霊泉寺の駐車場に車を置き、温泉街へ向かって歩いていく。時間が止まったかのような鄙びた静かな温泉街で霊泉寺という名前がこの雰囲気にマッチしている。三方を山に囲まれ、古刹霊泉寺の寺湯として細々と続いてきただけあってさすがに観光地化されていない。この温泉の歴史は古く、平安時代さかのぼる。平維持が鬼女との合戦で負った傷を癒した伝説が残る。
以前秘湯の会のスタンプラリーで和泉屋という旅館に泊まったことがあるのだが、その頃は本格的に温泉巡りをしていなかったので、共同浴場の存在は知っていたが、未湯だった。モルタル造りの共同浴場は和泉屋の隣にあり、周りの風景に溶け込んでいる。番台で料金を支払い、脱衣所へ向かうが、タバコの吸殻が床に落ちておりちょっと興ざめ。共同浴場としては浴室と浴槽はかなり広めで、一見するとちょっとしたホテルの大浴場クラスだ。無色透明の熱めの湯で当然のことながら掛け流し。浴槽の紺色のタイルが綺麗で印象的だ。蛇足だが浴槽のタイルの色は泉質に関わらず、浴感のひとつとして記憶に残ることが多い。
しかしここで一番驚いたのは、男湯と女湯を隔てる仕切りの壁だった。何故かと言うと、仕切の壁に近寄るとはっきりとは見えないのだが、向こう側にいる人影が見えるのである。女性の方は、仕切の壁から遠ざかって入浴された方がよろしいでしょう。コップが置いてあったので、飲泉すると僅かに塩味を感じた。熱めの湯なので、ちょっと浸かっては外で休むのを繰り返していたら、あっという間に時間が経ってしまった。なお、この浴槽は寝転がって入るのを考慮した段差が浴槽内に配置されている。これは共同浴場にあっては珍しい作りであると思う。のんびりした風情を楽しむにはもってこいの舞台装置です。
なお画像につきましては、PCのクラッシュに伴うデータの損失に伴い永らく公開できませんでしたが、青ちゃん様の提供により公開できましたことをこの場をお借りしてお礼申し上げます。