人吉駅前にある人吉旅館から温泉町にある「旅館たから湯」まではタクシーで行った。人吉温泉駅に近い球磨川河畔の温泉街から2.5Kmほど離れているが、住所が「温泉町」となっており、人吉温泉の発祥の地はこの辺りではないかと思われる。創業明治40年から続く公衆浴場と湯治宿として愛されてきた温泉宿だそうだ。一見して高級感漂う老舗旅館は中に入ると一転して印象が変わる。コルビュジエやカスティリオーニ兄弟のデザイナー家具が置かれたロビーは、モダンで西洋的な洗練空間となっており、ただものでない懐の広さを感じる。一時期閉鎖の危機に見舞われたが、レトロな風情のある浴室はそのままにして、旅館部分は和モダンなハイクラスな宿としてリニューアルされた。2020年7月4日の「令和2年7月豪雨」により、球磨川の氾濫により広範囲に甚大な浸水被害が発生し、旅館たから湯も長らく休業していたが、2024年4月には営業を再開している模様。日帰り入浴をやっているかは要確認。
この宿の大浴場は玄関を入って目の前にある。高級旅館ではこんな造りはあり得ないが、もともと公衆浴場から始まっている宿ならではの造りだ。品の良い女将さんに案内されて入った大浴場は、階段を下りていく構造で、全面と男女の間仕切りにはすりガラスの格子が美しく壁は木材と石材のハイブリッド、床は滑らないように加工された木材、なつかしさと高級感が溢れるこんな素敵な浴室はなかなかお目にかかれない。玄関は1階でお風呂は半地下なのに何故か外の景色が見える。山の斜面に建っているわけではないが、外に石壁が見え、内側に庭があったので、恐らく浴室からの眺望を得るために地面を掘り下げたのではないだろうか。浴槽は2層に分かれておりいて、奥が熱めの42度のあつ湯、手前が若干ぬるいぬる湯で、加水、加温なし、源泉掛け流し。