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 相模鉄道ハ20形ハ24号客車

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 神中鉄道というのをご存知だろうか? バス会社の神奈川中央交通によく似た名前であるが、無関係である。 その名前と歴史的背景には様々な紆余曲折がある。 一言で言ってしまうと神中鉄道は、現在の相模鉄道の前身である。 1917年(大正6年)瀬谷村の素封家、小島政五郎らが中心となって起業した神中鉄道は、現在の相模鉄道の路線を所有していた。 1917年(大正6年)茅ヶ崎町で設立された相模鉄道は、現在のJR相模線の路線を保有していた。 1941年(昭和16年)経営合理化を目指して相模鉄道が神中鉄道を吸収合併するが、1944年(昭和19年)戦時下体制において相模線が、東海道本線と中央本線とのバイパス路線として鉄道省に編入された為、神中鉄道部分が残された。

 春の撮り鉄として桜と菜の花が同時に楽しめる格好の場所が海老名〜かしわ台にあることを、とある鉄道写真家さんの素晴らしい作品から知った。 かしわ台駅から歩いて行けそうな距離の場所だったので、近くに何か面白そうなものがないかと情報収集をしていた矢先にとんでもないものを見つけた。 かしわ台駅に隣接したかしわ台車両センターに木造二軸客車が保存されているのである。 木造二軸客車と言えば、大宮の鉄道博物館や犬山の明治村に保存されている御料車が有名だが、一般庶民が利用した木造二軸客車が保存されているのは他で聞いたことがない。 兵庫県の別府鉄道と言えば、デッキのついた緑色の車体に窓の付近がクリーム色の古めかしい木造二軸客車というのがイメージだったが、まさかこの車両がそれだったとは知らなかった!

 かしわ台車両センターの入口で守衛さんに保存車両を見学したい旨を告げれば、誰でも見学出来ます。 入って左手に進むと腕木式信号機が現れ、そこには屋根のついたスペースに神中3号機関車とハ20形ハ24号客車が連結された状態で保管されている。 人が頻繁に出入りすることがないせいか保存状態は極めて良好で、蒸気機関車と連結してある方の車端部にデッキに上がる階段が設置されており、客車の中に入ることも出来る。 車内に入ると木造車両特有のニスの臭いがして、テンションが高まる。 青いシートもへたりがなく現役当時のままの状態を保っている。 窓は二段式で下段のみが開けられるようになっている。 天井部分は白く塗られており、平らではなく弧を描いており、窓の上には通風の為の小窓が設置されている。 換気を良くする目的で、屋根の棟の部分を開いて、その部分に一段高く小屋根を設ける形式の屋根でこれを通称モニター屋根と言うそうだ。

 ハ20形ハ24号客車は、相模鉄道の前身である神中鉄道が開業した大正15年から昭和24年までの間活躍した車両です。 連結してある神中3号機などの蒸気機関車に引かれ、横浜〜厚木間で旅客の輸送にあたっていました。

 汽車製造(株)東京支店で製造された同客車は、神中鉄道、相模鉄道で24年にわたって活躍後、三重県の三岐鉄道に譲渡され、昭和34年から昭和59年1月31日までは兵庫県の別府鉄道で「ハフ7号客車」として使用していました。 昭和58年12月27日の相鉄線「横浜駅乗り入れ50週年」の記念として、別府鉄道のご厚意により譲り受けることとなり、昭和59年2月3日相模鉄道に里帰りしました。

 大正時代から昭和時代の初期にかけて製造された木造の客車は現在ではめずらしく、特に二重屋根の展望車は貴重なものとなっています。

 ハ20形ハ24号客車の概要
 ・長さ     9.79m
 ・自重     8トン
 ・幅      2.55m
 ・面積     16.32u
 ・高さ     3.689m
 ・定員     50人
 ・制動機の種類 手動制動機
 ・製造月日   大正15年4月

取材年月日 2012年4月8日
腕木式信号機
腕木式信号機
腕木式信号機ってこんなに長い間使われていたんだ
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ハ20形ハ24号客車は、神中3号機に連結されています
ハ20形ハ24号客車は、神中3号機に連結されています
日照条件を勘案すると客車全体を撮影する最適なアングルはこうなります
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ガス灯を模した照明がいい味を出しています
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軸や車輪は思いの外、小さかった
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細長い板を縦に並べて外壁を作り上げているんです
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侵入禁止の為の鎖と転落防止の為のアクリル板が設置されています
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このアングルで撮られた写真が、別府鉄道時代のこの車両で多数見受けられます
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植え込みが撮影に少々邪魔になります
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こんな原始的な足回りはそうそうみれるものではありません
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車輪を挟み込むようにブレーキが設置されているのがよく分かります
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これほどインパクトのあるロゴは見たことがない、しかも旧字体!
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窓の下にある金具は、もしかしたらサボを吊り下げ用?
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三等という表記がされた現存する唯一の車両かもしれません
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昭和初期にタイムスリップしたかのような車内
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天井に取り付けてある木の棒は吊革を下げる為のものだそうです
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「車窓はテレビより面白い」という故宮脇俊三氏の著作を思い出しました
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この保存状態の良いシートだけでも鉄道遺産と呼べる
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1927年開業の世田谷代田駅にあった木製のベンチと同じオーラを感じました
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車掌用の非常用ブレーキ
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昭和初期にはまだ網棚というものは存在しなかったのか
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乗り鉄的には窓の開かない車両は、乗る価値がないと思っています
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こういう照明にこそ旧型客車の真髄があると思う
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モニター屋根特有の通風の為の小窓
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息を飲むようなモニター屋根の構造美
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至福の時という言葉がぴったりの空間だった
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2つの部材を使って曲線を実現させた匠の技
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クロスシートだったら銀河鉄道999の世界だなあ
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荷物棚の位置からだと弧を描いているモニター屋根の様子がよく分かる
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天井が白いと車内が明るく感じられる
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車両の外壁に一箇所剥がれかかっている所があった
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