レスパス・ドゥ・ラルクとはフランス語であり、橋の空間といった意味であろうか？姉妹店にレスパス・ドゥ・キャデという店が町田駅をはさんで反対側にある。北口の喧騒とは打って変わって、南口からしばらく歩いた所にあるこの店は広い通りに面していながら目立たない場所にある。地下に下りて店のドアを開けた瞬間、そこには不思議と落ち着ける空間が広がっていた。店の壁と天井はドーム状になっており、間接照明のみを使い、穴倉の感じを演出している。スペインの建築家アントニオ・ガウディの作ったバルセロナのカサ・ミラやカサ・パトリョの建物の内部を連想させる。その予想通り店内にはガウディ建築の本があり、見れば見るほど良く似ている。

　カウンターから伸びている真中の丸いテーブル、天井の鳥？のオブジェなどは、計算しつくされた芸術作品を見ているようだ。カフェの評価基準を雰囲気重視で決めているのだが、この独特の雰囲気には、やられた！という感じだ。雰囲気の良いカフェは数あれど、照明に統一感がなかったり、妙に明るすぎる所がある。好みとしては、ガラス張りの明るい感じと間接照明をうまく使った感じの２つのタイプに別れる。１５人の職人さんの手で造られたそうだが、ここまでこだわった造りの店にはそうそう出会えない。店全体が丸みを帯びていて、まるで子宮の中に包まれているような胎内回帰を感じさせる隠れ家という表現がぴったりだろう。

　食後だったので、チョコレートケーキと濃い目のコーヒーを注文する。ケーキが運ばれてきて気がついたのは、ガラスの皿が妙に汚れていた所だった。もしこれがなければ満点をつけていただろうに残念である。パサパサした感じのケーキが嫌いなので、しっとりとした感じのこのチョコレートケーキ自体は気に入った。姉妹店のチョコレートケーキが美味しいと聞いてたので、ぜひ食べ比べをしてみたい。コーヒー自体の味は姉妹店のドゥミタスに比べて、酸味が少なくすっきりとした飲み口で、量が少なく、こちらは上品な感じがした。