半出来温泉 登喜和荘は吾妻線の袋倉駅とは川を挟んだ位置にあるが、木やトンネルが邪魔になって列車からは見ることは出来ない。
国道145号線には大きな看板が連続するカーブの間に見えてくるので、車道から見つけるのは至極簡単である。
面白い名前だが、決して温泉が未完成なのではない。地名が半出来であり、農作物の生育が悪いことから付けられたそうだ。
時計を見ると、Rさんのタイムリミット(万座・鹿沢口発16時20分の新特急草津8号)までそれほど時間は残っていない。
折りしも雷が轟音を立て始め、今にも一雨降ってきそうだ。
ここは以前から憧れの温泉で、自分としては、じっくり時間を掛けて湯巡りがしたいのだが、温泉を目の前にして入らない手はないので、
からすの行水でも良いのでRさんと一緒に入る。
ここは、混浴の露天風呂が有名であるが、浴室を出て50メートルあまり素っ裸で歩かされるので女性陣はさすがに回避した。
旅館と言うよりも民宿の風情であり、一浴を申し出ると飾りっ気のないおばさんが応対に出てきた。
ゆっくりしている暇がないので、二人とも自然と早足で浴室へ向かう。内湯は後回しにして、肝心の露天へ向かう。
コンクリートの床が滑りやすく、思わず転びそうになりながら庭先へダッシュする。
どうしてこんなに離れているんだろうと思う。普通の旅館だったら絶対服を着替えて行く距離である。
しかし、露天の黄色がかった温めのお湯に浸かると幸せな気分になった。
こちらが源泉に近いのだろう、泡のつきがすこぶる良い。周りには人工物がほとんどなく、あるのは対岸の袋倉駅に渡る橋しか見えない。川面を渡って吹いてくる風が心地良く感じられる素朴な混浴露天風呂で、
いつまでも入っていたい気がした。味噌樽を使った一人用の樽風呂が併設されている。
これはいい!この樽風呂にだけ入りに来る価値は十分ある。
かなり温めの露天風呂よりも樽風呂の方が湯量が少ない為か湯温が高く丁度いい具合で、極上の気分にひたれる。
再び、庭先を歩いて内湯へ戻る。浴室の壁が苔むしているという情報もあったが、きれいにしたのか、それほど鄙びた感じではなかった。
浴室はコンクリートの床と板張りの浴槽で、シャワーやカランがなければ共同浴場と見紛うまでの素朴な造り。
掛け流しのお湯は黄色透明、身体中に気泡がびっしりと付くのは平治温泉にそっくり。
温めの柔らかいお湯なので、のんびりと長湯するにはもってこいのお湯。
国道に面していながら温泉好きな人しか訪れないので経営的には大変だろうが、いつまでも営業を続けてもらいたいものだ。
ここは、すっぽん料理が格安で食べられる貴重な宿なので、いつかは宿泊して、露天風呂にずーっと浸かってみたいと思った。
なお画像につきましては、PCのクラッシュに伴うデータの損失に伴い永らく公開できませんでしたが、聖婆様の提供により公開できましたことをこの場をお借りしてお礼申し上げます。