源頼朝が、富士の巻狩りの作法を阿蘇大宮司に学ばせる為に派遣した梶原景時らが帰途、久住高原で巻狩りを行った際に発見されたという歴史の古い温泉である。久住山赤川谷奥より十数箇所で自然湧出している。お湯は硫酸・カルシウム・炭酸水素・ナトリウム・マグネシウム・各イオンを豊富に含有するコバルトブルーで、温冷浴法で代謝機能が活発になり、温泉効果が高まる。更に、冷鉱泉を飲用(とても不味くて飲めたものではないが)することで大小腸の細胞活動を活発にし、体脂肪を乳化せしめ体毒素の排出を顕著とし、奇跡的な症状改善が期待出来る。また、日本三大湯の花と評価される湯の花は戦時中は兵士の薬として珍重されるほどだが、赤川荘でしか買い求めることは出来ない。
九州大学温泉治療研究所温泉理学科によれば硫化水素と炭酸ガスを同時に含んでいる泉質は他に例がなく、何にでも効くということでこの日も日帰り入浴で込み合っていた。源泉が26℃ということで加熱している浴槽があり、冬場にはつらいが冷泉と加熱浴槽に交互に入る温冷浴法が特に疲労回復に抜群という話を聞き、早速チャレンジしてみる。まず手前の41℃に加熱された男女別の露天に入り体を温めてから21℃の混浴の露天の冷泉へ入る。泉源が異なるのか、加熱浴槽の湯と冷泉の湯の色は全く異なっている。加熱浴槽は緑がかった濃厚な白濁の湯で、冷泉はコバルトブルーに乳白色を混ぜたきれいな色だ。この日は雪解けで温泉の成分が一気に出てきているとかで年間を通じても良好な湯の状態だそうだ。
ここで七里田温泉下湯での体験が生きる。大抵の人は、足をつけただけで退散してしまう。混浴の露天には打たせ湯が新設されており、しぶきが飛んでくるので手前の岩肌の方に移動する。この時の温度は21℃ということで入った時は恐ろしく冷たく感じられた。何度か温冷浴法を繰り返している内に次第に体が慣れてきて、30分程繰り返している内に変化があった。視力が悪いせいか慢性的に悩まされている首の凝りがすっかりとれているではないか!体全体も軽くなっている。これだけ即効性のある温泉というのは大変珍しい。加熱浴槽が空いてきたのでしばらく雄飛の滝を見ながら、鳥のさえずり、木々のざわめき、硫黄の香りと体全体で秘湯のたたずまいを満喫する。
再び外来入浴者で込み合ってきたので内湯へ向かう。41℃に加熱された浴槽と源泉13℃の冷泉がある。冷泉はさすがに冬場は無理で、腰までつかってすぐに引き上げた。加熱浴槽は思いの外深く、注意が必要だ。奥の方に腰掛け用の大きな石がありそこでしばらくくつろぐ。このくらいの湯温は長湯できるので気に入っており、気がつくと1時間30分以上経過していた。夕食ははっきり言って期待していなかったが、出される料理は無農薬で温かいものをタイミング良く出す手際の良さとこだわりの料理の質の高さに驚いた。これで7,500円とは恐れ入った。
夕食の途中で池田オーナーによるミーティングが行われる。伝達事項と宿の宣伝が少々。食後にもう一浴と思っていたが、夕食時に焼酎を飲みすぎてすっかり寝入ってしまった。部屋には立派なテレビがあるが電波が受信できない為ビデオ専用だそうだ。ビデオはフロントで貸し出しているそうで、テレビを見たい方は食堂でどうぞということだ。夜は滝がライトアップされ幻想的な景色が楽しめるそうだ。
翌朝は男湯と女湯が入れ替わっており、今度は雄飛の滝がよく見える。注意したいのは沸かしのお湯は、壁で仕切られた左側から右側に流れてくるので右側の露天の加熱浴槽は少々温い為、冬場は温冷浴法には適さないと思われる。もっともまぶりん麻呂は懲りずに再度震えながら温冷浴法に挑戦したのだが…朝食は御飯の外に出された手作りのパンがなかなか美味で、食後のコーヒーも格別の味わいだ。朝食後に送迎担当の黒い犬のモモ子と警備担当の白い犬のリッキーと記念撮影する。懇意にしていただいている甲府の某温泉の番頭さんのお土産に赤川温泉の湯の華を求め、宿を去る。