ここは幾多の温泉の達人がチャレンジしていますが、たどり着けなかったり、たどり着けても施錠されていたりして、
何人も玉砕したと聞いてます。限りなく地元専用に近い(というか一般には知られておらず、余程の温泉好きでないとすすめられない)が、
料金を払えば外部者の入浴を認めているので、チャレンジしてみた。
この温泉の場所やアプローチに関しては、ある方よりメールで詳しく教えていただいていたので、途中まではすんなり行けた。
しかし、最後の詰めの所で肝心の温泉らしき建物が見つからない。
低い場所にあり、なおかつ木立や建物の陰になっており、探し出すのは至難の業であろう。
しかし、私以上に詳細な情報を得ていたと思われるRさんは、すたすた歩いていき、難なく見つけてしまった。
噂どおり掘建て小屋で、これぞ秘湯中の秘湯と呼ぶにふさわしい風格すら漂っている。
中に入ると下駄箱があり、女湯の方はしっかりした扉があったが、男湯の脱衣場との境方はなんとカーテンである。
七里田温泉の下湯を思わせる鄙びた雰囲気で、服を脱ぐ手が武者震いしてきそうだ。
中は意外と広く、浴槽は5人くらい同時にはいれそうだ。総木造りで、まさに昔ながらの(そんなに古くはないが)
温泉を具現化している!惜しむらくは湯口から出て来るお湯がすぐに浴槽の縁から溢れ出してしまっていることだ。
何が惜しいかと言うと、炭酸ガスの泡の付きが驚くほど良いのである。
女湯の画像を見て初めて分かったのだが、女湯では湯口は浴槽の縁から遠いので、すぐに溢れ出してしまう
ということはなさそうだ。
温めで泡付きで、この雰囲気だったら何時間でも入っていたい気がしたが、そうも行かないので早々に立ち去る。
浴室で一緒になったおじさんに「もう出るのか?」と驚かれ、Rさんは「電車の時間があるので」と説明する。
Rさん自身も、ここにはもう少し浸かっていたいという気持ちが表情から現れていた。
Rさんも私もお互い無口な方で、お互いあまり会話を交わさなかったが、
私に向かって「明日の朝また入りに来れば?」と問い掛けてくれたことからも、彼がここをかなり気に入ったことが分かった。
早めに上がったので、女性陣はまだ出てこなかったので、建物の周りを一周してみる。
しみじみ眺めてみると、国道に近いとは言え、あまりに周囲から隔絶された場所にぽつんとあるので、
仮に発見したとしてもここが温泉であると分からない。ぱっと見はありふれた物置と言った感じである。
翌朝列車に乗る前に宿の車で平治温泉へ連れていってもらうことにした。
平治温泉は、地元の人でも存在は知っていても入ったことがある人は少ないらしく、
連れて行ってもらうこちらが詳しい場所を説明する有様だ。
昨日浴室で一緒になったおじさんによると、営業時間は一応午前10時からということになっているが、
管理人が気まぐれなのか、時々施錠されたままになっていることがあるとのことだ。
10時ちょっと過ぎに到着し、扉を開けてみるとすんなり開いた。今日こそゆっくりこの温泉を独り占めにすることが出来ると、
思わずにんまりしてしまう。プレハブ仮設の温泉で中が木造の浴室と浴槽というのは大変珍しい。
相変わらず泡の付きが素晴らしく、浴槽の縁に頭を乗せて、ぼーっとしているとあっという間に時間が過ぎてしまった。
温泉巡りをしていると誰にも教えたくないくらい素晴らしい名湯に出会うことが稀にある。
ここはそうした温泉の中でも、ロケーションの意外さ、外観と浴室の雰囲気、特徴のあるお湯とどれをとっても一級品である。対岸のはるか彼方の上の方へ温泉のパイプが伸びているので気になって調べた所、ここのお湯を引湯している温泉民宿がある
ことが判明した。
なお画像につきましては、PCのクラッシュに伴うデータの損失に伴い永らく公開できませんでしたが、聖婆様の提供により公開できましたことをこの場をお借りしてお礼申し上げます。