが、これほどの炭酸の濃度が高いお湯はめったにないと思う。
ヒバの香りに包まれて、柔らかな日差しの下ゆったりした気分で気持ち良く入浴することが出来た。泉質的に高温の泡付きの炭酸泉ということで珍しいのだが、泉質云々以前に建物が醸し出す居心地の良さもあいまって、
入っていて笑いの止まらないお湯とでも表現しておこう。