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京都の散り紅葉を求めて
2001.11/30〜12/2

旅行者 まぶりん麻呂、ちえりん
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 11/30

相模大野〜小田急線 急行23:30〜町田〜ハーバーライト京都号〜



 12/1
〜06:30京都06:44〜JR嵯峨野線 225M〜07:04嵯峨嵐山…野宮神社小倉池…落柿舎…二尊院…厭離庵…祇王寺…化野念仏寺…愛宕念仏寺〜京都バス62or72系統〜大覚寺道…清涼寺宝筐院直指庵…大覚寺…嵯峨瀬戸川町〜市バス93系統 錦林車庫行〜錦林車庫…キッチンなかお法然院安楽寺真如堂金戒光明寺…丸太町〜京阪鴨東線 普通〜京阪五条〜efish〜五条〜京都地下鉄烏丸線〜今出川…プチホテル京都…今出川〜京都地下鉄烏丸線〜北山…メゾン・ドゥ・イッテー…北山〜京都地下鉄烏丸線〜今出川…栄湯…プチホテル京都(泊)



 12/2
プチホテル京都…Le Petit Mec…プチホテル京都…晴明神社一条戻橋…京都御所…メイプルツリー糺の森…出町柳〜京阪鴨東線 特急〜中書島〜京阪宇治線 普通〜京阪宇治…宇治神社宇治上神社興聖寺…宇治〜JR奈良線 普通〜京都〜京都地下鉄烏丸線〜国際会館前…宝ヶ池プリンスホテル…国際会館〜地下鉄烏丸線〜北山…マールブランシュ…北山〜地下鉄烏丸線〜四条…錦市場…四条〜地下鉄烏丸線〜京都20:14〜ひかり240号〜22:33新横浜〜横浜線〜町田〜小田急線 普通〜相模大野



 11/30
 今回の旅行は月末の夜出発なのだが、仕事の関係上帰宅が遅くなる為、町田BCからの夜行バスの利用となった。 本来であれば、横浜あたりから銀河に乗って久々に夜行列車の旅を楽しみたい所だ。 町田BCからの乗車は初めてであるが、出発時間が23:30と遅い為、銀河で行くより家を出る時間が遅くてもいいのがありがたい。 丁度いい時間の小田急線はあったのだが、万全を期して一本前の列車で行く。 バス停の位置をあらかじめ確認しておいたので、迷うことなくたどり着くことが出来た。 この時間帯に発車する夜行バスは多く、結構バス待ちの客が多い。 暇をもてあそびながら、京都のガイドブックを眺めて、明日の行程のチェックをしておく。 間もなくバスが到着し、乗り込む。座席もインターネットで確認しておいたので、迷わず2階席の最後尾へ向かう。 次の停留所である本厚木に到着する前に、1階に降りてコーヒーとおしぼりを調達してくる。



 12/1
 熱いコーヒーを飲んでいる内に、本厚木駅に到着する。 ここを過ぎれば後は途中時間調整でサービスエリアで停車する以外、京都までノンストップだ。 以前の夜行バスでは、トイレ休憩が2回あり、その度ごとに目が覚めた記憶がある。 最近はセキュリティの問題と、乗客の安眠を妨げる配慮からか、深夜にドア扱いすることはほとんどないそうだ。 熟睡したと思ったらあっという間で、定刻の6:30に京都駅に到着する。 すぐに駅ビル内のトイレへ向かったのだが、女性客が洗面台を占拠して化粧をしていたそうで、夜行バス利用客専用の洗面所などの 設置を検討してもらいたい所である。

当初の計画では、京都駅からバスで直接愛宕念仏寺へ向かう予定であったが、待ち時間があまりに長いので、JR嵯峨野線(山陰本線) で嵯峨嵐山へ行くことにする。拝観時間は始まっていないのだが、嵯峨野の紅葉を眺めながら徒歩で向かえば、バスで行くのと大差ない 時間に到着できそうである。改札を抜けると智頭急行乗り入れの特急「スーパーはくと」が、嵯峨野線のとなりのホームには 特急「はるか」が停車中であった。いずれも未乗であり、いつかは乗ってみたいあこがれの車両である。 嵯峨野線の車両は東海道線で使われているものと同じ旧型の車両で、思いの外長大編成でびっくりした。 土曜日ではあるが朝の時間帯である為、上り列車は郊外から京都へ向かう客でかなり込み合っていた。 乗車した下り列車はかなり空いており、ボックスシートで持参のパンで軽い朝食を済ませておく。 最近嵯峨野線は高架化したが、依然として単線である為、列車の行き違いが頻繁に行われる。 実際に走行している時間に比べて、時間待ちが多いので予想以上に時間がかった。

 嵯峨嵐山駅は、新婚旅行で来た時以来5年振りの再訪である。 木造の駅舎は以前のままであったが、自動改札化され、駅員が出てこないのがちょっぴり寂しかった。 トロッコ嵯峨野駅を右手にみながら歩いていくと、SLや使われなくなった旧型車両が再利用してある所があった。 このように再利用するのを見ると、やはり古いものはリサイクルが出来て良いものだと思わざるを得ない。 最近の新しい車両は、経費節減でローコスト化されているのだが、長い間使われることはないだろう。 スクラップにされて再利用されるのが関の山で、内部をリニューアルしたりすることはなくなり、 新造車両の作られるサイクルはますます短くなっていくものと思われる。

 来る前から分かっていたのだが、実際に歩き始めてみると紅葉はほとんど終わりであることを実感した。 それでも所々に残っている紅葉を愛でながら、早朝の嵯峨野を散策する。 まずは、野宮神社へ向かう。縁結びの神様として有名であるが、ここの紅葉は終わっていた。 何度も来た事があるのだが、何時も込み合っていたので気が付かなかった奥の小さな社で手を合わせる。 有名な天龍寺の裏手にある竹林に足を踏み入れると、凛とした空気が立ち込め思わず身が引き締まる思いだ。 天龍寺の墓地の入り口から小倉山の紅葉が、真っ赤に朝日を浴びて綺麗である。 その先の竹林には当然紅葉はなく、トロッコ嵐山駅前に赤く色付いた紅葉があったが、日光があたっていない為 綺麗には見えなかった。紅葉は日光の当たり具合で、綺麗にも見えたり、汚くも見えるので被写体としては撮影は難しい。 しかしデジカメの場合は、明るい光の下での撮影が不向きな為、撮影に適した条件はなかなか見つからない。

 落柿舎の手前にある竹林を背にした小倉池の紅葉が丁度良い条件で、格好の被写体となる。 竹林と紅葉の取り合わせはバックが暗いことが多い為、日の当たり方によっては素晴らしく綺麗な写真が撮れることがある。 適度な逆光で後ろに黒っぽい背景があるのが、綺麗に紅葉を写すひとつの方法であることを学んだ。

 所々に僅かに残っている撮影条件に合う紅葉を撮影しながら、嵯峨野の奥へと分け入る。 いずれの寺院も当然見学時間には当然早いので、散り行く紅葉の状況を把握する程度のことしか出来ないが… 住宅街を入った所にある厭離庵は丁度見頃で、塀越しに撮影する。 紅葉の赤、銀杏の紅葉の黄、常緑樹の緑が信号を連想させ、面白い取り合わせになっている。 紅葉で有名な常寂光寺の山門のところは、すっかり紅葉は散ってしまっていた。 二尊院は、入り口の白壁と朝日を浴びた紅葉のコントラストが見事だ。 散り紅葉で有名な祇王寺はすっかり散ってしまっており、塀越しに庭を覗くが、丁度庭掃除をしており散り紅葉は全くない。 悔しいので、わずかに屋根瓦の上に降り積もった散り紅葉を撮影する。 嵯峨野の最奥にある化野念仏寺の入り口付近では、下から見上げるアングルで空を背景にした質の高い写真が撮れた。 一応望遠機能のついたデジカメではあるが、一眼レフに比べると仕上がりに不満が残る。

 鳥居本では2年前撮影した茅葺屋根の平野屋の前の紅葉は、跡形もなく散ってしまっていた。 その手前の茶屋の前の紅葉が僅かばかり残っている程度である。 さらに清滝方面へ歩いていると、一ヶ所だけ奇跡的に綺麗な紅葉が残っている場所があった。 驚いたことに数多くのカメラマンが、三脚を立てて望遠の一眼レフをそちらに向けている。 もちろん自分も同じ場所から撮影したが、この一件からこの時期の紅葉が終わりの時期であることを痛感した。

 愛宕(おたぎ)念仏寺に到着し、早速お目当ての石仏群へ向かう。 2年前に来た事があるのだが、その時はテレビの撮影が行われており、奥にある古い時代の石仏群を見ることは出来なかった。 案の定紅葉は皆無であったが、苔むした古い石仏達の愛嬌のある表情を見ていると、いつまでも見ていても飽きない。 紅葉の季節は終わっているものの、境内に無数にある石仏を目当てにやって来る観光客がひっきりなしに訪れる。 この時は、丁度写真愛好家のグループがマイクロバスで来ており、本格的な一眼レフのカメラの放列に加わらせてもらった。 たくさんの石仏の中から面白い物を選んで撮影していると、あっという間に時間が経ってしまった。

 愛宕念仏寺の前のバス停から京都市街へ向かう京都バスに乗り、大覚寺道で下車する。 途中護法堂弁天という隠れた紅葉の名所があったのだが、外れだと大きなタイムロスなのでパスする。 大覚寺道から持参の地図をたよりに清涼寺へ向かって、歩き出すが曲がる所を間違えて、かなり遠回りをしてしまった。 京都の市街地とは異なり、住宅地の間に畑や川などがあり、標識はおろか目標物がほとんどないので少々難儀した。 こういう時こそ、正確な地図が掲載されているガイドブックは、本当に頼りになる。 今回はインターネットで、ある寺のある場所の紅葉の状況といった細かい最新情報をキャッチしていたので、効率的に行程を組むことが出来た。 比較的紅葉の遅い清涼寺の境内であったが、銀杏の葉は全て落葉してしまっており、 緋毛氈のかかった茶店の腰掛けと綺麗な黄色の絨毯の取り合わせを撮影できたのは僥倖だった。 境内南側の塀沿いに低い位置に葉が茂っており、しかも逆光で光を透かして見える立派な紅葉が数本見つけた。 清涼寺の紅葉は有名ではないが、こういうのを見つけると京都の紅葉の奥の深さを実感させられる。

 隣の宝筐院は、比較的紅葉の遅いことで知られるが残念ながらほとんど散り紅葉になってしまっていた。 足利氏ゆかりの寺院で、普段はほとんど訪れる人もいないが、先週の三連休はここに限らず嵯峨野一帯は物凄い人出だったそうだ。 散り紅葉は下に苔が生えており、適度に光が当たっていることがうまく撮影できる条件なのだが、 丁度訪れた時にうまい具合に光が当たっており、非常に幸運であった。 この時は撮影に適した場所は一ヶ所に限られており、そこだけ人だかりになっていた。 ここに限らず京都の寺院では、三脚の使用が禁じられている所が多いので、撮影にあたっては事前に確認した方が望ましい。

 嵯峨野めぐりの最後を締めくくるのは、直指庵である。時代劇のロケ地として有名な大覚寺の奥にあり、山里の中にひっそりとした 佇まいが大変気に入っており、何度となく訪れている。持参した京都のグルメガイドに直指庵の門前にある北嵯峨という茶屋が掲載されているので、 立ち寄ってみることにする。気が付いてみれば早朝から歩き通しで、口にしたのは朝食のパンだけである。 疲れた時には甘い物が一番なので、ぜんざいを注文する。ほんのり隠し味の塩味が効いた素朴な味わいであった。 値段も市街地の喫茶店に比べ良心的であり、直指庵に来る時に休憩するのにおすすめの店である。

 直指庵に足を踏み入れると、広範囲にわたって散り紅葉が広がっており、早速撮影を開始する。 直指庵は、柵などを設けず自然のままにまかせてあるのが嬉しい限りだ。 散り紅葉を損なわない様にそっと歩きながらではあるが、お陰で自分の好きなアングルで撮影できる。 紅葉の時期だけの事なのだろうか?庵の右手の境内に向かう人が多いので付いて行くことにする。 光量不足で薄暗い場所だったが、見事な枝ぶりの紅葉がまさに見頃を迎えていた。 庵に戻ると、普段では想像できないほどの人の多さに驚いたが、ここを訪れる人のマナーの良さは何時きても折り紙付きだ。 これだけの人が居ながら、庵の静寂は見事なまでに保たれている。残念ながら庵の中からは、紅葉の撮影に適したポイントはなかった。 手水鉢に浮かんだ散り紅葉が、去り行く秋を惜しむかのように寂しげに映ったのが印象的だった。

 午後からは洛東の紅葉を見に行く予定であるが、路線バス1本で行く方法がひとつだけあった。 嵯峨嵐山駅にほど近い、嵯峨瀬戸川町から93系統の錦林車庫行きに乗ればいいのである。 時刻は正午をとっくに過ぎており、空腹をがまんしながら大覚寺を通り抜け、ひたすら南へ向かって歩き続ける。 バスに乗車する観光客は殆ど皆無なのだが、市の中心部を横断する路線なので結構混雑し、人の入れ替わりが激しい。 幸いにも座ることができたので、持参のガイドブックで昼食場所を探すことが出来た。

 終点の錦林車庫で下車し、ガイドブックで探したキッチンなかおという店を探し当てる。 川沿いの住宅街にある店で、気軽に入れる洋食屋といった雰囲気だ。 シェフは一流ホテルでの経験があり、地元の新聞やガイドブックに載るほどの有名人だそうだ。 ランチでとは言え、ボリュームたっぷりで揚げたてのコロッケなど、炊き立ての美味しいライス、食後のコーヒー、 本格的なソースでデコレーションされたデザートまでついて1,000円は、今時良心的な値段だ。 店の中には、早くもクリスマスの特別メニューが貼り出してあり、夕食は内容的に見てもかなりお値打ちだと思われた。 店の方にしきりに詩仙堂を行くことをすすめられたが、ちょっと遠いので予定通り、哲学の道界隈を訪れることにする。

 哲学の道を越え、急坂を登り法然院へ向かう。ここの紅葉は日照条件が悪いせいか、紅葉が赤くならず、黄色にしかならない。 山門を入った所にしか撮影スポットがない為、入れ代わり立ち代り観光客が記念写真を撮っている。 どのくらい待っただろうか、山門をバックにした黄色く色付いた紅葉の写真を長いことかかってようやく撮ることが出来た。

 次は近くの安楽寺であるが、ここは春と秋の限られた時期しか公開していない。 参道の紅葉はすっかり枯れてしまい、境内を覗くとはっきり言って紅葉は全く見られなかったので、 紅葉の撮影が目的だったので金を払う価値はないと思われたので、拝観はやめておく。 1週間くらい前に訪れていれば、さぞかし見事な紅葉のトンネルが見られただろう。 紅葉は年によってピークの時期がかなり変わるので、本当に見頃に出会う為には、足繁く通える所に住みたいものだ。

 本日最後の紅葉スポットは真如堂である。白川通りの真如堂バス停の所で歩道橋を渡り、真如堂東側の急坂を上り切る。 洛東では一番紅葉が遅いことで有名である為、今年最後の紅葉を一目見ようという観光客でごったがえしていた。 本堂奥の紅葉が美しいことで有名であるが、すでに枯れてしまているか、散ってしまっており、がっかりした。 三重の塔付近の紅葉が僅かに残っていたのがせめてもの救いで、ここにだけカメラマンで人だかりが出来ていた。 ここは紅葉の時期も良いが、朱塗りの山門と手前の新緑の紅葉の対比が目に鮮やかでおすすめである。

 一日中歩き回ったので流石に疲れたので、かねてより噂に聞いていた五条のカフェ「efish」へ向かう。 とは言っても真如堂からバス1本で行けないので、歩いて京阪の丸太町まで行くことにする。 途中、金戒光明寺(通称黒谷さん)を通り抜けて行く。紅葉は全く見られないが、小高い丘の上に位置する為、本堂に上がってみると 意外なまでに京都市内の景色が遠くまで見渡すことが出来る。排気ガスを嫌って丸太町通りから一本北よりの道を西進し、聖護院や おたべの本店を横目に見ながら、しばらく歩き丸太町へ到る。

 京都で気を付けたいのは、同じ駅名の駅が複数存在してもその位置は、全然別の場所にあったりすることだ。 丸太町や四条という駅名は、京阪鴨東線や京都地下鉄烏丸線に同名の駅が存在するが、その場所は大きく東西に離れている。 個人的に不思議に思ったのは、京都地下鉄烏丸線の鞍馬口駅である。 鞍馬というと叡山電鉄の終点というイメージがあるが、鞍馬口駅は今出川駅のひとつ北よりに位置する駅である。 かつて各方面の街道から京都へ入る場所を七口(時代によって個数は異なる)と呼び、現在も地名として残っているものもある。 この駅名は、そうした古き良き京都の伝統を今に残す貴重な駅名と言える。

 京阪の四条駅(地下)から階段を上ると、鴨川をはさんで窓の大きなコンクリートのビルの中にオレンジ色の椅子が目に飛び込んでくる。 これほどインパクトのあるカフェであれば、初めて来る人も対岸から見つけるのは簡単である。 このカフェの存在を知ったのは、熱烈なファンであり、自分のHPでも応援している倉木麻衣さんに関係している。 2001年の夏に発行されたJ*GMという音楽雑誌に彼女が特集で取り上げられたのだが、その時のコンセプトが 京都であり、たまたま別のアーティストの撮影の場所に「efish」が取り上げられていたのである。 旅行前から気になっていろいろ調べる内に、ここはとんでもなくハイセンスなカフェだということに気づいた。

 入り口側のもう一本の川に面した通りから店を覗いても、何の店であるかすぐには分からない。 店のシンボルとも言えるオレンジ色の椅子と、魚をイメージした「efish」の看板があるのみだ。 別に食べ物や飲み物が特別美味しいという訳ではない。実際に見てもらうと分かるのだが、カフェの域を越えて 最先端のショールームといった雰囲気で、鴨川に向かって展望が開けているのが最大のセールスポイントだ。 すぐ南に位置する花街「五条楽園」に金魚鉢を置いていることにヒントを得て、この店は建物を金魚鉢に見立て、 1階のオレンジ色の椅子を金魚に見立てている。さらに驚くべきことに実際に大きな水槽が設置してあり、観賞用の魚が 訪れる人の目を楽しませている。「efish」という店の名前も「五条楽園」に由来がある。一条通りをAとして五条通りはEにあたる。 fishは、営業中の看板がわりに金魚のいる水槽を店先においている「五条楽園」の遊郭にちなんでいる。

 マガジンラックから何冊かの本や雑誌を持ってきて、眺めていると「京都カフェ案内」という本の巻頭でこの店のことが紹介されている。 本を読み進めていく内に、全てにおいて完璧なカフェなど存在しないということに気付いた。 神社仏閣といった和風のイメージが強い京都にも、コーヒーやケーキの一流の店は数多く存在する。 翌日の夕方に京都一と呼び声の高い某有名ケーキ店へ行き、そのレベルの高さを目の当たりにすることになるが… 餅は餅屋にまかせておけばいいのであって、カフェというのは寛ぎの時間と空間を提供するにすぎない。 もちろん、食べ物や飲み物の質ある一定の水準を満たしていれば、それ以上は望まない方が良かろう。 本を読み終えて、店内をつぶさに観察して回る。2階にはバーカウンターとテーブルがあり、こちらは満席状態であった。 食器やアクセサリーのみならず、旅行トランク、ソファ果てはバスルームまで展示してあり、なかなか面白い。 従業員の接客マナーが素晴らしく丁寧で、混み合っていても笑顔を絶やさないあたりにも人気の秘密がうかがえる。

 「efish」を後にして地下鉄の四条駅へ向かう途中、雅子様の出産の号外を読んでいるおじさんに出会った。 妻がそれを目ざとく見つけ、物欲しそうにしているとおじさんも気がついて「あげますよ」と言って渡してくれた。 四条から今出川まで地下鉄に乗り、今出川通りを西へ歩き、本日の宿プチホテル京都に到着する。 近くには西陣織会館や鶴屋吉信の本店があり、まずまず交通の便の良い場所にある。 ベッドで横になっていると一日の疲れがどっと出て来て、気が付くと1時間くらい寝てしまった。 そろそろお腹が空いてきたので、夕食を食べに北山のフランス料理店へ出掛ける。

 地下鉄の北山駅を降り、くだんの京都一と呼び声の高い某有名ケーキ店を下見しておく。 食事の前に以前何度かお香を買ったことがある「リスン」という店を訪れる。店内は相変わらずハイセンスな客で溢れている。 現在住んでいるマンションは高気密性の為、狭い室内でお香を焚くと匂いがあっという間に充満してしまうので、 残念ながら当分この店でお香を買うことはなさそうである。

 夕食はメゾン・ドゥ・イッテーというリーズナブルなフランス料理店でいただく。 北山の閑静な住宅街の中にひときわ目立つとんがり屋根で、すぐにそれと分かる。 ディナーのコース料理は2,500円〜からとカジュアルにフランス料理が楽しめる。 また、ケーキセットは10種類以上の手作りケーキに、コーヒーか紅茶のドリンクが飲み放題の人気メニューだ。 併設の「レストラン・ドゥ・イッテー」は完全予約制で、本格的なコース料理が楽しめる。

 ホテルのユニットバスは好きでないので、ホテルへ帰る途中に栄湯という銭湯に立ち寄る。 旅先で銭湯に入るのは久々である。ちょっと熱めのお湯で、長いこと入っていられないが、広々とした浴槽で旅の疲れを癒すことが出来た。 京都は昔から銭湯が多い為、利用出来る限り多くの銭湯に入ってみたいと思った。



 12/2
 昨日「efish」で出会った「京都カフェ案内」という本に紹介されていた「Le Petit Mec」というカフェが、 偶然にも泊まっていたホテルの目と鼻の先にある事が判明したので、早速朝食を食べに行く。 カフェというよりかパン屋の中にイートインできるスペースがあると言った方が適切である。 メニューもフランス語で書かれており、壁にはフランスの映画のポスターが所狭しと貼られ、BGMまでもがフランス語であった。 この店のドアを開けて、一歩足を踏み入れた者は、京都からフランスへワープした感覚に襲われるに違いない。 たまたま店主はこの店をパン屋にしたが、職業はどうあれフランスという空間を作りたかったそうだ。 その点では店主の方針は、見事なまでに具現化している。 フランス人をして「こんなカフェはフランスにも存在しない」と言わしめたほどの完成度の高さである。

 どうせやるなら徹底的に美味しいパンを作ろうということで、パン作りを追求した結果数々の賞に輝き、本や雑誌で度々取り上げられている。 あくまでも本業はパン屋で、カフェと呼べるスペースは一応設けてあるが、これは店主の趣味の領域と呼べる。 ジュースなどの飲み物もわざわざヨーロッパで一番メジャーなメーカーのものを取り寄せている。 パンを買いに来る客がひっきりなしに訪れるが、皆テイクアウトして行く所を見ると地元の常連さんばかりの様だ。 店内で作っているパンが次々と運ばれて来て、店員が忙しく並べたり、袋詰めをしている。 クロックムッシュなるものを生まれて初めて食したが、これほど美味しい調理パンを食べたことはない。 調子に乗ってたくさんパンを買ってしまったが、クロックムッシュだけでかなりのボリュームであった。 ここでの朝食は一流ホテルにも勝るとも劣らない充実した内容で、なおかつリーズナブルであった。

 ホテルへ戻り、身支度を終え、チェックアウトし、近くの晴明神社へ向かう。 祭神は安倍晴明で、陰陽師として最近ブームになっており、映画化されているので詳しい説明は不要だろう。 昔良く読んだコミック「孔雀王」に出てくる人物が、紙切れに呪文を唱えてふっと息を掛けると式神という異形の者を 出現させていた。もちろん安倍晴明はそうした術も使うが、平安時代当時、陰陽師は宮廷にとってなくてはならない存在であった。 晴明神社の売店では、修学旅行の高校生達がお守りを求めて群がっており、なかなか盛況の様子だ。

 2005年は安倍晴明の没後千年にあたり、大阪にある安倍晴明神社では記念事業として、社殿はじめ、社務所、参道の整備を計画している。 晴明神社でも寄進のお願いがあり、額に応じてキーホルダーや徳利や杯といったプレゼントが用意されていた。 実際社殿の横の建物が新造されていたのだが、屋根瓦にも陰陽道のパワーを表す五芒星がたくさん掲げられていた。 吊るされてあった絵馬には映画「陰陽師」の監督夢枕 獏を始め出演者の方々が、映画のヒットを祈願するコメントが書かれていた。 普段は神社でお守りなど買わないのであるが、最近悪い事が続いているので、厄払いと家内安全を願って二種類のお守りを求めた。

 晴明神社から堀川通りを渡った所にある、一条戻橋へ向かう。ここは、平安時代に死者が甦ったことから、 この世とあの世の境目であると言われているが、橋の上から覗き込んでみるとそんな風に思えてくる。 安倍晴明は一条戻橋の下に式神を飼っていたとされるが、その数は百とも千とも万とも言われる。 紅葉を求めて京都御所へ向かう途中、京都ブライトンホテルの前を通る。ここは、新婚旅行で利用したホテルなので感慨もひとしおだ。 ちなみにここは、かつて安倍晴明の住居があったところで、御所の近くにこんな広大な敷地を有していたということからも 彼が宮廷でいかに重用されていたかが分かる。 晴明邸は内裏の鬼門にあたる北東に位置しているはずだが、現在の御所の西側にあるのには訳が有る。 通りなども今と昔とはかなり異なり、内裏の位置も現在の御所よりもかなり西に位置していたということである。

 御所に来たのは10年振りくらいであろうか?それにしても広い敷地だ。 実は御所へ来るのが目的ではなかった。御所の隣にある梨木神社へ行くのに、御所を通り抜けるのが一番近道だったからである。 紅葉なんてないだろうと半ば諦めていたら、それでも南側に撮影対象になりえる散り際の紅葉を見つけた。

 梨木神社は後で行く糺の森と共に洛中では最も紅葉の遅い所だが、参道の紅葉や銀杏は完全に散ってしまっていた。 神社手前左手には染井(そめのい)の井戸と呼ばれる湧き水が湧出しており、昔から茶の湯に適するということで大勢の人が 水汲みに訪れていた。梨木神社の入り口には昨日ご誕生した内親王愛子様を祝福する看板が掲げられていた。 そう言えば地下鉄の車内にも祝賀ムードを盛り上げる小さな日の丸が飾ってあった。 梨木神社の境内は訪れる人もまばらで紅葉の穴場と言えそうだ。壁の格子から漏れ出てくる日の光が美しく境内にあった紅葉を 盛り上げてくれているかのようだった。

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