鎌倉駅を降りて、銭洗財弁天へ向かう途中に「くずきり みのわ」はひっそりとある。鎌倉駅西口を降りてまっすぐ歩いて行くと左手に市役所所が現れる。御成トンネルを抜け、右手の紅茶の店を通り過ぎた頃右へ曲がる路地の入り口に銭洗弁天への道しるべがあるのでそれに従って歩いて行くと、「くずきり みのわ」は左手にある。このルートより分かりやすいのだが、佐助トンネル経由の方が、鎌倉らしい静かな雰囲気にひたることが出来る。紀ノ国屋の所を右折し横須賀線の線路沿いに歩き、左手の美容室の手前を左折し、しばらく行くと左手の高台に喫茶店が見える。その喫茶店の向こう側の道を左折し、佐助トンネルへ続く坂を登って行く。トンネルを抜けると下り坂になり、突き当たりの三叉路の右手が「くずきり みのわ」である。街並に溶け込んでいるので看板やのれんがなかったら、気付かずに通りすぎてしまいそうだ。
お店ができた30年前はコーヒー店として営業していたそうだが、旅行で京都に行った時に食べたくずきりがとても美味しくて感心したという女将さんの意見で甘味処に変えたそうだ。女将さんが食べたくずきりは、京都でも有名な「鍵善良房」のものではないだろうか?自分もかつてそのくずきりに魅了され、くずきりが大好きになった。当時関東ではくずきりを食べる習慣があまりなかったからか、「くずきり みのわ」は関東地方にくずきりの美味しさを広めた店としてその功績は大きいと言われている。京都の「鍵善良房」はあまりにも有名な為、休日は長蛇の列が出来るほどの盛況ぶりだが、夕方の時間帯のせいか「くずきり みのわ」は適度に席が埋まっている程度である。これなら作り置きではない、出来立てのくずきりが期待できそうだ。
漆塗りの入れ物は意外と小ぶりであるが、蓋を開けると黒蜜の入った平たい入れ物があり、それを取ると氷水の入った器にくずきりが入っている。吉野産の葛のみを使用した出来立てのくずきりは、弾力があり歯ごたえ十分なのだが、氷の量が少なめだったので食べ方を一工夫した。食べる前に氷の上にくずきりを乗せて、十分冷やしてから食べたら驚くほどおいしく感じた。ただし黒蜜をつけるのを手早くしないと冷たさが逃げてしまうので注意が必要だ。お店の庭は、風情豊かな日本庭園が広がり、そちらでも甘味を楽しむことができます。残暑が厳しい折、庭のさるすべりが風にあおられて散っていくのを見てああ夏も終わりだなと感じた。次回来る時は、庭園に出て庭を眺めながら甘味を食べてみたいと思う。