今回は久々の一人旅である。
八王子駅の待ち時間は停車中の169系の新幹線リレー3号の車内で休み、睡眠不足を少しでも補っておく。
甲府行きの普通列車に乗り込み、ボックスシートを一人占めしすぐさま爆睡に入る。
車内はがらがらだが隣のボックスシートには18キップ利用と思しき中年グループがはしゃいでいる。
少々うるさいので移動しようと思うが、他に空いているボックスシートもないのであきらめる。
熟睡してしまい、気がつくと東山梨駅に到着したところだった。
甲府で松本行きの普通列車に乗り換え、次の駅の竜王では山口温泉の番頭さんの顔が浮かんだが、
今度の日曜日に伺う予定なのであわあわ温泉は今日はあきらめよう。
甲府市内には驚くほど温泉が多く湧いており、最近は住んでみたい誘惑に駆られる。
新府、穴山と武田家を連想させる駅名が続き、新府付近は桃畑が広がり、桃源郷の看板が目に付く。
日野春あたりで俄かに空が暗くなってきて、白いものがぱらついてきた。
茅野駅ではスーパーあずさ3号の待ち合わせがある。自由席はかなり埋まっていたが、指定席はがらがらだった。
上諏訪駅では片倉館に心が動いたが、2回入浴しているので今回は下諏訪のみに絞ることにする。
下諏訪駅で下車する。諏訪大社下社の初詣客と思しき客も少なからず下車する。
街は至る所に門松などの正月の飾り付けがされ、さすがに厳粛な気分になる。
昔は正月の飾りつけはどこの家庭でもしていたのだが、都会では最近はほとんどお目にかかれない。
諏訪大社下社への参道には注連縄のモニュメント?があり思わずカメラを向ける。
しばらく歩くとみなとや、桔梗屋といった旅館などがあり、中山道の宿場として栄えた下諏訪は由緒ある建物が目立つ。
特にみなとやの混浴t庭園露天風呂は、アメリカの雑誌に「最も日本の情緒を残す風呂」として紹介されたことがある。
通常の宿泊料金で馬肉料理が楽しめ、宿泊客をごく少数しかとらないので木目細かいサービスが期待できる宿である。
露天風呂は庭の中にあり、混浴だがグループ毎に貸し切りにするそうで、もちろん日帰り入浴は不可であろう。
綿の湯跡の説明書きとレリーフ、下諏訪本陣跡を撮影しつつ、遊泉ハウス児湯へ向かう。
美人の湯、子宝の湯として名高い児湯をクアハウス風に改装したそうだ。
天然温泉であり、水で一切うめていないことを謳っており、温泉分析書もしっかり掲げていた。
打たせ湯、圧注浴、かぶり湯、大浴場、露天風呂があり、かなりの観光客で混雑していた。
大浴場は浴槽の下から湯が出ていた様だが、浴槽から湯は溢れ出ておらず循環なのだろうか?
圧注浴で発生した水流の為浴槽の壁面近くでは湯が対流しており、ゆっくり浸かれる気分にはなれなかった。
露天は少々温めな為か不人気であったが、ここは正真正銘の掛け流しであった。
湯は僅かに白濁しており、飲泉するとくせがなく大変飲みやすい。
ここの浴槽は僅かだが深過ぎ、お尻を付けるとお湯が口のところに来てしまい少々残念に思った。
持ち時間は2時間なので30分程で切り上げ、旦過の湯へ向かう。
拡幅していない旧中山道の道に入ると、鉄鉱泉旅館の看板と旦過の湯の看板が目に付く。
旦過の湯は諏訪大社下社春宮に近い慈雲寺を訪れる修行僧の為、鎌倉時代に建てられた旦過寮が始まりである。
切り傷にもよく効き、合戦で傷ついた武士も入浴したそうな。
旦過の湯を始め下諏訪の入浴料金は200円で地元客にも観光客にも嬉しい限りだ。
旦過の湯の隣には源泉小屋があり、当然鍵が掛かっていたが噂に聞く熱い湯に期待が高まる。
ここの湯は近在の旅館を始め、新湯や矢木温泉にも引湯されているそうで湯量豊富な源泉であることが窺える。
浴室は真ん中に楕円形の浴槽があり、湯口からは源泉からの58.8度の熱々の湯が豊富に注ぎ込んでいる。
かぶり湯、足湯、半身浴と徐々に体を慣らしてから肩まで浸かったが、3分位が限界であろう。
草津の時間湯は湯もみをしてから入るので、ここよりもかなり高温なのだろうが、自分にはこの位が限界だろう。
足湯をしていても少しでも動かすと、肌が痛いくらいで我慢比べの様相を呈している。
飲泉をしてみると先程の児湯と同じような泉質で温度の差だけが異なる点だ。
湯は少々熱いが温泉としての昔ながらの雰囲気は草津の外湯にも似ており、温泉ファンには応えられない名湯だ。
塩羊羹で有名な新鶴本店(正月の為当然休業中であったが)と初詣で賑わう諏訪大社下社秋宮を撮影しつつ、
下諏訪駅に戻り以前押しそびれていたスタンプを押す。
駅構内には来る時に上諏訪駅に停車していた団体専用のお座敷列車が停車しており、
暫くすると朝方八王子駅に停車していたと思しきガソリンを積んだ貨物列車が大音響を立ててやって来た。
甲府行きの普通列車はロングシートに変更されており、結構乗車率は高かった。
隣には大学4年生と思しき2人連れが終点まで声高に話していた。にも関わらず甲府まで熟睡出来た。
甲府からの身延線富士行きはオリジナルの115系でJR東海の新型車両を期待していたので当てが外れた。
富士川沿いを2時間30分程かけて乗り通し、西富士宮付近では富士山を間近に撮影することが出来た。
吉原駅では京王からの移籍車両を使用している岳南鉄道の単行を横目に一路沼津へ東海道線で家路に向かう。
熱海駅では全席2階建の快速アクティーに乗り換えの為、地下通路を猛ダッシュし無事座席を確保する。
茅ヶ崎からの相模線は単線の為、待ち合わせが多いが、全扉独立した押しボタンによる開閉方式なので
駅に停車の度に寒い思いをしなくて済む。身延線の車掌が停車の度、重たい扉を手動で押し開けていたのは対照的だ。
小田急との接続は海老名よりも厚木の方が隣接しているので便利だが、厚木は急行が停車しない為
急行を勘案するとケースバイケースに乗り換え駅を選択するのが賢明だろう。