長湯温泉には驚くほどたくさんの数の私設の温泉がある。天満湯の前に掲げてあった地図によると大塚家の湯、清田家の湯(廃湯)、栃原の湯、しづ香温泉などが存在する。その中でも温泉ファンに特に有名なのがこのしづ香温泉である。起き抜けに宿泊している紅葉館の温い内湯に浸かった後、天満湯をハシゴし、大塚家の湯を見学し、芹川沿いを西へ向かって歩いた。かじか荘の所で右折して、芹川をかじか橋で越えると左手にしづ香温泉がある。橋の袂の目立つ場所にあるのだが、鄙びた外観とお湯の良さが温泉ファンの心をつかんで離さない名湯とのことで、期待に胸を膨らませて中へ入る。
ここは私設の公衆浴場の為、番台が設置され管理人が居るはずなのだが、朝が早いせいか管理人は居なかった。番台にお金が置いてない所を見ると先客の二人は、残念ながら無銭入湯の様だ。まぶりん麻呂はもちろん100円を番台に置いてから入る。噂通り朝っぱらから演歌が流れている鄙びた温泉ではある。このなんとも言えないミスマッチな感覚から、ここはひょっとしてB級温泉?と思い始める。しかし、浴室の扉を開けた瞬間に一目でいい温泉であることを直感した。がに湯系の緑色でかなり濃厚な湯で、表面にはうっすら油分が浮いている。
しばらくして管理人が来たのかおもむろに演歌のボリュームが大きくなった。管理人のおばあさんはかなりの演歌好きらしく、これではゆっくり温泉に入りに来たという感じがしない気がするが、ここのお湯の良さは長湯でも際立って素晴らしいものだと思う。長湯というと温泉成分の析出物が目立つが、特にここの温泉の床の析出物は分厚く、千寿温泉と双璧をなしている。浴槽の深さの好みは人それぞれであるが、私は膝を立てて入れるのを目安にしている。ここはちょっと浴槽が深すぎて、あまりゆっくり入っていたい気にはなれない。これだけが唯一評価を下げる要因だった。しづ香温泉という名前は変わっているが、これは温泉分析申請者の名前に由来しているそうです。
浴室の画像はidebinさんに提供していただきました。