黒川温泉にほど近い穴場的存在の下鶴荘だが、なにせ場所が良く分からない。インターネットで簡単な地図が紹介されていたので、その通りに車を進めると、民宿萬屋の看板が出てくる。別館ということはここからすぐそばだと思い、本館で道を尋ねると向こう側の山のはるか上にあるということだ。さすがに、本館である萬屋のHPに詳細な地図が掲載されるようになったので、最近は道に迷うことはなさそうだが…なるほど眺めがいいはずだ。ダートの急坂をしばらく行くと開発中の温泉付?分譲地があり、すでに売約済みの所もあり別荘なのだろうか?下鶴荘から向こうの東側の道路が舗装されており、西側の獣道のような細い道から行くのは少々危険でおすすめできない。
もともと日帰り入浴、休憩、食事で始めた施設らしいが、宿泊もやっているそう。かつては宿泊客は1組だけしかとらず、宿の方も通いだったので、夜になると全館貸切状態になったそうだが、母屋の他にコテージが作られて3組まで泊まれるようになったらしい。到着したのが11時過ぎだったが、入浴を申し出に母屋の方へ行くと焼肉のいい匂いがする。どうやら立ち寄りの先客が一組早めの昼食をとっていた模様。風邪気味の妻は入浴しないと言うので、母屋の囲炉裏のある部屋で待たせてもらったのだが、焼肉のにおいがして何だかかわいそうなことをした。
浴室は食事処のある母屋の隣の黒い板張りの建物で、男女ののれんがかかっているのですぐに分かった。狭い脱衣所から小さな内湯が見える。とってつけたような洗い場があるが、この山奥の環境であればこれで十分だろう。まず、鶯色に濁った内湯に入る。ガラス戸の向こうの露天風呂は浴槽が広いせいか、黄色っぽくて薄く見える。一般的には露天風呂の方が景色が楽しめるので良いのだろうが、個人的にはこちらの内湯の方が成分が濃いように見受けられたのでもっぱらこちらにばかり入っていた。
露天風呂は黄色いお湯で少々温めだが、素晴らしい阿蘇の山々を眺めながら入る黄色い湯はなかなか気持が良い。この建物の周りには建造物がまったくなく、急な斜面の上にある為に、実に遠くまで見渡せるのに都合が良い立地条件にある。(近年、隣接する西側の斜面に温泉付別荘が開発されて景観が損なわれているらしい)
後で知ったことだが、食事処の階下には大小の家族湯があるそうだ。人が押し寄せる黒川温泉へ行くのには正直辟易しており、下鶴荘と黒川温泉は目と鼻の先にあるだけに奇跡みたいな存在である。お湯良し、眺め良し、食事も楽しめ、しかも宿泊料金が安い(1泊2食¥6500)のです。どうです、行きたくなったでしょう。別荘の灯りが気がかりだが、ここは泊まりで満天の星を眺めながら露天風呂を満喫してみたい。