京都で一番美味しいと評判の老舗の自家焙煎の店の呼び声が高い、六曜社地下店へついに行くことが出来た。一階には地下よりも広い面積の六曜社があるのだが、コーヒーの味は地下店の方が格段に美味しいとの噂である。地下にあるこの店は、人気がある上に席数が少なくいつも満席であることが多いらしい。それならばと17頃から閉店まで(18時からはバーとして営業しているみたいだが)粘ってみようと時間を調整した。
17時ちょっと前に店の階段を下りていくと、案の定満席だと告げられた。待つのはむろん承知の上である。入り口の前に待つこと約10分ばかり、おかげで階段の周辺をつぶさに観察することが出来た。緑がかったタイルが大変印象的で落ち着いた店の雰囲気を醸し出すのに一役買っている。後で知ったことだが、このタイルはなんと清水焼で焼かれているらしい。このあたりに京都人のエスプリが感じられる。タイルには数々のイベント関係のビラが貼られ、一見するとライブハウスの入り口のようにも見える。待っている短い間にも何人かの人がやって来たが、さすがに我々の後ろに並ぶ人はいなかった。
幸運なことに入って正面に見える奥のテーブル席が丁度空いたのでそこへ通される。かねがねこの奥のテーブル席に座りたいと思っていたので、初めての訪問で念願がかない感激する。ゆうに4〜5人は座れるテーブル席を2人で占領するのは、申し訳がない気がした。混雑してくると相席になり、テーブル席はぎゅうぎゅうに詰め込まれるという話を聞いたことがあるのだが、夕方の時間ということもあり、うまい具合に客が回転してそういう状況にならなかったのは幸いである。
狭い店内では多くの人が、店主の奥野さんの淹れるコーヒーが出来あがるのを待ち望んでいる。オーダーを取りに来た山田花子似の可愛らしい女性は、時間がかかるので申し訳ないと断りながらてきぱきと働いている。さすがに老舗の店だけあって指導が行き届いており、こういう店では待たされるのも苦にならない。自分は深煎りのブラジルを、妻はエチオピアモカを注文する。もちろん名物のドーナツも忘れずに注文する。
深煎りのコーヒーの味はさぞかし濃厚な味だろうと予想していたのだが、意外にあっさりとしていて飲み易い。これだけの人気の店なので、老若男女誰にでも飲み易いコーヒーを計算しているのであろう。甘くないシンプルなドーナツとコーヒーの取り合せは絶妙で、よくあるカフェのケーキセットなんぞよりはるかに日常的だ。こういう店が近くにあったら毎日でも通ってみたいものだ。ちなみにこの店では自家焙煎の豆を分けてくれるので、今回は深煎りの3種類(インド・ブラジル・マンデリン)を買ってみた。